51章 ハーピーとグリフォン
ハーピーの村に到着した。
なかなか美しいハーピーに圧倒される。
51章 ハーピーとグリフォン
俺たちはさっそく飛んでいった。 急ぐという意味ではなく、文字通り空を飛んでいった。
フェンリルは風魔法で飛ぶが、俺は重力操作魔法で飛ぶ。
風の結界も張っているので、無風状態で快適だ。 もちろんレイは俺の肩にとまったままだ。
背中に乗せてくれたら重力操作魔法で一緒に飛んでやるぞと提案したが、フェンリルにフンと一蹴された。
「自分で飛ぶ方が気持ちいい」
そ~ですか。 お好きにどうぞ。
先ずはハーピーの住処に向かった。 オーガが棲む三連の山の南側に位置する山にいるはずだと、フェンリルが教えてくれた。
住処が見えてきた。 オーガのようなちゃんとした建物ではなく、どちらかといえばゴブリンと同じ大きな葉で囲んだ程度の、森の中に溶け込んでいるような家だった。
降り立つと、ハーピーたちが寄ってくる。
ハーピーは女形で、腕が翼、足は鷲の鋭く尖った鉤爪を持った魔物だ。
きめの細かい美しい肌と金色の長い髪は腰まであり、その髪からは耳の代わりの小さな翼が飛び出している。
体は部分的に白っぽい(個体によってビミョーに色合いが変わる)羽に覆われいる。
ツンと立った胸の先の方まで上手く隠れるように覆っている羽があるが、胸の谷間からヘソに向かっては何も覆われていない。
しかし、なんとも驚いたのは、ハーピーは華奢で小さいイメージだっだのだが、実は3メルク以上あり、丁度俺の目線の高さに豊満な胸がある。
ちょっと視線のやり場に困る。
俺を取り囲むように集まってきた。
キャピキャピと楽しそうに俺の目の前で大きな胸をプルプルさせながらおしゃべりしている。
「天龍様と加護者様がいらしたわ!」
「フェンリル様よ」
「天龍様が可愛い!」
口々に話しているので「あのう!」と、声をかけたが、声が裏返ってしまった。
フェンリルがクックックッと笑う。
「コホン! あのう、すみませんが、長はいませんか?」
すぐに返事が返って来た。
「ここに···」
「えっ?!」
聞こえてきたのは男性の声だ。 ハーピーって、男型もいるのを知らなかった。
集まっている女型のハーピーが左右に分かれ、その中に悠然と男型のハーピーが数人、上から飛んで降りて来た。
基本は同じで、髪も同じく腰までの長さがある。 ただ女型よりも頭一つ分ほど大きい。
見事な逆三角形の彫刻のような体は胸筋が盛り上がり、男の俺が見ても美しい。
そして折りたたまれた長い翼の真ん中あたりに(コウモリのように)鋭く尖った爪を持つ指があった。
オーガと同じくらいの大きさのハーピー、それも男型が近くに来ると圧倒される。
長は俺の目の前に来るなり突然膝をつき、それに倣って全員がザザザッと膝をついた。
「天龍様加護者様、ご加護を頂きありがとうございます。 ハーピーの長のキュピクルでございます」
優雅に頭を下げた。
よかった、無事に加護を与えることが出来たんだ。
「私はシーク。 天龍はレイといいます。 グレンさんから聞いていると思いますが、ブラックドラゴンとの戦いの時にはよろしくお願いします」
「はい! 我らハーピー5千羽。 必要な時にはいつでも参上いたします」
「えっ?! 百羽と聞いていましたが?」
グレンは確かに百羽といっていたはずだ。
驚く俺を見てキュピクルはニンマリと笑う。
「グレンの聞き間違いでしょう」
そうだっけ?······顔を上げてみると、いつの間にかおびただしい数のハーピーが集まっていて膝をついている。
圧倒的に女型が多いようだが、チラホラと男型も見える。 未だに空から舞い降りては最後尾にきて膝をついていく。 森の中がハーピーで埋め尽くされて行った。
どちらにしても多いに越したことはない。
それもこれだけ頼もしい空を飛べる軍勢は願ってもない。
『お前たちに加護をもらえるとは思っていなかったのだろう。 下手に参戦して黒竜の魔の手に呑まれては目も当てられんと思っていたのだろうな』
フェンリルが教えてくれた。
そういう事か。
「ブラックドラゴンがいるレンドール国との戦いは目前まで迫ってきています。 あなた達ハーピーの参戦はとても心強い限りです。 ありがとうございます」
ハーピーの長のピュキクルは誇らしげに頷いた。
「なにもおもてなしは出来ませんが、なにとどハーピー村でゆっくして行ってください」
ハーピーの美しい女型たちも是非と言ってきたが、まだ回る所は多い。
「先を急ぐので、お気持ちだで頂きます。 ではよろしくお願いします」
後ろ髪をひかれるが、俺たちは早々に次に向かった
◇◇◇◇◇◇◇◇
三連の山の北側にグリフォンがいるそうだ。 その山の東側の中腹に大きな5メルクほどの洞窟が口をあけている。 その入りに降り立った。
「ここにいるのか?」
ごく普通の大きな洞窟があるだけだと思っていると、奥から巨大な何かが近づいて来た。
「なにしに来た······」
グルルルル!と、威嚇しながら出来たのは、上半身が大きな翼を持つ大鷲で下半身がライオンの巨大なグリフォンだ。
肩までの高さが3メルク以上ある。 巨大化したフェンリルより遥かに大きい。
魔物というのは、やたら大きい者が多い。
「グリフォンの縄張りと知って立ち入って来たのか?」
首を低く構えて、戦う体制になっている。 もちろんこちらに戦う気はない。
俺は一歩前に出て、戦う意思がないように手を上にあげた。
「戦うつもりはない。 私は···」
「あっ! 天龍様と加護者様ですか?!」
俺の言葉に被してきた。
分かってくれみたいでよかった。 しかし、突然声のトーンが変わった。
「ワァ! 俺たちの住処に来てくれたのですか? 光栄だな! あぁ! フェンリル様もいるじゃないですか! 小さいから分かりませんでしたよ! さっ! こちらに来てください!」
こちらの話しも聞かずにさっさと先導して洞窟の奥に向かって案内してくれる。
みんなに会いに来たのだから、案内してくれるのは嬉しいけどね······一応こちらの意向も聞こうよ。
しかし、先ほどの威厳はどこへやら。 やけに口調が軽い。
「本来我々は孤高の生き物ゆえ」そこだけ何故か威厳たっぷに低い声で言う「普段は群れないのですが、事情が事情なので、みんなが集結しているのですよ。 もちろん事情っていうのは分かっているでしょう?
あぁ! 今、ちょうどドライアドさんが浄化に来てくれているので、もちろん会っていきますよね?」
一人でよく喋る。 グリフォンって、こんな生き物なんだ。 でも、ドライアドには会ってみたかったのでちょうどいい。
「もちろん飛べますよね。 この先の穴の奥なので、付いてきてくださいね」
巨大な穴がポッカリと開いていた。 幅30メルクほどのゴツゴツした岩肌の垂直に開いた穴だ。
しかし、グリフォンは、俺の意見も聞かずにサッサと飛び降りてい行く。
いや、飛べるけどね! だから、一応意見は最後まで聞こうよ!
穴の中は真っ暗で先は見えないので手のひらに炎を出して中に降りていく。
500メルクほど降りると、底に着いた。
ジメジメしていて、もちろん地面も整備されておらず足場が悪いので、歩かずにそのまま飛んでいった。
そのまましばらく行くと、奥から明かりが見えてきた。
グリフォンのイメージが····
( ゜ε゜;)




