72章 ドゥーレクとマージェイン
マージェインが逃げ出した! 手引きした者達の記憶を操作して、忘れさせたので問題はない。
72章 ドゥーレクとマージェイン
大変な事が起きた。 マージェイン王子が逃げ出したのだ。
必ず手引きした者がいるはずだ。 早急に犯人探しをさせた。
マージェイン側の人間だろう。 近しい人間はそれほど多くはない。
犯人は早々に見つけ出した。 マージェイン付きの執事だった。
マージェイン王子が牢に入っていた事を知っていた者が他にいれば大変な事になる。
手引きをした執事の記憶を引き出して、仲間を一網打尽にした。 その中には近衛隊長もいたが、記憶操作魔法で忘れてもらったので何も問題はなかった。
初めはマージェイン王子が逃げ出してしまって大変だと慌てたが、むしろ奴がいない方がよかった。 身代わりの王子にお飾りになってもらう方が、話しがスムーズに進むことに気がついたのだ。
ジャークとも一緒にいることができる。 私の肩の上ではなく身代わりの男の肩の上だが、そんな事は気にしない。 どうせ私もその身代わりと片時も離れることなく側にいるのだから。
しかしマージェイン王子に逃げられて、私が王と王妃を殺したことをのべつ幕なしに話されると困るが、当面は黙秘魔法をかけているからバレる事もないだろう。
ただ悔やまれるのが、どうして情けなどをかけてマージェイン王子を生かしておいたのだろう。 なぜか人竜族の血にこだわってしまった。
サッサと殺して「進化しました!」と身代わりを立てれば何の問題もなかったのに。
唯一の私の失策だった。
◇◇◇◇
偽王子······いや······即位したので、偽国王を立ててからは全て思い通りに行くと思っていた。 レンドール国が今以上に繁栄する政策は完璧にできていた。
こうまでしてお膳立てしていたにも関わらず、私が立てた政策をことごとく失敗させていく馬鹿どもには閉口した。
はっきりとは言わないが、暗に私の政策が悪いと、私のせいにしてくる。 そのうえ、最近の化け物騒ぎ······巨大昆虫が人を襲うので、他国への輸出入ができない事まで私の政策ミスのように言う。
数々の政策失敗と、輸出入の収益が望めない上に、巨大昆虫から国を守るための軍事費用、等々······そのため現在は財政が破綻寸前だ。
◇◇◇◇
「なぁジャーク······国の周りに増えてきている巨大昆虫はどうにかならないものかな······数年前まであんな化け物はいなかったはずなのに、どこから来たのだろうか······」
自室のロッキングチェアに揺られながら何気なく横のテーブルの上にいるジャークに聞いたのだが、驚くべき答えが返ってきた。
「あれらは私と貴方が共にいる時の気の乱れによってできた副産物のようなものです」
ドゥーレクは飛び起きた。
「どういう事だ?! 私とジャークの副産物だと?」
「私達が共にいるという事だけで自然界の気が乱れて影響を受ける者がいます。 今回は昆虫が巨大化したようです」
「昆虫が?······もしかして、私たちの副産物なら私たちの命令に従わせることは可能か?」
「······可能です」
「気の乱れで自然発生的に生まれるのではなく、意図的に発生させ生事は可能か?」
「可能です」
「何日くらいで何匹ほどだ?」
「······一日100匹程度が限界かと。 しかし自然発生の割合もそれに比例して増えるでしょう」
ドゥーレクは自分の考えに入り込んだ。 そういう時は誰も······ジャークさえも物音も立てずに次の言葉を待つ。
ドゥーレクの考えが纏まったようで、顔を上げた。
「とりあえず、今いる巨大昆虫を人目に付かない場所に集めろ。 そして、出来る限り巨大昆虫を増やせ。 ジャークの急務だ。 朝会の時以外は城にいる必要はない」
「承知」
◇◇◇◇
それからの私は、遠回しに重鎮たちが北のエグソン国に戦争を仕掛けるように話しを誘導した。
もちろんほとんど魔法は使っていない。 一種の洗脳のように、隣の国に戦争を仕掛けないと逼迫しているこの国が滅んでしまうと、言葉巧みに思い込ませたのだ。
巨大昆虫兵が揃うまでにはまだ時間がかかる。 その間にバカな連中が私の思い通りに考えを変えていき、思い通りの発言をするようになっていくのを聞くのが可笑しくて仕方がない。
私をバカにしていた者たちが、私の言葉に翻弄されていく。
これほど痛快な事はなかった。
ドゥーレクは言葉巧みに洗脳までできるのですね!
(|| ゜Д゜)




