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81章 後悔

再びドゥーレクに会ったが、なぜ街の人達を攻撃するんだ?!

81章 後悔



『今度はマージェイン様の方から訪ねてきていただけて、恐悦至極でございます』


 心通魔法で話しかけてきた。


『ドゥーレク!! 自分の国だろう!! なぜこんなことをする!!』

『おやおや。 私の国と認めていただけたのですね。 これは御礼を申し上げなければ』

「シーク! あんな奴と話してもムダだと言っただろう! 帰ろう」



 ドゥーレクは、シークに向かって怒ったように話しかけているフェンリルに興味が向かう。



『これはフェンリル殿。 私の元に来る決心はされていないのですか? どうせ世界は私のものになるのです。 私についてきた方がいいですよ』

『寝言は寝て言え!』

『クックックッ、なかなか面白いですね』



 フェンリルは離れた所にるドゥーレクに向かって牙をむく。 俺も奴が目の前にいたら、胸倉(むなぐら)を掴んでいるところだ。




 ······しまった! ドゥーレクを説得するつもりで来たのに、奴のペースに乗せられている。


 俺は心を落ち着けようと努めた。




『ドゥーレク、俺の話を聞いてくれ! 父はあなたを本当に尊敬していた。 とても頼りにしていたんだ。 これは本当だ。 母とも将軍とも前宰相ともよくその話をしていたんだ。 もう一度よく考えてみてくれ!

 今までの罪を償って、やり直すんだ。

 ドゥーレク、貴方(あなた)は本当に切れ者だ。 心を入れ換えれば万人(ばんにん)から尊敬される、敬われる存在になるんだ!』


 ドゥーレクは、困ったな······という顔をしている。


『マージェイン様······言いませんでしたっけ?······そんな事はどうでもいいと······

 そんな些細な事に囚われてはいないのですよ。 それより、どうやら天龍と貴方は私たちの天敵のようですね。 という事は、貴方さえ排除してしまえば、全ての世界が私のものになるという事です。

 何なら今から決着をつけてもいいのですよ。 まぁ、ここで戦えば貴方のお父様が愛して()()この国が、跡形もなくなるでしょうけどね』

「ドゥーレク!」


『貴方が攻めてきてくれたおかげで、悪者になりかけていた私の名誉が回復できそうですよ。 天龍が街を攻撃してくれるのですからね。 ありがとうございます』

『そんな事のために、街の人達を殺すのか?! 自分の国の人達を平気で殺すのか!!』


『それは私にとっては些細な事ですけど、壊れていく街と潰れていく人間を見るのは楽しいじゃないですか。

 それより、以前は諸事情があってこの国を一日も離れる事が出来なかったので、貴方と決着を付けにニバール国まで赴くことが出来なかったのですが、今は少し余裕ができたので、いつでもお相手をいたしますよ。

 クックックッ 私としては一国ずつ潰していく方が楽しくていいのですけどね』





 俺はすでに後悔していた。


 ガドル先生の言う事を聞くべきだった。


 素直にフェンリルの助言に耳を貸すべきだった。 






 そう言っている間にもドゥーレクはあちらこちらで爆発を起こしていて、その度に俺が水をかけて立ち上がる炎を沈下していく。



『当初の予定では貴方との決着のためにニバール国を攻めようと思っていたのですが、どうもアンドゥイ国の動きも面白くなのですよ。 そこで両方同時に潰そうと思うのですが、どう思われますか?

 マージェイン様がわざわざドワーフ山脈に新たな()を造ってくださったので使わないともったいないですからね』


 そうか!! 挨拶に来たなどと、ふざけた事を言っていたが、本当の目的はこれだったんだ!!


 その時、急にフェンリル毛がブワッと逆立った。


『貴様!! わざと山を攻撃させたのか?!』

『クックックッ。 あれだけ思い通りに道を造ってくれるとは思いませんでしたよ。 二つの国を同時に護るのは大変ですよ、天龍の竜生神様。 クックックッ』



 俺は一瞬でテラスにいるドゥーレクの目の前に移動した。 突然の移動でフェンリルは驚いている。


「俺だけを倒しに来ればいいだろう!! なぜ国を破壊する!!」


 ドゥーレクはニッコリと笑った。


「そりゃあ楽しいからですよ。 建物が崩れ落ちていく(さま)。 あちらこちらで赤い炎に包まれていく(さま)。 人間どもが無様にも建物の下敷きになり、助けを求め、惨めに死んでいく(さま)

 マージェイン様は見た事がありますか? ゾクゾクするんですよ。 体の奥底から快感が込み上げてくるのですよ。 貴方も一度体験してみると分かります。 世界が破滅していく(さま)を!」



 その時、突然カンッ! カンッ! カンッ! ドゥーレクの目の前を鋼カッターが飛んでいったが、結界で跳ね返り、ドン!ドドン! ガラガラ!と、隣の塔を破壊して上部が崩れ落ちて行った。



 フェンリルがドゥーレクに向かって鋼カッターを撃ったのだ。



「シーク!! これ以上聞く必要はない!! 帰るぞ!!」


 シークを乗せたまま風操作魔法で城から離れていく。


「しかし!」

「まだ話す事などあるのか?!」




 ······そうだ。 俺は間違っていたんだ。 奴は心を入れ換えたりしない。 人間の心など持っていないんだ。



 しかし、ドゥーレクは遠ざかる俺たちをそのまま帰してくれはしなかった。


『マージェイン様。 最後にいい物をお見せしますよ。 下を見て下さい』


 ドゥーレクが隠していたサプライズでも見せるように楽しそうに話す。 



 眼下では瓦礫の間から抜け出そうともがいている者が大勢いて、その人達を助けようと瓦礫をどかそうとしている者。 建物の陰から俺たちの動きを固唾をのんで見守っている者たちもいる。

 幸いな事に俺が出した水で、今の所火事が再び起こっていることはない。


 さっさと逃げればいいのに、多くの人達が上空にいる俺達を見ながら破壊された街中に残っているのだ。




 その時、バリバリズドドーーン!! 街の真ん中に雷が落ちた。

 それと同時に街中にいた人達が一斉に倒れ込んだのだ。


 ドゥーレクが雷魔法を放ち、俺が放った水を伝って沢山の者に雷が流れたのだ。



「わぁぁぁぁ~~~っ!! 何をするぅ!!」


 俺はフェンリルのたてがみを引きちぎらんばかりに力を入れる。



『マージェイン様が大量の水を撒いてくださったおかげですよですよ。クックックッ、ハッハッハッハッ!」





 フェンリルは後をも見ずに、全速力でその場を離れた。







あんな奴を説得しようとして、多くの人達が犠牲になった!

( >Д<;)

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