87章 ニバール国側
沢山の仲間が集結している。
なかでも、トレントとは初めて会った。
87章 ニバール国側
ニバール国側の俺たちがドワーフ山脈に作ってしまった道の場所に行くと、手前の森の中に5千のドワーフ兵とグノームがいた。
「本当にグノームさんも戦うのですか?」
「もちろんです。 オベロンが戦いに出ると聞いたので、私だけが土の中にいる訳には行かないでしょう」
やっぱり競っていたんだ······
軽そうだが見事な鎧に剣を携帯しているのだが、太くてやたらデカい斧を2本も担いでいる。 刃の部分だけで1メルク以上はあり、柄の長さも1メルク半ほどある。 こんなデカい斧は始めて見た。
ゴドドとマララも鎧に身を包み、鎖がついた斧を2本腰に下げている。
ドワーフは剣や弓も上手いが斧が得意だそうだ。 特に鎖がついた投げ斧は、小柄な体をカバーするのには丁度いい。
「そういえばゴゴトさん、先日俺たちが魔法を山に当ててしまったのですが、ドワーフの皆さんは大丈夫でしたか?」
「いやぁ······あのときはおどろいたでやす。 でもまえにてんじょうがくずれてからほきょうしておいたおかげでひがいはほとんどなかったでやす」
「良かったです。 ドワーフの住処に近かったから心配していました」
そこに森の中にいたドライアドのセリアがやってきた。
『シーク様、レイ様、フェンリル様。 とうとうこの日が来ましたね。 皆、万全の準備を終えております。 必ず勝利の女神の加護がある事でしょう』
「そう願っています。 ところで、トレントはどこに?」
かなりデカいはずなのに、どこにも見当たらない。
すると、セリアは笑いながら答えた。
『フフフ、目の前におりますわ』
「えっ?」
目の前には森の中にドワーフが集まっているだけだと思ったら、その森が動き出した。
こちらに顔を向け、頭を下げる者、ニッコリと笑う者、手(枝)を挙げる者。 トレントは巨木という事は分かっていたが、じっとしていると本当にただの木だったんだ。
「わぁ······凄い······」
思わず上を見上げて感心してしまった。
「いつまで口を開けてボケっとしているつもりだ? 乗れ。 トレントに挨拶に行くぞ」
「お···おぉ······」
フェンリルに突っ込まれてしまった。
フェンリルに乗り、飛び上がったが、本当に高い。 多分、高い者で50メルク近くはあるだろう。
その一番高いトレントが手(枝)を挙げた。 多分長なのだろう。 そのトレントの前に行く。
『シーク様、レイ様、フェンリル様。 私はトレントの長のアグジョーンです』
心通魔法だ。
そういえばセリアさんも心で話してきた。 トレントはとてもゆっくりと低い声音で話すが、耳に心地いい。
「そう言えば、なぜ俺たちの名前を?」
アグジョーンは、フフっと笑った。
『私たちの半数はタナーヴの森に棲みついています』
「えっ?······」フェンリルが驚いている。
知らなかったのかよ!
『私たちの心は繋がっているため一人が見た事を共有できます。 ですので、フェンリル様はもちろん、シーク様とレイ様の事もよく存じ上げております。 今回は、お役に立てて光栄です』
でも考えたらトレントには加護もしていないし、何もしていないのだけれど······
『私たちはあの巨大な虫に閉口していました。 私たち自身が黒龍の影響を受ける事はありませんが、巨大な虫たちが私たちの体を食いあさるのです。
小さな虫でも種類によっては困るというのに、あの大きな口で食い散らかされた時には、寿命の危機を感じていました』
そう言う事か。
「今回は、ドワーフとの連携が大切だと聞いています。 話によると、とてもうまくいっているとか······ドワーフたちをよろしくお願いします」
『彼らも良くやってくれています。 お任せください』
それだけ言うと、再びただの木に戻った。
わぁ······どこからどう見ても、ただの木だ。 これが動き出すとは本当に驚きだ。
『フェンリルは、トレントがタナーヴの森にいる事を知らなかったのか?』
『お···おう······初めて知った』
あら······素直なお返事······
トレントはこういう時以外は動くことはなく、200年前の戦いの時は、自分たちに直接被害はなかったので、参戦していないそうだ。
それでフェンリルはトレントの存在は知っていても、実際に会った事はないと言っていた。 が、知らないうちに会っていたんだ。
トレントたちに俺たちの動きは逐一見られていたという事だ·········
フェンリルが知らなかったとは!
(;゜0゜)




