ドラゴン達の長 1
「とりあえず、今日しておかないといけないことはもう何も無いよな?」
「えぇ」
ギルドマスターに理解してもらった。いや洗脳して一発だったが……まぁ、あれは忘れよう。
「んじゃ、このあとはどうしようか……」
「ご主人様のやりたいことをなされば良いと思います。というか、ご主人様が働かずとも、私が身の回りの世話も致しますので、家に篭もってくれれば……」
「俺はそんな引きこもりの生活は嫌だぞ?いくら底辺貴族とは言え、そうはなりたくないからな」
「残念です」
「どうしてお前が残念がるのか…いや、考えてることが何となく分かるんだが……分かりたくない」
「ご主人様にはもっと私のことを知って欲しいのですが……」
「お断りだ。お前の恐ろしい秘密なんて聞きたくない」
こいつの場合、世界を揺るがしかねない秘密を持ってそうだからな。
「問題ございません。そこは上手く調整致しますので」
「いや!それがおかしいからな!世界を揺るがしかねないものを上手く調整するってどういう事だよ!」
「シュッとやってポンッとやれば大丈夫です」
「そんな簡単な擬音で済ませれるわけないだろうが!」
手のジェスチャーも本当にシュッとやってポンッとしかやってないが、それでできたら苦労しない。
「なら私は苦労してない模様でございます」
「…」
何故だろうか…今日はもう寝たい気分だ。
「それでしたら、ご主人様のために世界一フカフカなベットを……」
「なんだか元気が出てきたぞー!今日は頑張れる気がするー!」
いや〜さっきまでの気分が嘘のようだ〜
「でしたら、ドラゴン退治にでも参りましょうか」
「は?」
つまりこいつは俺に死ねって言ってるのか?
「ドラゴンごとき、ご主人様の敵ではありません」
「ちょっと何を言ってるのか分からない」
「ご主人様はドラゴン程度、敵としても見ておられないのですね……これは失礼致しました」
「違うからな?ドラゴンを退治できるって言ってることの意味がわからないんだよ!」
「ご主人様に不可能はございませんから」
「…もういいよ…何も考えないようにする…」
そう。こういうときは無心になるんだ。悟りを開くように…ふぅ〜深呼吸して…
よし!落ち着いてきたぞ!
って…どこだここ。
「おい、テレポートを使ったな?」
「はい。何か問題がございましたか?」
逆に問題がないのか聞き返したい。何勝手に巣穴に来てるんだよ。
「そろそろトカゲがやってくる時間です」
「ドラゴンのことをトカゲって…ドラゴンはAランクでも倒せないのにな…」
はぁ…こいつは本当に俺のことを崇めているのか?ただただ俺になにか恨みでもあるんじゃないだろうか?この感じだといくら心臓があっても足りない気がする。
「滅相もない。私はご主人様のことを崇めることはあっても、恨むことなんて一度もございませんよ」
「はいはい。わかったから。だから、こっちを見てすごい怒っているあのドラゴンをどうにかしてくれよ」
そう。今俺たちの前には赤いドラゴンがいる。
「この剣をお使いください。ご主人様専用の武器でございます」
「なんで俺専用の武器をお前が持っているのか謎だが、今はこれしか武器がないからな。仕方なくもらっておくが、間違いなく死ぬだろ、これ」
口調はいつものままだが、体はガタガタ震えている。
「大丈夫でございます。ご主人様はお強いのです。ご自分のお力を信じてください」
自分の力を信じるって…それで何回殺されかけてきたことか…はぁ…でもまぁ、あいつの事だし何かあるんだろう。とりあえず俺は震える体にムチを打って、ドラゴンと対峙する。
「グギャァァァァア!!」
めっちゃ威嚇してくるんですけど…体の震えがまた戻ってきたんですけど…
「ご主人様、さすがです。体を細かく動かして、いつでも攻撃に対応できるようにしているなんて…」
んなわけあるか!怖いだけだよバカ!
というか、そんないつも通りのあいつのおかげか少し気が楽になった。
「はぁ…ふぅ……よし!かかってこい!」
俺はドラゴンを睨みつける。いや、こっちが勝手に来ただけなのに睨みつけるってただのチンピラと同じだけどな。
「グルアァァァアア!」
レッドドラゴンは口から炎を吐いてきた。やばい!あんなの直撃したら死ぬ!
と思ったのだが…遅い。世界が遅く見える…これはなんだ?
「ご主人様、その剣を持っている時は知覚が限界近くまで引き上げられるので、世界が遅く見えます。さらに、力や速度も限界近くまで跳ね上がってますよ」
それ先に言えやァァァ!!そりゃ、誰でも倒せるよな!またとんでもないものを作りやがって!
「誰でもという訳ではございませんよ。これはルート様専用の武器でございます。他の方が持っても何も起きません」
そんなとんでもない武器は俺しか使えないという。あいつは俺を一体何にしたいんだろうか…あっ、この世界の神か。
「それがわかったなら、お前くらい怖くねぇよ!」
「グギャァァァァア!!」
ブレスを難なくかわし、それ以外の攻撃も楽々かわしていき…
「ここだ!」
「グギャ!?」
レッドドラゴンのお腹に剣を刺した。血が沢山出てくる。
「はぁぁぁぁあ!!」
俺はそこから更に斬りつけていく。
「ハァハァハァハァ…」
「さすがご主人様です。たった五分でレッドドラゴンを倒してしまわれるとは…」
「お前の作った剣のおかげだ。ハァハァ…しかしなんなんだ、この剣は…斬れ味もおかしかったぞ…」
包丁で野菜を切るような感じだ。
「ご主人様専用武器、ドラゴンスレイヤーです」
「対ドラゴン用の武器だったのか!」
「はい。あと他にも対魔獣用、対悪魔用、対魔王用、対神用とありますよ」
「最後は神と戦うつもりなのか…」
「ご主人様こそ真の神に相応しいですから」
このメイドは一体なにを…いつか天罰が下るんじゃないだろうか?
「私は天罰ごときでは何も変わりません。ご主人様と居ることだけが全てですから。それが出来なくなることが天罰ですかね」
こいつの信仰心は宗教じみてて怖い。だれか抑えてくれねぇかな…
「私の思いは留まることを知りません」
「そんなこと聞きたくない」
もうどうしろって言うんだよ…俺にはわからない…
「諦めることをオススメします」
「お前が言うな!」
誰のせいでこうなってると思ってやがる。
「ご主人様を神として扱わなかった者達のせいですね」
神様たちもそんな理由で人のせいにされるとは思ってないと思う。
「今から神たちを滅ぼしに…」
「さぁ!レッドドラゴンの死体をどうするか教えてくれるか?」
「承知致しました」
今まじでこいつは神を殺しに行きかけたぞ!?見たことない魔法を使おうとしてたからな…とりあえず、今はこのレッドドラゴンについて考えようか…それ以外の話はあとで詳しく聞かせてもらおうか…
対神用って…武器屋さんでもそんなもの売ってませんよ…