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8章 ドワーフ

ドワーフの住処に着いた。 思った以上の広い場所にドワーフが暮らしていた。

そして、そこで案内された部屋には·····

 8章 ドワーフ



 しかし、ドワーフは重い! 胸ほどまでの高さしかないのに······重い!!


『おい、フェンリル、乗せてくれよ』

「やだ」



 クッ!!······いちいちむかつく奴!!



『俺に従うんじゃなかったのかよ!』


 フェンリルは俺を(にら)みつける。


「チッ!」



 チッ!って言った? こいつ!



 フェンリルが大きな姿に転身し、地面に伏せてくれたので背中に跨り、もう一人のドワーフも引っ張り上げて乗せた。


 ドワーフはオロオロするほど恐縮しながらも、体を伏せてフェンリルにしがみ付いている。 俺も気絶しているドワーフを抱え込み、思ったより柔らかくフサフサの(たてがみ)にしっかりつかまった。 レイは飛んでついてくるようだ。


『いいぞ』


 フェンリルはチラリと俺たちの方に視線を送ると、猛スピードで走り出した。


『わぁ~~ぁ~~ぁ~~っ!!』

「ハハハハハハ! 落ちるなよ」



 こいつ、絶対嫌がらせだ! むかつく!!



 しかし、慣れてくると結構乗り心地もよく、風を切る感触が気持ちいい。 それに、俺たちに枝などが当たらないように道を選んでくれている。



 ちょっとフェンリルを見直した。



『フェンリル、どこに行けばいいのか分かってるのか?』

「ドワーフの住処(すみか)でいいのだろ?」


『場所を知ってるのか?』

(われ)を誰だと思っている」




······はいはい、森の(ぬし)様でしたね。




 しばらく走ると山の(ふもと)に巨大な扉が見えてきた。 その扉の高さは、20メモクはある。

 門番が二人立っていて、俺たちを見ると、目を見張り、慌てて横にある小さな扉から中に入っていった。


『おい! 逃げたぞ』


 とにかくフェンリルから降りて気絶しているドワーフを担ぎなおし、小さい姿になったフェンリルの背中にレイがとまった。


「こちらへどうぞ」


 ドワーフは扉の方に案内するが、ピッタリと閉じられた扉の中へ入っていいものかと思っていたら、ゴゴゴ!と石がこすれる音と共に、巨大な扉が外側に開き始めた。


『入っていいみたいだな』


 少しホッとする。


「当たり前だ」と、投げ捨てるように言う。



 なんだ? その自信は······



 門番の一人が出てきて「どうぞ」と、俺たちを招き入れてくれた。 もう一人はいなくなっている。 奥に知らせに行ったのか?



 扉の中はそのままの大きさの通路になっていて、石でドーム型に綺麗に補強され、等間隔にくぼみがあり、そこに火が(とも)されていて中は明るい。




 しばらく歩くと巨大な空間の最上部に出た。


 縦横100メモク以上ありそうな巨大な穴で、周りの壁は何層かに分かれていてそこから幾つもの横穴が伸びている。 そしてそれぞれの穴に通じるように空間の中を網の目のように足場が組まれていた。

 のぞき込んでみると、下の中央には大きな地下水の池がある。


 あちらこちらに火が焚かれて中は明るく、忙しげにドワーフたちが行きかい、ガヤガヤという声と、どこからか聞こえてくるカンカンと鉄を打つ音でけっこうにぎやかだ。




 目の前に大きな(とり)(かご)のような鉄の(かご)がせり上がってきた。


 門番のドワーフがその鉄籠(かご)の入り口の(さく)を開けてくれた。 俺たちが乗り込むと、ジャラジャラ鎖の音をさせながら少しずつ下がっていく。


 各階の前を通過するたび、そこにいるドワーフが俺たちを見ては驚き、ひれ伏す。 そんな具合なので、最下層に降りた頃には、鉄を打つ音が奥の方で聞こえる以外はシンと静まり返っていた。



 鉄籠(かご)から降りると、数人のドワーフが待ち受けていて、俺が肩にかついでいたドワーフを受け取って板に乗せ、助けたドワーフと共にどこかへ連れていった。


 そして門番のドワーフに案内されて、いくつかある横穴の一つに俺たちが入っていって見えなくなった途端、後ろで「「「わぁぁぁぁっ!!」」」と、大歓声が起こっていた。



 何をそんなに喜んでいるのだろう?




 横穴の中にもいくつも通路が左右に伸びており、一つの大きな街になっているのがわかる。

 壁は規則正しく並べられた石で(おお)われていて、よく整備された通路の奥の、ひと際立派な造りのドアの中に通された。


 その中には一人の男性が立っていた。 ドワーフ独特のヒゲは生やしているものの、ドワーフというには端正すぎる顔立ちで、身長も俺と同じくらいあるが、ガッチリしているのでかなり大きく見える。



 俺たちを見て駆け寄り、深くおじぎをしてから迎え入れてくれた。


「天龍様、加護者様、この度は、我らの同胞を助けていただき、ありがとうございました」


 再び深くおじぎをした。 


『やっぱり天龍と加護者を知ってるんだ』


 キュイ!


「私は[土の精霊王グノーム]でございます。 フェンリル様、お久しぶりでございます」


『今度は土の精霊王?!······フェンリルと知り合い?』


 レイと顔を見合わす。


「たまたま居合わせたまでの事。礼には及ばぬ」

『フェンリルは何もしてないだろ?』

「なにを言う! (われ)があの時ゴーレムの腕に喰い付かねば、あいつらは死んでいたぞ」

『······そうだが······』


「それにここまで運んでやったのは誰だ?」

『······助かったが······』


 当たっているが、なんだかむかつく!


『はいはい、フェンリル様のおかげです。 ありがとうございました!』




 俺たちの会話(?)を聞いて、グノームは首を傾げる。


「失礼ですが、もしかして、加護者様は言葉が話せないのでしょうか?」


「こいつ、何か魔法をかけられて話せないんだ。ハハハハハハ!」


 フェンリルは面白そうに笑う。


『そうだ! 記憶が無いのも魔法のせいなのか、視てくれるように言ってくれよ』

「え~~~」

『頼むよ』

「チッ! 仕方がないな······」



 またチッ!って言った? こいつ。



「グノーム、こいつは記憶がないのだが、それも魔法のせいなのか視ることはできるか?」

「記憶が?······わかりました。 失礼します」


 オベロンの時と同じように、俺の額に手を当てて、なにやら思案している。


「確かに[黙秘魔法]はかけられておいでですが······」

『黙秘魔法ってなんだ?』


 俺の視線を感じて察してくれた。


「あぁ、黙秘魔法とは、どうしても話してもらっては困ることがある場合、たとえ拷問されたとしても話す事も、筆談する事もできなくする魔法です。

 密偵などに使うのですが、敵対者に対しての場合、普通は殺してしまった方が早いのですが、何か事情があって殺せない時などにもこの魔法をかけます」 



 話しては困る事?······俺は何か秘密を知っているのか?······それとも俺は密偵?



「しかし、記憶に関する魔法は感じられません」

「だとよ」


 なんだかフェンリルは半笑いだ。 俺に記憶がないのが面白いらしい。



「記憶がなくなるのは、耐えられないほど衝撃的な事があった場合や、強く頭を打った時などに起こります 何か思い当たることはありませんでしたか?」


『あっ! 頭を打った!』

「頭を打ったらしいぞ」

「それですね、多分」



 やっぱりあの時頭を打ったせいだったんだ。



『これって、いつ頃記憶が戻るか聞いてくれ』

「チッ! いつ記憶が戻るのか聞いているぞ」



 またチッ!って言った?



「こればかりわかりません。 今すぐ戻るか、1年後になるか、もしかしたら一生戻らないか······」

『ショック!』

「クックックッ」



 こいつ絶対俺に恨みがあるな。



「そのせいで天龍様も話せないのかもしれませんね」

『えっ? なんでレイが関係あるんだ?』


 その時、ドドドドンッ! と、地響(じひび)きと共に凄い音がした。


『なんだ?!』



 俺たちは外に飛び出し、音がした方に走っていった。






ムカつくフェンリルだが、彼のおかげで意思の疎通ができるようになった。

地響きと共に凄い音がしたが····!!

( ̄□ ̄;)!!


1メク=1cm

1メモク=1m

1キメモク=1km

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