61章 エルフ
エルフ兵たちと、会食をした。
ライラって!
61章 エルフ
ライラとは違うエルフの女性が迎えに来た。
いやぁ··· この人も美しい·······
案内されたのは講堂ほどある広い部屋だ。
縦長に並べられた長テーブルに白いテーブルクロスを敷き、豪華な食事が所せましと並べられていて、それぞれの長テーブルの両サイドに数百人のエルフ兵が座っていた。
俺たちが入ると、一斉に立ち上がり、剣を抜いて柄を額に当ててから、胸に抱え持った。
一糸乱れぬ動きだ。 凄い!
軍服だろう。 薄いグリーンの立襟で、膝丈の長めのジャケットに、同色のパンツをはいている。
エルフ兵の中には3割近くの女性がいるが、全員同じ服装なのでわかりにくい。 ただ、やはり女性の方が少し背が低く、体も柔らかい曲線が覆っている。
それにしても、男女とも人形のように美しく、微動だにしない。
真ん中の通路を通ってオベロンと王と王妃が立って待っている一段高い席に着いた。
フェンリル用に1メルクほどのクッション付きの大きな椅子に、テーブルと同じ高さにレイ用のクッション付きの椅子まで用意されていた。
みんなからよく見えるようにだろう。
オベロンが酒杯を持ち上げると、兵士たちもならって杯を持ち上げた。
オベロンがよく通る声で演説を始めた。
「みなさん! 此度の戦いでは······中略」
オベロン話しは長い。 四半刻(20分以上)は話している。
兵士たちは真剣に聞いていたが、俺はあくびを押し殺しながら聞いていた。 しかし、レイが大きなあくびをしてしまった。
『レイ! あくびをするな!』
『···は~~い』
「······という事で、シーク様、レイ様、フェンリル様のために杯を挙げたいと思う。 救世主様方と、エルフに!!」
「「「救世主様方とエルフに!!」」」
杯を高く挙げて、飲み干す。
き···救世主って······
まぁいいか······とにかく食事が始まった。
しかしこの料理、これは何で出来ているのだろう? 物凄く美味しい!
今まで見た事がない食材が多く使われている。
レイは言われた通り、お上品に食べているが、フェンリルの食事までもらう約束までしている。
ここはレイにたっぷりと食べてもらっておこう! また食べたい!
食事中にハルディン国王がエルフ兵たちの紹介をしてくれた。
最前列には大隊長クラスが座っている。 そして、目の前に、エルフにしては少し大きめの男性がいたのだが、彼はファーディナンド将軍。
その向かい側にいるとてもキレイな女性は、どこかで見た事がある。
誰だったっけ? と思っていたら、ライラだ! なんと、ライラは副将軍だそうだ。
フェンリルが来るというのを聞いて、世話係を買って出たらしい。
ライラは俺に会釈をしてきた。 俺もニッコリと笑みを返す。
さっきのドレスもいいけど、軍服も逆に色気があって美しさに拍車がかかっている。
戦う姿も美しいんだろうな······
思わず妄想に入っていると、突然横で声が聞こえた。
「アニエッタはどうしているのかなぁ?」
俺はビクンとしてフェンリルを見る。 前を向いたままだが、このタイミングで言うか?!
もしかしたら心通魔法が解除できていないんじゃないか?!
『解除! 解除! 心通魔法解除!』これだけ言えば大丈夫だろう。
フェンリルを見ると、そっぽを向いたままで、口の端で笑っていた。
やっぱり、む か つ く !!
◇◇◇◇◇◇◇◇
翌朝、オベロンや国王たちとの朝食後、出発するために一緒に部屋を出たが、あれだけうろうろしていたエルフたちが一人もいない。
その原因が分かった。
表に出ると、湖の周りにもの凄い人だかりが出来ていた。 御見送りに出てくれていたのだ。
ファーディナンド将軍とライラも軍服を着て待っていた。
「今回は私がお送りいたします」
ライラが頭を下げる。
エルフの里からは空を飛んでいくことが出来ない。 一種の結界になっているらしい。
船に乗って湖の中を通って行かないと外には出ることができないそうだ。
オベロンが俺に頭を下げると、全てのエルフも一斉に首を垂れた。
「本当ににありがとうございました。 ニバール国の王宮内にも臨時の魔法陣を作らせて頂きましたのでいつでもお伺いいたすことが出来ます。 またその時に······」
「よろしくお願いします」
オベロンと国王夫妻とファーディナンド将軍に別れを告げて、ライラの先導で船に乗り込んだ。
船室に入る前に、別れの挨拶と思ってエルフたちに向かって手を振ると、ズザザ!! と、一斉に膝をついた。
何万人のエルフがである。
いやいや······普通に、わぁ~~! とかって言ってくれると思ったのに、ビックリ!
なんだか申しわけなくて、急いで船室に乗り込んだ。
◇◇◇◇
船室のソファーに座る。
「ライラさん。 エルフってあんなに生真面目なんですか?」
別れの挨拶に一斉に膝を付くってあり得ないだろう。 しかし、ライラは首を傾げる。
「なにかご不興な事でもありましたか?」
あ······この人も真面目な種族の一人だった。
「そういう訳ではありません。 気にしないでください。
そういえば、ファーディナンド将軍もほとんど喋らなかったな······」
半分は独り言だったのだが、真面目なライラはきちんと答えてくれた。
「ファーディナンド将軍は人一倍無口で有名なのです。 必要なこと以外、私も聞いたことがありません」
オベロンや国王様はけっこうおしゃべりのように感じたのに、エルフって······
対岸に到着して船を降りた。
ライラは名残り惜しそうに船室に入っていき、俺たちは湖の中に消えていく船を見送った。
人形のような美しい容姿で、一糸乱れぬ美しい動きをするエルフは、本当に美しいの一言でしょうね。
(;゜0゜)




