74章 挨拶?!
フェンリル、レイとアンドゥイ国に行った帰り、怪しい気配が?!
74章 挨拶?!
俺たちは会議の為にアンドゥイ国に行ってきた帰りだった。
フェンリルに跨り、俺の重力操作魔法で行くと、アンドゥイ国に行くのに半刻もかからない。 フェンリルも大きな姿をみんなに見られてからは諦めたのか、それとも吹っ切れたのか、当然のようにみんなの前で大きな姿になるようになった。
「しっかしネビルさんの光魔法は凄かったな!」
アンドゥイ国宰相のネビル・セルカーンに、白魔法の光魔法を見せてもらった。
ガドルに教えてもらって俺ももちろん出来るのだが、彼の光魔法の攻撃は規模も威力もけた違いなうえ、対象物以外には焦げ一つもなかった。
「黒魔法使いや、黒魔法で操られている者には光魔法攻撃が効果的だ。 以前の戦いでもアンデットに効果が高く、ガドルもそれでかなり活躍したな······」
フェンリルが昔を思い出すように言う。
「俺ももっと練習しないとな。 レイも一緒に頑張ろう!」
「うん!」
最近はレイや他のドラゴンたちも魔法攻撃や直接攻撃の訓練をしている。
体が覚えているので必要ないのだが、訓練を重ねる事でとっさの時に少しでもスムーズに動けるのではないかという事で、みんなで始めた。
帰り道を半分ほど戻って来た時、フェンリルがビクンと耳を立てて東の方に視線を送った。
「いやな気配だ!」
俺はすかさず多重結界を張る。
その一瞬後、ズドドドドン!
辺りが一瞬真っ黒になり、その魔法の勢いで俺たちは結界ごと吹き飛ばされて地面に激突寸前で踏み留まったが、同時に俺が張っていた多重結界が消えた。
「結界が消えた! どういう事だ?」
6メルクの大きな姿に転身し、すでに鋼装甲の姿になって俺とレイに覆い被さるように上に立って周りの気配に気を奪っているフェンリルが、足の下の俺に向かって言ってきた。
「多分ドゥーレクの野郎の仕業だろう。 奴が使う黒魔法には結界を消す力がある」
「結界を消す?」
「あぁ、そんなことを聞いた覚えがある」
周りを見ると、地面が大きくえぐり取られ、木々は吹き飛ばされて、既に炭化して焦げた匂いだけを漂わせている。
「これは雷魔法の究極魔法、黒雷だ! こんなことが出来る奴は······」
風探索魔法で探していたフェンリルが「いた! 東に2キメルク!」と叫ぶ。
空間探索魔法で探すと、ドゥーレクをみつけた。
『呪文封じ魔法!』『捕縛魔法!』ドゥーレクに魔法を掛けた。 呪文を封じ、捕縛すれば大丈夫だろう。
しかし、空間探索魔法で捉えていたはずのドゥーレクが突如消えた?!
「消えた?! 動けないはずなのにどこに行った?!」
すぐに見つけた。 それがおかしなことに一瞬で数百メルク移動している。 再び······また再び······転々と。
「なぜ呪文封じ魔法も捕縛魔法も効かない?! それも不思議な移動ルートだ。 もしかしてこれは空間移動しているのか?」
その時、少し離れた場所から突然声が聞こえた。
「そうです。 私には補助魔法は効かないのですよ。 あなたに補助魔法が効かないようにね。 お久しぶりですマージェイン様」
僅か10メルク先にドゥーレクが立っていた。
俺は弾けるように視線を向ける。 全身の毛が逆立つような感覚を覚えた。
「ドゥーレク!!」
もちろん竜生神なので年を取らず、20歳ほどの若くて鋭い目つきの男で、少し瘦せたようだが、以前のままだ。
ドゥーレクはまるで散歩中に会った時のように、優雅に話しかけてきた。
「随分と見た目が変わりましたね。 天龍の竜生神になったと聞いていなければ、分かりませんでしたよ。 そちらの肩に乗っているのが天龍で、その大きな狼······はもしかして霊獣のフェンリル殿ですか?」
レイには興味がなさそうだがフェンリルには興味津々の様子だ。
全身の毛を逆立てているフェンリルが、唸り声と共に絞り出しように聞いた。
「なにしに来た。 黒龍は連れていないのか?」
ドゥーレクは、鋼装甲に覆われている巨大なフェンリルを嬉しそうに眺め、ニッコリと微笑んだ。
「ほう······本当に人間の言葉を話せるのですね。 ますます興味が湧いてきましたよ。 折角のフェンリル殿の質問ですからね······ちゃんとお答えしないといけませんね」
ドゥーレクは宙に浮いた状態で、胸に手を当てて、軽くおじぎをする。
「私はただ挨拶をしに来ただけです。 私の相棒は色々忙しいのでね、今日はちょっと挨拶だけをするために、私一人で来ました」
ドゥーレクが、挨拶に来ただと?!!
( ;`Д´)!!




