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62章 解毒

スーガが二度も襲撃された?!!

もしかしたら俺と間違えられたのか?

 62章 解毒



「さぁ! 帰るか」


 フェンリルに(また)がって、ニバール国へ向かう。


 行きと違って俺の強化型重力操作魔法で帰ると、半日もかからなかった。 

 残念ながらフェンリルの驚く姿を見る事は出来なかったが、あのフェンリルが一頻り()()の魔法に感心していた。



 だから、凄いのは俺なんだけど······





 昼過ぎ、ちょうど訓練が始まった頃かと闘技場に行ったが、誰もいない。


「俺がいないから、外の訓練場で練習しているのかな? 行ってみよう」


 案の定、闘技場の外にある訓練場に行くと大勢の傭兵が訓練をしていた。



「いるいる。 マルケス! フィン!」


 俺はマルケスとフィンを見つけて手を振った。



 あれ? スーガがいない。 仕事かなぁ? 残念! ガドル先生もアニエッタさんもいないみたいだ······一番に会いたかったのに······




 マルケスとフィンは俺を見つけるなり、訓練をほったらかしにしてこちらに全速力で走って来る。


 走ってきたマルケスとフィンの様子がおかしい。 凄く緊張した面持ちなのだ。


「そんなに急いで、なにかあったのか?」

「ハァハァ! なにかあったどころじゃない! スーガが二度も襲撃を受けた」

「なんだと?! どういう事だ! スーガは?!」


 走った来たマルケスたちは息を整えている。

 アージェスやホグスと、訓練中の傭兵達も中断して集まってきた。



「初めは隣町までの護衛の途中にいきなり魔法攻撃を受けた。 しかしキリルが早めに察知してくれたおかげで、結界が間にあったので事なきを得たんだ」


「攻撃を?!······犯人は?」

「気配は覚えているそうだが、顔は見ていないそうだ」

「まさかコーマン?」

「俺たちも考えたが、スーガはコーマンを知っているので気配を間違えたりしないだろう」


 俺はふと気がついた。

 

「そうだ、コーマンは捕まっているのだった。 えっ? なら、マルケスたちもコーマンが犯人と考えるのはおかしいだろ?」



 そこにホグスが来て、代わりに話す。


「コーマンはあの後逃げ出した」

「?!! どうやって?! まだ呪文封じ魔法は効いているはずです!」

「多分コーマンのドラゴンの仕業だ」

「あっ!······」


 コーマンは竜生神だ。 彼のドラゴンの事を忘れていた。

 しかし、マルケスが俺の腕を引っ張り、無理やり自分の方に向かせた。


「そんな事より大変なのは二度目だ! 昨日スーガが毒を飲まされた!」

「毒?!」


 天龍でなければ解毒は出来ない。 回復魔法でも簡単に直せないと聞く。


「今、ガドル先生の家で先生とアニエッタさんが徹夜で回復している。

 医者にも見せたが、毒の種類が分からないと解毒もできないそうだが、かなりの猛毒だろうということだそうだ。 二人の回復のおかげでなんとか持ちこたえているようだが、どうなるか分からんとガドル先生も言っていた」


 一瞬頭が真っ白になった。 なぜスーガが狙われる。 もしかして俺とよく似ているから間違えられたのか? 俺のせいなのか?



 ······俺のせいなのか?······



「呆けていないで急いでスーガの所に行くぞ。 お前の回復の方がよく効くかもしれない」


 フェンリルに腕を引っ張られて我に返ったが、頭が混乱している。


「とにかく乗れ!」

「お···おう!」


 驚くみんなの前で大きな姿に転身したフェンリルに乗ってガドルの家に急いだ。



 ◇◇◇◇



 部屋に駆け込むと、ガドルとアニエッタ、それにルーアとミンミも一緒に回復をしていた。

 スーガは血の気もなく凄い汗で、呼吸も荒い。 キリムもスーガの枕元で意識を失っている。



 俺たちに気がついてガドルが振り返った。


「おぉ!! シーク殿! 帰ってこられましたか」


 急いで俺とレイも回復に加わる。

 ガドルとアニエッタも顔色が悪く、今にも倒れそうに見える。



「どんな具合なのですか?」

「ふむ。 昨日の昼飯の時に毒を飲まされたのじゃ。 本来回復魔法は毒には効かんのじゃが、スーガの体力を上げる事でどうにか持っている状態じゃ。

 ()()はともかく、そろそろアニエッタの魔力が切れるじゃろう。 戻ってくれて助かった」


 ほとんど無心で回復していたのだろう、アニエッタはやっと俺がいる事に気がついた。


「あ······シーク······」


 それだけ言うと、気を失ってしまい、ミンミもバタンと倒れた。


「わっ! アニエッタ!!······後は俺が何とかします。 先生はアニエッタさんを···」

「わかった。 すぐ戻る」


 ガドルはアニエッタとミンミを抱きかかえて部屋に寝かせに行った。






 スーガは本当に苦しそうだ。 猛毒という事だが、よく生きていてくれた。


「レイ、毒を回復する魔法はないのか?」

「う~~ん······分からない」


 くそう! なぜ毒を回復できる魔法がないんだ!! 天龍は万能じゃないのかよ!


「とにかく回復威力を最大限まで上げてくれ!」

「うん!······できたよ」


 手元の光が輝きを増していく。 しかし、スーガの容態は一向に好転する様子がない。



「スーガ! がんばれ!」



 その時ガドルが戻ってきて、再び回復に加わったのだが、ガドルも年齢が年齢なだけに限界がきているように見える。

 

「先生、少し休んでください。 ここは俺が」

「いや、()()にはまだ出来る事があるでのう。 マルケスたちも昨日からここにつきっきりだったのじゃが、見ている以外なにもできんので集中の邪魔じゃからと追い出したのじゃ。 

 シーク殿が帰ってきたら、必ず初めに闘技場に向かうじゃろうから、見つけ次第ここに連れてくるように言いくけての」

「すみません。 俺がいないばかりに」


 ガドルは顔を上げて俺の顔を見つめてから、首を横にふった。


「シーク殿が謝る事は何もありませんぞ。 お気になさるな」



「·········」

 




 毒······毒の種類が分かれば医者でも治す事が可能なんだよな。


 毒にも色々な種類がある。 腹を壊したり、手足がしびれる程度のものや、笑い茸の毒なんてのもある。

 凶暴になったりする毒もあったような······狂暴?!······狂暴・・・そうだ!!


「レイ! 浄化で毒を消せないか?!」

「······わからない」

「やってみろ!!」とフェンリルが怒鳴る「いい考えかもしれない! 他には何もないのだから試してみる価値はあるぞ!」


「わかった! 先生はそのまま続けていて下さい」


 ガドルはうなずく。



『結界! 浄化魔法!』



 結界で囲んだ方が一点に集中すると思ったのだ。 ガドルと共にスーガを結界で囲み、浄化魔法をかける。

 結界内にキラキラと細かい粒子が飛び散りスーガを包んでいき、吸いこまれていく。


 息遣いが少し落ち着いてきて、顔色が良くなってきたように見える。



『浄化魔法!』もう一度唱えた。



 すると、みるみるうちにスーガの顔色が良くなってきた。


「やった!! 浄化魔法が効いたぞ!! スーガ! 聞こえるか? スーガ!!」



 血行が戻り、荒かった息が平常に戻っていき、先にキリルの意識が戻った。

 そしてスーガがゆっくりと目を開けた。



「スーガ!! 良かった!!」


 俺はスーガに覆い被さって抱きしめた。


「······おい······俺はそんな趣味は···ないぞ。 離れろよ」





 スーガが戻った。






毒の回復は、今までできないと言われてきたのに、発想の転換で可能になった!

( =^ω^)

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