70章 ドゥーレクと国王
ジャークを置いて仕事に戻ったが、いちいち国王が邪魔をする!
70章 ドゥーレクと国王
そろそろ仕事に戻ろうかと思った時、自分の顔が少し変わっているのに気付いた。
「そうか、進化が始まったんだ。 どうしよう······」
髪の色はよく見ると少し青味がかった黒だが、ほとんど変わらない。 そうだ! いい考えがある!
「顔見知りには記憶操作をかけて、あとはヒゲを生やしてフードで顔を隠せば、顔の変化は誤魔化せるよな? ジャーク」
「いい考えです」
「それと······」
ジャークが生まれた時から考えていた事がある。
ドラゴンはドラゴンの気配がわかると聞く。
「ジャークには申し訳ないんだけど、ここに隠れていてもらえるだろうか?
どうもブラックドラゴンというのは印象が悪いので知られるとまずいことになる気がするんだ。
城の宿舎にいると、竜生神であろうと言われる国王のドラゴンに気づかれる恐れがある······なるべくこちらの家に戻ってくるから、我慢してもらえるか?」
国王のドラゴンは見たことがないが、話しぶりからして、竜生神である事は、ほぼ確実のようだ。
「もちろんです」
「ありがとう! さすがにやさしいな。 いつかは必ず私と一緒に居る事が出来るようにするからな」
◇◇◇◇◇◇◇◇
私はジャークを置いて城の仕事に戻った。
よく顔を合わせる人には記憶操作魔法をかけた。 そしてヒゲを生やしてフードを被ると、誰も私の進化に気が付かない。
なんだか拍子抜けなほど、簡単に事が運ぶ。
今まで私をあからさまに馬鹿にしていた者に、ちょっと魔法をかけると、手の平を返したように態度が変わった。(当然だが···)
急に態度が変わった事を不振がっていた者も、ついでに記憶を操作しておいた。
今まで邪魔をしていた人たちがいなくなったので、私はとんとん拍子に出世をしていく。
当然の事ながら誰も彼もに魔法をかけている訳ではない。
私に異を唱える者の首謀者と、その腰巾着の意見を少し操作するだけで、周りの意見がコロリと変わる。
大人数を操作するのは大変だが、頭を使えば少ない人数で大きな効果を得られるように操作する事ができる。
たまに陰口が聞こえた時にも操作しておく事が必要だ。 知らない所で話しが大きくなると面倒だからな。
いや、私は私の意見を無理強いしようというのではない。 当然私は間違ったことは言っていない。 なのでほんの少し、スムーズに話が進むようにしただけだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
そうして私はジャークを生んでから、たった5年で宰相補佐の地位まで上り詰めた。
今のショウマ宰相は、結構なお歳だ。 若い私と交代するようにという声が多い中、国王はなかなか首を縦に振らなかった。
将軍と宰相は国王が直々に任命する。 国王が首を縦に振らないと、宰相の交代は叶わないのだ。
私を任命出来ない理由として、国王曰く、私がまだ若すぎるという事。 そしてショウマ宰相はまだまだ若いので引退は早いという事。
······だそうだ。
私は若くても実力と人望は十分じゃないか! 何が問題なのだ?
それに、ショウマ宰相のどこが若いんだ? 70歳を越えて、結構ヨボヨボに見える。
どちらも国王の言い訳に過ぎないのは分かっている。 私に宰相になってほしくないのだろう。
面倒だから国王に魔法をかけて操作しようとしたのに魔法にかからない。 なぜか王族に記憶や感情に関する補助魔法をかけることがどうしてもできないのだ。
ジャークにも相談してみたが、わからないという。
何度か試したがダメだったので、ショウマ宰相にちょっと魔法をかけて、自ら辞めてもらうことにした。
それでも結果は同じなので、問題ない。
私は25歳の若さで宰相の地位まで上り詰めた。
これで自分の天下になると思っていた。
将軍でさえこっそり私が操っている。 国王など操れなくても問題ないと思っていた。
私は常に正しい。 操る以前に私の意見に反論などあるはずがないと思っていた。
しかし、国王はことごとく反論してくる。 いちいち意見を挟んでくる。
私の考えに何が不満なんだ? どこがいけないんだ?
そうか! 国王はやはり私が官学を出ていないのが気に入らないんだ! 私が貧乏人の出なのが気に入らないんだ!!
それで私が宰相になるのも反対していたのだな。
そういう事か······
私を差別する者と相容れることはできない。 そういう者は私が何を言っても偏見の目で見るだろう。
排除しなければ······
何とかして国王を排除しなければ······
人竜族の王妃も一緒に排除しなければ······
どうすれば不審に思われずに排除できる?······
宰相になったドゥーレクは、国王をどうするつもりなのか?!
(|| ゜Д゜)




