表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このメイド、普通じゃないんだが!!  作者: 苛虎
第1章 俺とバグメイドと…
2/127

バグメイド 2

「……それは帰りたくねぇなぁ……」


 俺は思ったことを言ってみただけなんだが、


「そうですか。なら、家出をしましょうか?」

「は?」

「家に帰りたくないのならば、そうするのが良いでしょう」


 いやいや!確かに、そうすれば怒られずに済むだろうけど、そうじゃないんだよ!


「大丈夫です。こんなときのために色々と準備しておりますので。そのためのメイドでございますから」


 いや!違うからな!?そこまでできるメイドはお前くらいだからな!?というか、こうなることも予想してたのかよ!


「ましてや、ルート様を叱るなんて……そのようなことはあってはならないことなのです。それが例えルート様の父上でも……そろそろ本当に消しまーー」

「おっと!それ以上は止めるんだ。わかったな?」

「仰せのままに」


 父さんは俺が息子だったために命拾いをした。いやまぁ、正直父さんのことはあまりよく思ってないけど……てか、このメイドは本当にやべぇな……言動には気をつけよ……


「まぁ、家出をするのはやりすぎだが、帰りたくはないんだよなぁ……どうしようか……」


 とはいえ、俺が家に帰らなくても俺には兄が二人いる。家の後継とかは大丈夫そうだし、まず父さんは俺のことをあまり期待してないらしいしな。まぁ、だから魔物を倒して少しでも強くなろうとしたんだが…

 あれ?別に家出してもいい気がしてきたぞ?

 家にいると、これでも一応貴族だからな。かなり自由が制限されるしな……それに比べて、家出をした場合は自由が増えるし……あれ?家出した方がいいんじゃね?


「でもなぁ……」

「迷っておられるのなら、いっそのこと家出した方がよろしいかと。世話なら私、1人でも十分ですので」

「いや、家にいる時だって、俺の世話はお前一人だったじゃん」

「えぇ」

「…」


 実は、二人の兄には専属のメイドがいたが、俺にはいなかったのだ。食事は料理人がいたから良かったが、それ以外のことは全て自分でやっていた。母さんが亡くなってからはずっとだ。

 そういえば、父さんや兄ちゃんたちが俺に強く当たるようになったのもその時からだった気がする。

 そんなわけだから、俺がこいつを連れて帰った(勝手についてきた)時には、あまりいい目では見られなかったな。それに、こいつが優秀ってことが分かった瞬間、父さんと二人の兄は俺にそのメイドを渡せとずっと言ってきたっけな。まぁ、その時はこいつが


『私のご主人様はルート様、ただ1人だけです』


 って強く言ったためか、父さんと兄さん達はそれ以上強く言ってこなくなった。というかその日から……いやなんでもない。絶対このメイドが何かしたってことくらい分かっている。あまり深く考えないようにしよ。


「まっ、父さんは俺が出ていったことに怒っているんじゃなくて、悪いことをしたから久しぶりにストレスを発散したいって感じだろうなぁ」

「はい。それで間違いないかと。ちっ、また痛めつけておかないと……」


 おっと?サリーの本性が一瞬見えてしまった気がした。まぁ、知ってたがな。


「よし、決めた!俺は家出する!もう家には帰らない!」

「さすがルート様です。賢明な判断だと思います」

「お前は家に帰ると言ったとしても、俺に肯定していただろ?」

「はい、もちろんです。ルート様の選択こそがこの世の全てでございます」

「いや!そんなわけないからな!?」

「ご謙遜を」

「…」


 何を言っても無駄な気がしてきた。ある意味では駄メイドじゃないか?


「ま、まぁ、その話は置いておいて……」

「ルート様は私の神様であらせます。」

「なんで置いておいた話を持ってくるんだよ!」


 丁寧に、置いていおいた話を持ってきました!って感じのジェスチャーまでしてるし……

 地味にこういうところでお茶目なんだよなぁ……

 よくわからん性格だ。


「楽しんで頂けたようで何よりです」

「いや、確かにちょっと面白かったけど!はぁぁぁぁ……俺にはこんなメイドは使いこなせねぇよ……」

「いえ、そんなことありませんよ。私はルート様にお仕えできて嬉しいです」

「そういう事じゃないんだがな……はぁぁ……」


 そんな感じで、このメイドは俺を飽きさせない。いい意味でも悪い意味でも……


「それでは、早速街の方に行きましょうか。さっきからこの辺りを魔物が徘徊しているみたいなので」

「…」


 俺は突っ込まんぞ!こいつはこういうやつなんだって割り切ることが大切だ。


「そ、そうか、分かった。それじゃ、移動するか」

「仰せのままに」


 と言ってもどこに移動するのか?ここはどこなのか?それすらも分からないんだがな。


「こちらです」


 なぜ主である俺を差し引いて、あいつが先導しているのかは分からない。まぁ、俺がここで


「ここはどこなんだ?」


 とか


「どこに向かえばいいんだ?」


 とかを言ってしまえば、俺に恥をかかせてしまう。それを無くすために、何も言わずに先導してくれているのだろう。

 本当に、どうして俺みたいなやつのメイドをしているのだろうか…?


「ルート様だからですよ」


 ほら、人の心まで読めるんだよこのメイド。

 知ってるか?こいつ俺のメイドなんだぜ?






 10分ほどしたら、森を抜けることが出来た。


「確か、あっちの方に街があるはずです。人の気配がします」

「…あぁ、分かった」


 いや、何も見えねぇよ?人の気配なんて感じねぇよ?だが、こいつがそういうのならあっちに街があるんだろうなぁ……こいつ本当に人間なのか?


「メイドでございます」


 違う、それは知ってる。というか、メイドの程度を超えている気がするが……

 それにまた心を読まれてるし……一体どうなってんだ?


「女性の体つきをしておりますよ」

「なんでそこまで心が読めるんだよ!それにちょっと質問の答えとしてはズレてるし!狙ってるのか!?毎回それは狙ってやってるのか!?」


 さすがに黙りっぱなしではいかなくなった。実はこいつが神様とか魔王とか言われても不思議に思わないだろうな。


「私はただのメイドで……」

「わかったから!はぁぁ……だからもう心の声を読むのはやめてくれ……」

「承知致しました」


 これを認めるってことはやっぱり心の声を聞いていたってことか?


「…」


 黙ってるし……あっ、そうか。今心の声を読むなって言ったから分かってないんだな。それはそれで……物足りない気が……いや、普通はおかしいけど、こいつと一緒にいることが長いせいか、やっぱりそういうことを望んでしまう。

 俺も重症だな。


「その、ある程度なら心の声を読んで、それに答えてくれても……構わない……ぞ?」


 ツンデレっぽく言ってしまった。


「承知致しました。ではそのようにさせていただきます。 やった!」


 うん?今またなんか本性が出たような…気のせいかな?


「それよりも、ご主人様、疲れてはおりませんか?」

「あぁ、確かにそうだが……」


 そりゃ、森の中を全速力で走ったんだからな。これで疲れてない方がおかしい。あっ!目の前にそれでも疲れなさそうなやつがいたわ。


「でしたら、私がご主人様を運んでいってさしあげましょうか?」

「え?」


 どういうことだ?なんとなく嫌な予感がするが…


「簡単なことですよ。私がご主人様を担いで、街まで走るんですよ。10秒ほどで着くと思いますよ」


 は?人を担いで、ここから見えてもいない街までを10秒で行くのか?やっぱりこいつ人間じゃねぇわ…まぁ、結構足が限界だったからそうさせてもらおうかな。


「それじゃ、頼む」

「承知致しました。」







 もう絶対あれは頼まないぞ!何なんだ今のは!おかしいだろ!早すぎるだろ!どうして……


「もうちょっと速度を落としてくれぇ!!」


 って声が遅れて聞こえるんだよ……音よりも速いってことなのか?


「音の速さは秒速340メートルでございます。そして私の先程の速度は秒速500メートルでございました」


 いや、なんで音の速さを知ってるんだよ……そんなもの初めて聞いたぞ……それにその速さよりも数が大きいってことは、それよりも速いってことだろ?おかしいだろ……


「一瞬で秒速の意味を理解なさるとは……私は感服致しました。」

「…」


 どうやら間違ってはなかったらしい。というか秒速っていう意味はちゃんと分かってないけどな……上手く主を持ち上げているが…


「普通の方なら、秒速が1秒間に進む距離ってことを理解できるはずがありませんからね。私は主様に恵まれたようです」


 こいつ絶対心を読んだな。だから、遠回しに秒速の説明をしてやがる。まぁ、ありがたいんだけどね!


「それでは、ギルドにて冒険者として登録致しましょう。冒険者になった方が色々と便利なので」

「そう……だな。分かった」


 それは俺だって知っている。普通に働くよりも、命を脅かす危険がある魔物退治を基本とする冒険者に待遇が良くない方がおかしいからな。


「では向かいましょうか」


 足取りに迷いがないが、この街に来たことでもあるのだろうか?


「お前はこの街のどこにギルドがあるのか知っているのか?」

「はい。透視と千里眼を使えばすぐに分かりますよ」

「へー」


 何も聞かなかったことにしたい…


「まぁ、来たこともありますしね」

「あるんかい!」


 完全にこのメイドがボケで俺がツッコミだな。

 というか、透視って…プライバシーってものがこのメイドの前では通じなさそうだ。


「透視を使えば、人の裸を見ることも出来ますが、そんなことしてませんよ?」

「そんなこと思ってねぇよ!いや、ちょっとは考えたけどな!」

「私はルート様のしか見てませーー」

「おい。それどういうことだ?」

「………ギルドが見えてきましたよ。」


 こいつ話をそらしやがった。


「あとでそれについてお話しようか。」

「…」



 無言になりやがった。

透視の使い手です。男達の夢ですかね?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ