96章 女の竜生神
女の竜生神がオーガの里のアニエッタ達を攻撃している!!
96章 女の竜生神
「フェンリル様······」
ケガをして動くことができないディームが顔だけを上げて、フェンリルの方を向いている。
「ディーム! 大丈夫か?」
「我々は孤高の生き物ゆえ」こんな時でもここだけ威厳たっぷりだ「死ぬことは覚悟できているが、ガドルを守ると約束したのに守れなくてすまない。 それが辛い」
ディームは首を捻じってガドルの姿を見ようとするのだが、上手く体が動かずに「うっ!」と、呻いて諦めた。
「フェンリル様。 ガドルを遣ったのは赤と青色のドラゴンで、上に女が乗っていた。 オーガの里に向かったようだから、急いで行ってくれ!
アニエッタさんに何かあったら、シーク様に申し訳がない!」
その時、オーガの里辺りで、ズドド~~ン! と、爆発音がした。
「急いで行け!」
「すまない! 直ぐに戻る!!」
そう言ってフェンリルは飛んでいった。
◇◇◇◇
オーガの里に行くと、ドラゴンに乗った女が下に向かって炎魔法を撃っている。 しかし、アニエッタが結界を張って、みんなを守っているのが見えた。
フェンリルは女に向かって岩カッターを撃った。
突如現れた6メルクサイズの巨大な狼に驚いた女とドラゴンが、炎魔法を立て続けに放ってきた。 しかし、全てフェンリルの角に吸収されていく。
状況が呑み込めない女は恐怖から髪を振り乱し、叫びながら半狂乱で立て続けに魔法を放ってくる。
フェンリルはオーガの里から離れるように逃げ回る振りをしながら、炎魔法を吸収していった。
そのうち女の魔力が尽きた。
あれだけ打ちまくっていたら魔力がなくなる事は分かりそうなものだが、実践などはしたことがないのだと思われる。
大人しく潜んでいればいいものを、経過は知る由もないが、ドゥーレクに取り込まれたのだろう。 可愛そうといえばそうなのかもしれない。
しかし、ガドルを殺したことに違いはない。 このまま生かしておいても、また誰かが犠牲になる。
フェンリルは反撃に出た。
女は魔力を使い果たし、振り落とされないようにしがみついているだけだが、魔力が残っているドラゴンは魔法攻撃をしてくる。
フェンリルは角で炎魔法を吸収しながらドラゴンに突進し、翼に噛み付いて振り回してから投げ飛ばした。
女はドラゴンに必死でしがみついていたのだが、とうとう振り落とされて、そのまま地面に激突した。
慌てたドラゴンは起き上がり、女の元に飛んでいこうとしたようだが、途中で霧となって消えてしまった。
フェンリルはしばらく地面に動かずに倒れている女を見ていたが、すぐにアニエッタの元に飛んでいく。
「大丈夫か?」
「はい······なんとか。 ありがとうフェンリルさん」
そう言いながら、ミンミとお互いの魔力回復をしている。
「オーガとドライアドも守ってくれたのだな」
「たまたま全員が集まって昼食中でしたから間に合ったのですよ。 もちろんミンミが教えてくれたのですけれど······フフフ」
「·········」
とても明るいアニエッタを見るだけで心が痛む。
「フェンリルさんの魔力回復はしなくて大丈夫ですか?」
「·········」
「フェンリルさん?······フェンリルさん、どうかしたのですか?」
「あ・・・あぁ···大丈夫だ」
フェンリルは言いあぐねている。 ガドルが亡くなっってしまった事を早く知らせてやるべきなのは分かっているのだが······
「······アニエッタ実は······ガドルが······」
アニエッタはニッコリしながら首を傾げてフェンリルを見上げている。
「おじいさまがどうしたのですか?」
「······ガドルが······ガドルが気を抜くなと伝えてくれと言っていた」
アニエッタはクスッと笑う。
「さっき来た時もそう言っていたのに、また言伝ですか? おじいさまも心配性なのですから。
でもそのおかげで結界が間に合ったのですよ。
後でおじいさまにお礼を言わないとね······フフフ」
「·········」
フェンリルは、やはり今は言うべきではないと判断した。
「シークがもうすぐドゥーレクを倒してくれるから、もう少し頑張れよ」
「はい!!」
何も知らないアニエッタはミンミと顔を見合わせてニッコリと笑い、飛んでいくフェンリルに向かって大きく手を振っていた。
ガドルの事をアニエッタに言うのは、全てが終わってからにすべきだと思ったのですね。
(。>д<)




