バグメイド 3
ガチャ
とりあえず俺の裸を見た件についてはあとで問いつめるとして…俺はギルドの扉を開けた。
中にいる人達が皆こっちを見てくるが、すぐに視線をそらした。なにか見てはいけないものを見たかのように…というか隣から殺気を感じる。
「ルート様に人を見定めるような視線を向けるとは……ここはルート様の偉大さを知らしめーー」
「やめてくれ!羞恥心で死ぬから!」
「ご主人様がそう仰るのなら……誠に不本意ですが……」
このメイドはいつも暴走しそうで怖い。人前に出せないなぁ……
「ご心配には及びません。ルート教が誕生するのも時間の問題です」
「俺がいない時に外出するの禁止な?」
「……解せぬ」
そういうことを言うから、周りの人からの視線が白いものになってるんだよ!目を合わせようとしたらそらされるし!
「皆さん、尊敬しすぎて直視することが出来なくなってるんですね。よく分かります」
「んなわけあるかぁ!!皆、残念な人を見る目なんだよ!」
「そんな馬鹿な…………それでは、ここにいる皆さんを調きょ…お話をしてきますね。」
「おい。今、調教するっていいかけなかっーー」
「ご主人様、あそこで冒険者登録ができるそうですよ。ささっ!早く行きましょう!」
「おいこら!話をそらそうとするな!おい!」
そそくさとサリーはカウンターの方に言ってしまった。
「はぁ……」
自然とため息が出るのも仕方ないだろう。
「えっと…冒険者の登録ですね?」
「はい。お前はどうするんだ?」
「私はご主人様のメイドでございます。冒険者をするつもりなんてありません」
「そ、そう?それじゃ、俺だけでお願いします。」
「はぁ…わかりました。」
受付の人が変な人を見るような顔を向けてくる。
「それでは、こちらに手をかざしてください。」
「分かりました。……こうですか?」
「はい。これで名前や冒険者ランクが表示されます」
「え?」
「えっと…どうかしましたか?」
「…いや、なんでもないです。」
『これ名前で色々バレちゃうんじゃ…大丈夫なのか?』
『ご心配には及びません。私にお任せ下さい』
何故だろう、不安が湧いてくる。
「そうですか?まぁ、もう冒険者カードも完成すると思いますよ。ほら、言ってるそばから。それでは、こちらが冒険者カードになります。ランクはFから始まります。是非Sランク目指して頑張ってください」
「えっと…ありがとうございます」
あれ?特に何も言われなかったな。どういうことだ?
「どういうことだ?」
「はい。カードができる直前にあの機械をちょっといじって、ルートという名前だけを表示させるようにしました」
「そんなことまでできるのか…」
「メイドたるもの、それくらい出来て当然でございます」
いや、絶対違うからな!?こいつの常識について一度話した方が良さそうだ。
「まぁ、フルネームで表示されて、貴族であることがばれて、連れ戻されるよりかは全然マシか」
「はい」
「それで、このあとはどうするんだ?お金もないから、宿屋に泊まることが出来ないが……」
「それならご心配なく。お金でしたら、こちらにございますので」
そう言ってサリーはどこからかお金をって、今どうやったんだ!?こいつこんな魔法も使えたのか!すげぇ!!後で教えてもらお!
「これを取得するには少なくとも一年ほどはかかると思いますよ?」
「そんな一瞬で夢を壊さなくても…」
「なので、時が進むのを遅らせれば一年も経たないうちに覚えることが…」
「はぁ!?そんなこともできるのか!?」
「はい。メイドたるものーー」
「さすがにそれはおかしいからな!そんなのがメイドの常識であってたまるか!」
「…」
てか、そんなことできるとか…このメイドは神様とかなのかな?
「ただのルート様専属のメイドでございます」
今みたいに人の心を普通に呼んでくるメイドは普通じゃないからな!
「まぁ、詳しい話は後で聞こうか…俺もその魔法は使ってみたいしな。覚えれるに越したことはないからな。それで、今はお金のことは大丈夫だとしても、いずれはなくなってしまうだろ?だからこれからの事をどうしようかと思ってな」
「はい。それでしたら、私がお金を稼ぎますのでご心配なく」
「いや、さすがにそれは…」
「大丈夫ですよ。私はメイドでございます。それくらいのことは当然なので」
「…」
そしたらメイドって仕事は誰もやらなくなると思うが…
「いや、そういう訳にはいかないだろう。お前がいなくなった時のことも考えて、自分でお金を稼げるようにはしておきたいんだが」
「分かりました。それでしたら、冒険者としてクエストによる報酬で生計を立てるのがよいかと」
そこまで見越して、冒険者の登録をしたのだろうか?いや、さすがにそんなことは…ありえるな。こいつの事だし。
「褒めていただき光栄です」
「はいはい。心の中でだけどな」
「それでは早速クエストを受けてみるのですか?」
「そうだな。そうしようかと思ってるが」
「そう言うと思って、いいものを見繕っておりました」
「…うん」
仕事が早いな。いや早すぎるな。
「こちらがオススメです」
「これは…スライムの討伐?」
「えぇ」
「うーん…何を言ってるんだ?頭でもおかしくなったのか?あっ、元から異常だったなぁ」
なぜそんなことを言うのかって言うと、スライムは危険な魔物だからである。攻撃力は高くないが、まとわりついてくる。それによって息が出来なくなり、窒息死待ったナシだからな。その上、倒す方法は魔法で消滅させるしかないからな。俺にはそんな魔法なんて放てないし、物理攻撃も効かないんじゃどうしようもない。
確か、推奨ランクはB以上だった気が…
「いえ、スライムは核をつけば一撃で倒せますよ?」
「は?」
「あまり知られていないようですがね」
「初耳だよ!」
なるほど、それで楽に倒すことができるってことか。
「そういうことなら……受けてみるか。やばくなったとしてもお前がいるしな」
「ルート様には傷一つ負わせません。」
というわけで、このクエストを受けることにしたんだが、
「えっと…本当に受けるんですか?危険なクエストですよ?」
「えっと、このメイドが戦いも得意だから大丈夫だそうで……」
「そう…ですか…分かりました……」
渋々ながら了承してくれた。まぁ、そりゃ新人が高難易度のクエストを受けようとしたら止めるよな。
「それでは、お気をつけて」
「はい」
というわけで初のクエストを受けることになった。Bランクレベルのクエストだけどな!
ドラ○エでは最弱のスライムでも、普通に考えれば最強に近いですもんね。物理攻撃効かないって…