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このメイド、普通じゃないんだが!!  作者: 苛虎
第1章 俺とバグメイドと…
5/127

バグメイド 5

「…これを一体どこで…?」

「このメイドが気づいたら持ってきていた、ただそれだけです」


 俺は王冠のことを話すことにした。嘘と合わせて。


「そ、そうですか…えっと…そちらの方ですよね?」

「はい。私がルート様のメイドでございます」

「えっと…ですね…この王冠はどうやって手に入れたのですか?」

「エンペラースライムが生意気にもご主人様を攻撃しておりましたので、あの世に送り届けました。その時にこれを落としていったようで、ご主人様にお似合いかと思い、拾っただけです」


 誰がそんな話を信じるんだって。本当のことを話して分かってもらえるわけが…


「なるほど、分かりました。こちらの王冠は100万ゴールドで買い取らせて頂きますね」

「え?そんなんで信じてくれるのか?」

「はい。大丈夫ですよ」


 いや、多分大丈夫じゃない。だって急にこの人の目から光が失われたからな……このメイドは一体どんな魔法を…


「分かった。ならいい。100万ゴールドで構わない。頼む」


 深く考えないことにしようか。こいつはそういうものだと思っておこう。


「はい。こちらが100万ゴールドです。そしてクエスト報酬がこちらになります。あと、エンペラースライムの討伐により、ランクがDになっています。ご確認を」


 うわぁ…本当になってるよ…このメイドといると飽きることはなさそうだな。


「お褒めに預かり光栄です」

「…」


 基本は無視しておこう。どうせ心の中を読まれるんだし。


「私としてはご主人様の声が聞きたいのですが…」

「…」


 無視だ。



「ありがとうございました。あれ?私は何をしてたんだっけ?」


 ギルドをあとにした時に聞こえてきた声がそれだった。あの受付の人大丈夫か?後で怒られるんじゃないだろうか?


「ご主人様が心配する必要はありません」

「いや、確かにそうだがな…元はといえば、王冠をあそこに持っていった俺が悪いからな」

「ご主人様はお優しいのですね」

「そうかぁ?」

「その事に自覚があまりないご様子。これはメイドとして鼻が高いです」

「はいはい」


 俺は優しいのか?そんな自覚は確かにないのだが…


「あの時もあの時も、ご主人様は色々な方を助けていらっしゃいます」

「うん?なんの事だ?」

「いえ、なんでもございません」


 なんかこいつ隠しているな。あっ、いつもの事だったわ。


「解せぬ」




 さーて、次は何をしようかなぁ〜時間もいい頃だし、宿屋を探すのがベターか?


「ご主人様が宿屋に行くなんてとんでもない。私の収納魔法に家が入っておりますので、そちらでお休みください」

「は?」


 収納魔法で家を収納したのか!?どうなってんだよ!


「ここでは狭いので、一度街の外に出て人目のつかないところに出しましょうか」

「…もうなんでもありだな…」


 こいつは人間びっくり箱でも目指しているのか?


「私はご主人様のメイドでございます。それ以上でもそれ以下でもございません」

「はいはい。分かったから……」


 こいつは…なんというか…憎めないというか…はぁ…




「ここら辺でいいのか?」


 俺たちは人目につかなそうな所に来ている。


「ええ。大丈夫だと思いますよ。では早速出しますね」


 どーーーん!


「……でかいな…」

「ご主人様がお使いになるのですから、大きくなくては失礼ですからね」

「だからといって俺の家よりも大きくするやつがあるか!!どうなってんだよ!!」

「本当はお城の様にしたかったのですが、それだと人目につきますので…これ以上は大きく出来ませんでした」

「んな事聞いてねぇよ!はぁ…というか、これを作ったのか!?お前一人でか!?」

「メイドたるもの、家くらい一人で建てれて当然でございますよ?」

「…そうですか」

「はい」


 もう突っ込むのに疲れた…とりあえず、早く寝たい…


「どうぞ」

「…」


 内装もなかなかだった。 部屋の隅々まで手入れが行き届いていた。


「お前一人でこれを手入れしているのか?」

「えぇ、メイドですから」


 こいつといると「メイドですから」ってだけでいろいろなことが済んでしまいそうだ。


「ご主人様のお部屋はこちらです」

「いや、広すぎるわ!リビングと何ら変わらねぇじゃねぇか!」

「ご主人様のように大きな方にはそれくらいの部屋はあって当然でございます」

「あぁーー!わかったから!もうそれ以上言わなくていいから!」

「承知致しました」


 俺はそんな大した人間じゃねぇよ…


「それでは、私は夕食の準備をして参りますので、またお呼び致します」

「…あぁ、分かった」


 とりあえず、今のうちにゆっくりしておこう。





「失礼します。夕食の準備が整いましたのでお持ちしてもよろしいでしょうか?」

「あぁ、頼んだ」

「はい」


 運ばれてきたのは10人前くらいの量がある料理たちだ。


「俺はこんなに食べれないが?」

「残してもらって結構です。ご主人様が好きなものだけを食べていただけたらーー」

「それじゃ、余った分はお前の収納魔法で保存しておいてくれ。あとで食べれるだろ?それに暖かいまま収納もできるんだろ?」

「…承知致しました」


 何か驚いたような顔をしたが、了承してくれた。まぁ、俺の命令こそが生きがいみたいなやつだからな。


「もちろんです」


 ほらな?





「にしても、どれも美味いな」

「ありがとうございます」

「お前は料理もバケモノレベルなのか…料理人よりも美味いって…」

「あの程度の料理人に遅れはとりませんよ」


 いや、料理人に遅れを取らない料理を作るメイドって…料理人要らねぇじゃねぇか。


「えぇ。なのでどうして雇っているのか分からなくて」

「…」


 そう。こいつのことだ。仕方ないのだ。そう。割り切ろう。






「ぷはぁ〜食った食った」

「さすがご主人様、おひとりで3人前の料理をお食べなさるとは」

「誰かさんのせいで今日は疲れたからな」

「あのスライムは許せませんね」

「お前の事だよ!」

「…そんな馬鹿な…」

「いや何驚いているんだよ。お前以外にいないからな?」

「私がご主人様を疲れさせていたなんて…サリー一生の不覚でございます」

「それじゃおまえは、一生の不覚を何回くらい覚えるんだろうな」

「そんなヘマはもう二度としませんよ」

「どうだかな」


 人間びっくり箱が人を疲れさせないわけがない。


「メイドでございます」


 ちゃんと訂正しにきやがる。はぁ……ため息が今日で何回くらい出たのだろうか?


「合わせて27回ですね」

「なんで数えているんだよ!」

「メイドですから」

「そんなメイドいねぇよ!」

「他にも、瞬きした回数、鼻をすすった回数、呼吸をした回数、それ以外にも、出会ってから今までにーー」

「あぁぁぁ!分かったから!それ以上言うのはやめてくれ!」

「承知致しました」


 訂正しよう。こいつは人間びっくり箱じゃない。ただのバケモノ(メイド)だ。

メイドたるもの出来て当然ですって…恐ろしい…

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