66章 鋼装甲
レイからフェンリルへの加護を忘れていた!
「岩ならできそう」
66章 鋼装甲
それから3ヶ月ほどが過ぎた。
大規模な昇級試験が行われ、多くの者が合格した。
もちろんヨシュアたちはそろってBクラスに、マルケス、フィンはAクラスに、そしてスーガはSクラスに合格した。
それでマルケスとフィンはAクラス棟に、スーガは俺の隣に越してきてみんなは大喜びだ。
俺はというと、訓練の合間に城に呼び出されては作戦会議に参加し、オベロンやグノームを呼び出したり、オーガやハーピーやグリフォンの住処に行ったり、アンドゥイ国まで会議に言ったり、頼まれれば兵士の訓練の指導をしたりして大忙しだった。
最近は午前中の勉強を、実地を兼ねて郊外で行うようになっていた。
それというのも、理論の応用で、極大魔法を使うこともあれば、補助魔法を使っていろいろ試したりしているからだ。
フェンリルやザラも一緒に習っている。
色々できるようになった。
それぞれの攻撃魔法を、威力をそのままに範囲を狭めてみたり(範囲狭窄魔法・補助魔法)、途中で曲げてみたり(屈曲魔法・補助魔法)出来るようになった。
凄いのは追跡魔法(補助魔法)で、目標に躱されても当たるまで軌跡を変えて追いかけていったり、分散追跡魔法(補助魔法)で、極大魔法を一か所で爆発させるのではなく、数千に小分けて攻撃したりする魔法だ。 一気に数千の敵を攻撃できる凄い魔法だ。
中でも一番気に入っているのは、禁類焼魔法(補助魔法)だ。
俺がずっと気なっていたのだが、炎や雷魔法を放つ時に、周りの草木が燃えてしまう。
極大魔法になるほど被害が大きくなってしまうのだが、これなら燃え移らなくていい。
これは周りの木々の心配だけでなく、戦いの時に味方を巻き添えにする心配がないということだ。
ただ、類焼はしないが、爆風までは止められない。 普通の人間には爆風も致命傷になるので、どうすれば防ぐことができるか、今それをみんなで悩んでいる最中だ。
「結界で囲んでしまえば爆風は止められるだろう?」
簡単に言う俺をフェンリルは睨む。
「普通は結界を四六時中出していると、魔力がなくなるんだ。 お前らみたいに使い放題じゃないからな」
フェンリルは俺に黙っていろと言う。
「なぁ、風魔法うまく使えないかい? ほら、ここをこうして······」
ザラは小さい炎を出してみて下側を風魔法で覆う。
「それなら魔力は少なくて行けますね! さすがザラ先生」
フェンリル、スーガ、ザラは少し離れた所で楽しそうに議論しあっている。
ガドルは風魔法を持っていない。 俺とレイ、ガドルとルーアは何となくボ~~ッと立っていた。
「そういえば···」と、ルーア「レイちゃん、フェンちゃんにもう一つの魔法の加護をあげるのはどうなったの?」
そうだ。 もうしばらくすれば、もう一つ加護することが可能だと言っていた。
「そういえば忘れていたな。 レイ、どうなんだ?」
「う~~~ん」
レイは少し離れたところにいるフェンリルをじっと見つめる。
「うん、いけそう」
「そうか!」『フェンリル、レイがお前に魔法の加護をくれるってよ!』
熱心に話していたフェンリルは俺の心通魔法を聞いて、弾かれるように振り返り、走ってきて、尻尾をバッタンバッタンと振っている。
「レイ、本当か?」
「うん······岩ならいけそう」
「そうか! 早速頼む!」
「うん·········できたよ」
フェンリルの周りに岩が出たり、俺が得意な岩カッターを出したりしている。
「おおぉぉ······レイ! ありがとう!」
う~~ん。 楽しそうにはしゃいでいる。 ちょっと可愛い。
昼食の時間になると、フェンリルは食事中のホグスの横にベッタリついて何やら話している。 岩魔法について色々聞くためだろう。
······俺も岩魔法を持っているんだけどな······
フェンリルとホグスは、午後の訓練に少し遅れてきた。 話しに夢中になっていたようだ。
だが、なぜかフェンリルは得意顔だ。
「何か面白い魔法を覚えたのか?」
「ちょっと見てみろ」
フェンリルの頭部と体と足に、少し青みがかった濃いグレーの鋼色の鎧ができた。
「お前のように四六時中結界を張ることができないから、鎧を作ってみた。 どうだ! 鋼装甲だ。 で······」
鋼装甲をつけたまま、大きな姿になると、それに合ったサイズになった。 さすがにこれは驚いた。
「伸縮自由かよ! これはすごいじゃないか!」
「こんなもので驚くのは早いぞ」
どうゆうこと? と見ていると、フェンリルは肩までの高さが6メルクほどの、さらに巨大な姿になった。
あの大きな姿は見間違いじゃなかったんだ!
当然、鋼装甲もサイズにピッタリに伸び······あれ?······あれは何?
フェンリルの額にあるダイヤモンド型の模様があるところから、2メルクほどの長い角が伸びてきて、それを鋼装甲が覆っていく。
先日は、角には気付かなかった。 凄い! かっこいい!
フェンリルがフフン! と、自慢げだ。 今日は威張るのを許してやろう。
レイも、カッコいい! カッコいい!と、フェンリルの周りを飛び回っている。
「そうだ! もっとカッコよくしてあげる!」
レイはフェンリルの周りをなぞるように飛び回る。 すると、フェンリルの鋼色の装甲に赤い模様が這うように現れていった。 俺の魔法衣の模様に似ている。 一本角に巻きつくようにも一段と赤い模様が覆っていた。
「これで少しは魔法も跳ね返すことができるからね」
「おぉぉっ!! レイ、恩に着る!!」
フェンリルは自分の体を見回しながら「おぉぉ······」と、感嘆し、勢いよく尻尾を振るのでホグスが跳ね飛ばされそうになっていた。
後でフェンリルがコッソリ教えてくれた。
「実は、我の角は武器ではあるが弱点でもある。 だから攻撃態勢(一番巨大な姿)になっても、基本は角までは出さない。 いや、今までは出せなかった。
しかしこの鋼装甲で怖いものなしだ。 ガハハハハ!」
また笑い方が下品だが、まぁいいか。
フェンリルが頭を撫でられるを嫌うのも、そのせいだったらしい。
鋼装甲! カッコいい!!
シークとお揃い(?)
(*´σー`)エヘヘ




