79章 レンドール国へ
戦争がなくなれば、何も心配事はなくなる。
そうだ!! ドゥーレクをもう一度説得してみよう!
79章 レンドール国へ
アニエッタを家まで送ってから戻ると、珍しくフェンリルが起きて俺を待っていた。
「アニエッタは大丈夫なのか?」
そうか、風探索魔法は感情も探知できる。 フェンリルはアニエッタの不安を探知したのだろう。
「とりあえず、大丈夫···かな······」
「戦争が怖いと言っているのか?」
「······まぁ、そんな所だ」
「以前にコーマンに攻撃されただけでもあれだけ怯えていたんだ。 怖くて当然だな」
「うん······」
「ガドルのも当然戦いに出ると言ってきかないが、結構な年だからアニエッタにはそれも心配なのだろう」
「······うん······」
「アニエッタの家族も郊外に住んでいるらしいが、しばらくどこか遠くに避難する事は出来ないものか······」
「·········」
······アニエッタの心配は俺だと言っていたけど、他にも心配事は山ほどある。 優しい彼女には胸が張り裂ける思うだろう······戦いがなくなれば何も問題はなくなるのだが······
······ガドル先生はムダだと言っていたけど······何とかして誤解を解けばドゥーレクに分かってもらえるのではないだろうか······
······そうだ······今までの罪を償い、再び国に尽くせばみんなにも分かってもらえるはずだ。
······道を外すまでは素晴らしい能力を持っていた。 きっと俺などより素晴らしい力を発揮して、国の発展に尽くしてくれるはずだ!
俺は立ち上がった。
「フェンリル! 俺、もう一度ドゥーレクを説得してみる!」
「なに寝ぼけた事を言っているんだ?·········ハァ~~」
俺が急に立ち上がって驚いていたフェンリルは大きくため息をついた。
「戦争を思いとどまってくれればこれほどの事はないだろう? ドゥーレクは父の話を聞いて少し動揺していた。 父はドゥーレクの事を本当に尊敬していたし、凄い人だと褒めていた。 それが嘘でない事を納得してもらえれば······」
「ガドルの話を聞いていただろう? 黒龍が生まれたこと自体で終わりなのだと。 戦うしかないのだと!」
「いいや! ドゥーレクにも人の心が残っているはずだ。 レイはついてきてくれるよな?」
「うん······マーが行くなら······」
気乗りしないようだが当然来てもらえることは分かっていた。
「フェンリルはどうするんだ? フェンリルが来てくれないなら俺たちだけででも行く!」
「待て。 ガドルに相談してからにしろ」
「先生は反対するに決まっているだろ? じゃぁ、俺は行くから」
俺はレイを肩に乗せ、テラスに向かう。 月夜だが充分の明るさがあるので問題はない。
今から飛び立てば朝には着くだろう。
「待て!!」
フェンリルは俺の横をすり抜け、大きな姿に転身してテラスから先に空に飛び上がり、行く手を遮る。
俺も飛び上がり、フェンリルの前で止まった。
「一緒に行ってくれるのか?」
「俺は止めたからな」
「分かった。 では行こう」
俺はフェンリルの背中に乗って、レンドール国に向かった。
◇◇◇◇
ドワーフ山脈を越えるとフェンリルが統べるタナーヴの森だ。
戦争が始まると、この辺りは火の海になるだろう。
「フェンリル、この辺りの森が一番被害がでるだろう。 大丈夫か?」
「大丈夫とは何がだ?」
「お前の森だろう?」
「別に我の所有物という訳ではない。 ただ、森を住処にしている動物たちがケガをせず、無事に避難してくれればいいとは思うがな」
「そんなものか?」
文句を言いながらも、レイとフェンリルはついてきてくれた。
( =^ω^)




