表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/110

57章 エルフの里

オベロンを召喚して、エルフの里に通じる湖まで案内してもらう。

 57章 エルフの里




 翌朝、トロールと半年後の約束をして、俺たちはエルフの里に向かって飛び立った。



「なぁフェンリル。 レイに強化してもらったから、絶対俺の重力操作で飛んだ方が早いと思うんだ。 だから背中に乗せてくれたら俺の力で飛ぶぞ」


 並走して飛んでいたが、どう考えても俺の方が早い。 フェンリルを掴んで飛んでもいのだが、乗せてもらった方が飛びやすいと思うのだよな。


「チッ!」


 またチッ!って言った? こいつ!


「仕方がないな。 乗れ」


 親切にも大きい姿に転身してくれたので、飛びながらフェンリルの背中に乗り移って、レイは俺の前に乗った。


「行くぞ!······わぉ!」

 

 全速力で飛んでみた。 もちろん限界を知っておきたかったからだ。

 遠くの方にわずかに見えていた山々が、あっという間に目の前に来て、危うく通り過ぎるとこだった。



 思った以上に早い! スピードの調節が必要だな。



 山の(ふもと)に降り立った。


「マー! 早い!早い!」


 素直に喜んでいる。 可愛いなぁ。 これも強化してくれたレイのおかげだけど·········

 フェンリルを見ると、驚きを隠せない表情をしていた。



 フン! 思い知ったか!!



 そうだ! もうフェンリルには聞こえていないんだ。

 ざまぁみろ! ざまぁみろ! ざまぁみろ!!



 という事で、気が済んだので、オベロンを召喚した。





「お待ち致しておりました。 この山の先の湖に里への道がございます」


 オベロンは、相かわらず澄ましている。

 グノームがいなければ、仕草がいつも優雅だ。



 しかし、結構険しい山だ。 歩くのは無理だよな。



「俺と一緒に飛んでいきますか?」


 そう聞くと、そんな申しわけない事はできませんと断ってきた。



 じゃあどうするの?



「少しお待ちください」


 そう言うオベロンの視線の先の山の向こうから白いものが飛んでくる。



 鳥か?······いや、ペガサスだ!!



 オベロンの前に優雅に降り立ったペガサスは、全身輝くように真っ白で、とても長くわずかにウェーブのある(たてがみ)と、長く地面にまで引きずるほどのシルクのような光沢のある尾は、動くたびに揺らめいている。


 オベロンはペガサスの首を優しくポンポンと二回叩いてから、軽やかに飛び乗った。


「ついてきて下さい」


 トトン!と地面を蹴って飛び上がるペガサスの後から、俺たちもついていく。




 絵画のように美しい緑豊かな山々だが、高く尖っていて険しくて、歩いて越えようとすればどれだけかかるか分からない。



 しかし空から見る分には問題ないので(しば)し景色を楽しんだ。

 


 これだけ奥深く美しい山の連なりはなかなかお目にかかれない。 山の(すそ)には、わずかに(もや)がかかり谷を埋めている。

 その合間に滝が顔をのぞかせ、白い水煙を立ち昇らせて緑に潤いを与えながら靄の中に吸い込まれていく。 そしてその中を絵画のように優雅に飛ぶペガサスがまた美しい。


 

 その山々を抜けた先に大きな湖が見えてきて、湖畔に降り立った。


挿絵(By みてみん)


 しかし、桟橋が湖に突き出しているものの、どこにも船もなく、湖から里に通じる道もどこにもなかった。



「えっと······」



 オベロンが再びペガサスの首を二回ポンポンと叩くと、そのまま飛んでいった。

 そして満足そうに見送ってから俺たちに向き直る。


「しばらくお待ちください」



 今度は何をするでもなく、桟橋の先でじっと湖に向かって(たたず)んでいた。



 見渡す限りでは船もなく、波一つない穏やかな湖面があるだけだった。



 何をしているのだろうと思っていたら、突然湖面が湧き立ちだし、水が大きく盛り上がってきて、湖の中から水しぶきと共に船が浮かび上がってきてゆっくりと桟橋に横付けしたのである。


 船首と船尾が高く盛り上がっているように湾曲した珍しい形をした船で、船首には見事なペガサスの彫刻が施され、船尾からは女神のような美しい女性の像が船内を見守っているように造られていた。 

 10メルクほどの船だが、その彫刻以外には漕ぎ手やオールもマストも何もなかった。



 俺は思わず驚いて見入っていた。



 一人のエルフが船の床にあるドアを上に開けて出てきて、桟橋に向かって橋桁(はしげた)が下ろされた。


「どうぞ」


俺たちは乗船するようにオベロンに促される。


「は···はい」「お···おぅ」


 (がら)にもなくフェンリルの返事が焦っている。



 しまった! フェンリルも俺と同じように驚いていたんだ。 彼の驚いた顔を見逃した!



 それはいいとして、促されるまま乗船したが、いま湖から上がってきたにしては船に水滴が一つもついていない。


 そうか······きっと結界を張っていたのだろう。




 船の床にあるドアから階段を降りると、船内とは思えないほど豪華な部屋に通された。


 品のある見事な調度品に応接セット。 細工が美しいランプに、窓はないはずなのだが美しいステンドグラスから明かりが差し込んでいた。


 なにより、外観とはどう考えてもサイズ感が合わないほど広いことだ。


『レイ、これはどうなっているのかな? 船の大きさと船室の広さがあっていないんだけど······こんな魔法があるのか?』


『あるよ。[空間変換魔法]だけど、これには練習と勉強をしないと、変換したときに歪みができて、おかしなことになる事があるんだよ』

『そうか······じゃぁいいや』


 今のところ、特に部屋が狭くて不便に思った事もないから必要ないだろう。




 しかし、オベロンは俺の驚きに満足したようだ。 まぁ、部屋の謎は解けたとしても、調度品の数々は驚きに値するほどには違いない。


「そう長くかかりませんので、ごゆっくりお掛けになってお待ちください」


 そう言って軽く頭を下げると部屋から出て行った。

 それから半刻も経たずにオベロンが戻ってきた。


「到着いたしました。 こちらに御越し下さい」



 驚いた! 特に揺れる事もなかった。 出航もせず船は動かずにただ停泊していたのかと思ったら、到着だって?





 船室から出ると、景色は一変していた。



 広い湖には乗ってきた船の十倍はありそうな大きく美しい船がずらりと並んで係留されている。

 どの船にもペガサスと女神像が飾られていて、それ以外は同じようにマストも何もない美しい流線型の船体だ。


 そして陸には、美しいグリーンの建物が巨木の間に幾つも立ち、ツリーハウスみたいなものとは違って、建物に木々がうまく融合しているいるようで、多分、空から見ても建物があるようには見えないような、自然と一体化している構造になっている。



 森と一体化しているので分からりにくいが、この場所から湖周辺は見渡す限りこのようなエルフの建物が立っていて、かなりの規模なのが計り知れた。  






エルフの里までは、湖の中を通って行くのですね!( ゜ε゜;)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ