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59章 伝説のフェンリル

「伝説のフェンリル」という言葉をよく聞く。

どういう事か、聞いてみた。

  59章 伝説のフェンリル




 その時ノックがあって入って来たのはなんと!! 超美しいエルフのお姉さんだった。



 ちょっと憧れていた!


 ちょっと期待していた!


 やっと来てくれた!!



「お茶もお出ししませんで申し訳ありません」


 そう言って、胸も(あら)わな美しい女性が美しい茶器に入れたお茶と、オシャレな器に見た事がない甘い香りの丸いお菓子を持ってきてくれた。


 どう考えても俺たちの話しが終わるのを待っていたようだが、そんな心遣いも美しさの一つだろう。



「フェンリル様、お久しぶりです。 シーク様、レイ様初めまして。 ライラです」



 わぉ! エルフはみんなこんなにも美しくて優雅なのか?! 


 

 胸が大きく開いた白っぽいドレスは全体に同色の美しい刺繍が施され、袖はレースで縫い上げらている。 それがまた(わず)かに茶色がかったプラチナブロンドの髪色にマッチしていて、後光がさしているように見えた。



 それにしても、フェンリルはこの綺麗な人とお知り合いなのか?!······羨ましいぞ、この野郎!



「夕食のご準備もそろそろできると思いますので、後ほどお呼びにあがらせていただきます」


 ライラはチラリとフェンリルに目配せをして出て行った。



 なんだ?! その合図は!!



 俺は先程のライラを見て、ふと疑問に思った。


「そういえばハルディンさん、フェンリルがよく『伝説の···』とか言われるのを聞くのですが、なにかがあったのですか?」


 あぁ······と、ライラが出て行った扉の方に視線を送ってから、渋い顔をしているフェンリルを見て、微笑んだ。



「フェンリル様の爆炎魔法はすさまじく、アンデットたちを蹴散らせていったのですが、皆から慕われるようになったのは······」

「それ以上言う必要はないぞ!!」


 フェンリルが横槍を入れてきたので、風魔法で口輪をしてやった。


ばば(バカ)! ばぶべ(はずせ)!!」  



 それは無視!



「それで?」


 俺が乗り出すと、珍しくハルディンは笑いをこらえている。


「フェンリル様は敵を蹴散らせながらも、身を挺して味方の救出をなさったのです。

 口癖のように『もう少しでマシューが奴を倒すから、もうひと頑張りしろ!』と、常に味方を鼓舞し、危険な場面には必ずや現れては危機を脱していかれたのです。

 本当に素晴らしい御勇姿でございました。

 ライラも助けられた一人で、フェンリル様を信仰しているのだといつも言っておりました」

「ほぅ~~~」


 俺はフェンリルの首根っこを抱え込んで頭をゴシゴシ撫でる。


「凄いじゃないか! 伝説のフェンリル様!」

ほぼはほう(この野郎)! はへほ(やめる)!」 


 逃げようとするフェンリルだが、俺は放さずに押さえ込んでいる。


「クックックッ」「フフフフ」と、王と王妃は思わず笑ってしまっているが······オベロンは澄まし顔だ。





「そういえば、オベロンがエルフの王かと思っていたけど、違うのですね」


 それを聞いてオベロンは少し得意顔になっているように見える。


 その前に、オベロンを始めに「オベロン」と呼び捨てにしてしまったので、そのままなのだが、いいのだろうか?

 エルフ王のハルディン()()よりも偉いと思うのだが······


 まぁ、本人が嫌がっているそぶりをしていないから、いいか。 と、自己完結。




 それより、得意顔のオベロンはわざわざ立ち上がった。


「私はエルフですが、妖精全ての王を名乗らせていただいています」



 あぁ、そういう事?



「それでゴブリンやドワーフの全て王という訳か。 そうだ!」


 フェンリルの口輪を外して、乗り出した。


「ここに来る前にトロールに会ったんです。 彼らにも加護を与えて、戦いにも来てくれることを約束しました。 知らなかったのですが、彼らも妖精なんですよね」


 ほぅ······と、オベロンは驚いた。


「彼らは心優しい種族ではあるが、滅多に心を開くことがないのです。 さすがですね」

「というより、黒魔法の影響でトロール同士殺し合っていたので、浄化して加護を与えただけです」


 オベロンはそれを聞いて今までにないほど驚いている。


「ト···トロールがそんな事になっているとは·········知りませんでした!! ほんの1ヶ月ほど前にはなんともなかったのに!」

「ここ20日ほどの間に急激に影響を受けたと言っていました」


 オベロンはガクッと床に膝を落とす。


「なんという······妖精王失格です······妖精を代表して申し上げます。 シーク様、レイ様、本当にありがとうございました」


 そのまま俺に向かって深く頭を下げて、土下座をしている。

 やめて下さいと抱え起こした。


「おかげで強力な援軍を得る事が出来たのだからいいじゃないですか」

「温情あるお言葉、ありがとうございます。 こうなれば、前回の戦いのときは皆に任せていたのですが、この度の戦いでは妖精の王として恥じぬよう、誠心誠意勤めさせて頂きます」



 あ······前回の戦いのときは出ていなかったのか······しかし、クソ真面目なこと。



 ハルディンとイヴリンはソファーから立ち上がり、オベロンの前に(ひざまず)く。


「オベロン様、我々も死力を尽くす事を御誓い申し上げます」



 この人たちも、真面目なんだ。




 三人は気が済んだ(?)のか「夕食はライラが迎えに上がりますので、それまでごゆっくりなさっていてください」と、出て行った。






フェンリルは強くて優しかったのですね。

( =^ω^)

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