7章 ゴーレム
森を歩いていると、バカデカイカマキリに遭遇する。
7章 ゴーレム
1人と2匹の旅が始まった。
『そういや、フェンリルは炎を使えただろ? もしかしてヴァラーハも何か使えたのか?』
「あのバカは何も使えなかった。 我は特別だ。 遠い昔だが、天龍の加護を受け、炎をもらった」
『天龍から? そんな事もあるんだ』
「我は特別できる奴だからな」
フフンと鼻を鳴らす。
『ふ~~~~~~~~~~ん』
聞くんじゃなかった!!
俺たちは山脈に向かって歩いた。 レイは時々フェンリルの背中にとまる。 フェンリルもそれを嫌がるようすはない。
可愛いレイと仲良くしてくれるので、少し好感度アップ!
レイとは話ができるといっても、ほとんど独り言だったので、フェンリルと話ができるのは楽しかった。 時々むかつくけど、随分フェンリルの喋り方にも慣れてきた。 聞き流せば腹も立たない。
俺って、お と な!
◇◇◇◇◇◇◇◇
トボトボと歩いていたら急にフェンリルが立ち止まった。
「止まれ!!」
『どうした?』
「あそこの木をよく見てみろ」
言われた場所を見みると、巨大なカマキリが木に擬態して構えている。 体長が3メルク以上ありそうなバカでかいカマキリだった。
『わぁ···危なかった。 あのまま歩いていたら、あの鎌でバッサリだったな』
俺たちが迂回しようと脇道に向かって歩き出した途端、カマキリが向かってきた。
「来たぞ!!」
『やばい! 風カッター!!』
風カッターでスパンと首を切り落としたにもかかわらず、こちらに向かって走って来る。
『わぁ~~~~~っ なんで死なないんだよ!!』
俺たちは走った。 後ろでドドド! と向かってくる足音が近づく。
「どうにかしろよ!!」
『わかった!』
今度は岩で固めようと思った時、ズドドン! と音がしたので振り返ると、カマキリは倒れてバタバタと痙攣していたが、そのうち動かなくなっていった。
『わぁ~~······さすが昆虫の生命力は凄いな······次からは先に足を斬ろう······しかし、カマキリってあんなに大きいとは知らなかった』
「バカ! あんなのがいる訳ないだろ! しかし、このところの異変はあまりにもおかしすぎる」
『初めに見たのが大猪とフェンリルだったから、大きいのがいるのは当たり前かと思っていたぞ』
「だいたいヴァラーハ(大猪)に襲われたって事から、普通じゃないんだ。 あいつはバカだが所かまわず暴れる奴ではなかったはずだ」
なんだか分からないが······少し罪悪感······
その後もデカイ昆虫やら、普段は人を襲わないような大人しい獣たちの襲撃が何度かあった。
もちろん俺が一発で倒したけどね。 でもそれは、フェンリルやレイが事前に教えてくれるお陰だけど······
◇◇◇◇◇◇◇◇
山の麓に近付いた頃、わぁぁぁぁっ!! っと、誰かの叫び声が聞こえた。
『聞こえたか?』
「おう!」
『どっちだ?』
「こっちだ!」
俺たちは声がした方に走り出した。
『何だ? あれは?』
小山のようにデカイ岩が動いている。
「ゴーレムだ!」
5メモク以上はありそうな、巨大な岩でできた人型の化け物だ。
ゴーレムに人が襲われていて、今まさに1人が殴り飛ばされて木に激突して倒れ、もう一人が駆け寄り覆い被さるようにしてかばっている。 その二人に向かってゴーレムが再び腕を振り上げた。
先に到着した巨大化したフェンリルがゴーレムの振り上げた右腕に噛み付く。 バカでかいと思っていたフェンリルが小さく見える。
『岩!!』
俺はゴーレムの足を岩で固めた。
ゴーレムは足が固まったまま、噛み付いて離れないフェンリルを振り解こうと腕を振り回す。
『フェンリル!! 離れろ!!』
フェンリルが離れるとすぐに『岩!!』と唱え、ゴーレムを全身岩で包み込んだ。
急いで襲われていた人の所に駆け寄ると、そこにいたのは人ではなくドワーフだった。
「ありがとうごぜいやした。 たすかりやした」
一人は気を失っている。
『大丈夫ですか?』と聞いたが聞こえるはずもない。
『フェンリル、通訳してくれ』
『通訳?』
『この人達に大丈夫かと聞いてくれ』
『めんどくさい』
『······この人達の言葉はわかるだろう?』
『もちろんだ。 しかしなぜ我がそんな事をしなければならぬ』
フェンリルは我関せずとそっぽをむいた。
『·········』
ずいぶん慣れたと思ったが······むかつく!
とにかく倒れているドワーフの状態を確認する。
息はある。 腕と頭に傷はあるが、大きなケガではなさそうだ。 頭を打って気を失っているだけだろう。 とにかく、彼らの住処に連れていかないと。
『住処はどこだ?』
俺は気を失ったドワーフを肩にかついで、どっちに行けばいいか、いくつかの方向を指差した。
「あぁ······こっちだす」
ドワーフは俺が言いたいことが分かったようで、山脈の方を指差した。
その時、ゴゴゴゴゴッ!とゴーレムを包んだ岩から音がして振動しだした。
『もしかして······』
「出てくるぞ!!」
その時、ズッゴ~~ン!!と、俺が出した岩が吹き飛び、ゴーレムが出てきた。
『やばい!!』
とりあえずドワーフを抱えたまま走ったが、このままでは追いつかれる。
『岩! 岩! 岩!』
幾つもの岩の壁を作り、足止めした間にドワーフを下してゴーレムに向かう。
『炎!』
最近習得した炎の剣を出す。
「ゴーレムに炎は効かんぞ!!」
『そうかな? レイ、フェンリル。 離れていろ』
俺は『超高温!』と唱えた。 炎の剣が赤から青に。そして白っぽくなった。
白い炎は超高温だ。 以前、岩肌が溶けたのを思い出したのだ。
ゴーレムは、力は強いが動きはそれほど早くない。
ゴーレムの足元をすり抜けざま、足を斬る。 ズゴン!という衝撃と共に足の斬られた部分がずれていき崩れ落ちた。
膝をついた状態のゴーレムに、飛び上がって首を斬ると、ズドン!と首が下に落ちてころがっていった。
『よし!』
俺は強い?
「バカ! 後ろ!!」
後ろを振り返ると、首のないゴーレムが起き上がり、俺に襲いかかってこようとしている。
『わぁぁ!』
あわてて飛び下がる。
『なんだこいつ!! 虫か!! 首を落としても死なないとは!! じゃあ······』
超高温の剣を5メモク以上の長さにした。
『これでどうだ!!』
向かってくるゴーレムの胴体を頭があった部分から縦に真っ二つに斬り、剣先が地面にまでめり込み、煙と共に草や鉄が焦げる匂いが漂う。
ズドドォォン!
左右に崩れ落ちたゴーレムは、やっと動かなくなった。
『ふう~』
俺は振り返り、ガッツポーズ。
「おい、燃えてるぞ」
フェンリルが俺の後ろを顎で指す。 振り返ると、ゴーレムの周りが燃えている!!
『あわわっ!! 水!!』
あわてて水をかけると、ジュ~~ッと煙と湯気が立ち昇った。
『あぶない、あぶない。 山火事になるところだった』
もう一度ゴーレムが完全に動かなくなている事と、火が完全に消えていることを確認してからドワーフの所に行くが、一人は気を失ったままだ。
「ありがとうごぜいやす! カゴシャサマ。 フェンリルサマ」
ドワーフは凄い勢いで何度も頭を下げる。
加護者って知ってるんだ······フェンリルの事も知ってる?
『お前、このドワーフと知り合いか?』
「いや、こいつらは知らん」
『お前の事を知っているぞ』
「我はこの辺りの森の主だからな」
『そうかよ。 じゃあ、天龍と加護者ってみんな知ってるものなのか?』
「大概の魔物や妖精はな」
『ふ~~ん』
俺がフェンリルと話している間、ドワーフは俺の言葉を待っている様子だ。 面倒だがまた、身振り手振りで話せないことを説明した。
納得してもらえた。
フェンリルの野郎!! さっきまでドワーフの目の前で話していたんだから、話せるのはバレバレなのに、通訳ぐらいしろよな!!
俺は再び気絶したドワーフを担ぎ上げ、山脈に向かう。
その時、俺たちの後ろで、先ほど燃えて水をかけた草木が、ムクムクと起き出し、元通りに生い茂ったことを俺は知らなかった。
ドワーフを助けた主人公たちは、ドワーフの住処へ向かう。
(;゜0゜)