56章 心通魔法
色々な魔法をレイに授けてもらう。
そう言えば、俺が考えていることが筒抜けなのをどうにかできないのか?
レイの返事は驚く事だった。
56章 心通魔法
俺たちが泊まるために、一つの家を提供してくれた。
家と言っても30メルク四方程の巨大な洞穴のような場所なのだが、わざわざ俺たちのためにフカフカな毛皮を敷いてくれていた。
その毛皮の上に寝転がる。
「レイ、今日はよく頑張ってくれたな。 おかげで回復が早く終わった」
「へへへ」
レイは褒められて嬉しそうだ。
「そういえば、俺の記憶が戻ったのに、レイが魔法を使えることをすっかり忘れていた。
俺に加護しれくれる魔法って、レイには全て使えるんだよな」
「そうだよ」
城にいる時に話しは聞いてはいたが、自分が竜生神になれるかどうかも分からないから、話し半分でしか聞いていなかったのだ。
それにガドルが描いたレインボードラゴンの絵は、今のレイのような小さい姿ではなく、巨大化したレインボードラゴンの絵だ。
という事は、巨大化して戦う事ができるという事だ。
そう、自分の使える魔法の全てを使って、敵であるブラックドラゴンと戦う事が出来るのだ。
なんだかレイが凄い生き物に見えてきた。
レイの知っている限りの魔法を教えてもらいたい。
他にどんな魔法があるのか無性に知りたくなってきた。
「なぁレイ、他にどんな魔法ができるんだ?」
「う~~ん。 例えばどんな?」
とぼけているのか、本当に自分がどんな魔法ができるのかを知らないのか。
「レイが知っている魔法全部」
「?······わかんない」
やはり俺の方からこの魔法と言わない限り、勝手に加護してくれることはないという事か。
くそう! もっと勉強しておけばよかった。 きっとスーガなら色んな魔法がスラスラ出てくるんだろうな。
「じゃぁ、雷とか炎とかの、[爆雷]とか[爆炎]とかは出来るようになったけど、それよりもっと強い魔法は?」
「う~~ん。 究極魔法ならあるよ。 [黒雷]と[黒炎]だけど」
「じゃあ、それを頼む」
「わかった!······できたよ。 でも、これは威力が強くて、山が2~3個吹き飛んじゃうから気を付けてね」
え?······山が2~3個?······使うのはやめよう。
他に何かないかなぁ······そうだ。
「じゃぁ、動体視力と反射神経を上げてくれただろう? あれをもっと早めるなんて事はできるか?」
「う~~ん。 [認識加速魔法]で、動体視力も反射神経も上げられるよ。 これを使えば重力操作魔法とか結界魔法とか、攻撃魔法のスピードも上がるんだ」
「それは凄い。 頼む」
「······できたよ」
「ありがとう! やはり、レイは凄いな」
僕は凄い!凄い! とレイは嬉しそうに飛び跳ねる。
穏当に無邪気で可愛い。
しかし、このままでいけば、いつかはブラックドラゴンと戦わなければいけないのが心配だ。
もう少し心が成長してくれればと思う。
生意気なフェンリルほど妙に落ち着いてもいやだが······いちいち俺が言う事に文句を言ってくるし、すぐバカにしてくるし······
言ってる尻からフェンリルが俺を睨んでくる。
そうだよなぁ······俺の考えていることが筒抜けなんだものなぁ。
「そうだ! 俺が心の中で考えていることが分からないようにする魔法ってないのか?」
すると、レイは何を言ってるの? と言う風に俺を見る。
「マーは元々[心通魔法]を使って話しているから、それを閉じればいいだけだよ」
「心通魔法を使って話している? どういうことだ?」
「心で話すときだけ心通魔法を使えばいいことだよ」
「え?······俺はその魔法をすでに持っているのか?」
「うん」
「俺はそれを今、使っているのか?」
「うん」
「では[解]で解けるのか?」
「そうだよ」
そうだったのか。 知らなかった。
「でもレイとはいつでも話せるようにしておくからな」
俺が広い心で言うと、レイは済まなそうに答える。
「でも、僕も普段は閉じてるし、ミンミと話すときは聞かれないようにしてるから、気にしなくていいよ」
············ふと、気がついた。
俺の独り言は筒抜けのようだったが、そういえば、レイやフェンリルの独り言って聞いたことがない。
でも、閉じているという事はそういう事なのか? よく分からない。
いや、俺の場合は開いているというなら、他の者にも通じていたはずだ。
「そうだよ! 俺の心通魔法が掛けっぱなしなら、なぜオベロンやグノームとは心の言葉は通じなかっったんだ?」
それにはフェンリルが半笑いで教えてくれた。
「それは元々心通術ができない奴とは通じないんだよ。 じゃないと人間や魔物の話も全て聞こえてきて、今頃は頭がおかしくなっていたかもな。クックックッ。
多分お前が言葉を話せなかったせいで、レイが知らずに使ったのだろう。 おかげで我とも話す事が出来たがな、クックックックックッ」
そうか!! 俺の言葉(心)だけが開きっぱなしだったんだ!! とりあえず[解]!!
「クックックッ。 今頃気付いたか。 バカめ」
フェンリルがとても楽しそうだ。
いつもいつも「聞こえているぞ」と偉そうに言っていたのはそのためだ。
考えれば考えるほどむかついてくる。
ちょっと待て?······
そうだ!······あんな事やこんな事を考えていた事も······すべて筒抜けだったんだ······
······レイ······教えてくれよ······
俺は頭を抱え込んでしまった。
いつまでもフェンリルの忍び笑いが聞こえていた。
大きな謎が解明した。
しかし·······恥ずかしい·······
(´д`|||)




