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50章 参戦種族

人間だけでは心もとなかったが、多くの種族が参戦してくれることがわかった。

 50章 参戦種族




「ガドル先生、傭兵は?」


 ガドルは首を横に振る。


「ふむ······傭兵を動かすには金が要りますが、それを考えなくてもこの国で2千人ほどじゃ。 しかしCクラス以下は戦力としては不十分じゃろう。 逆に足手まといになるのではないかと思うのじゃ。 兵士と違って傭兵はあまり期待せんほうがよいじゃろうな。 A、Bクラスは3百人もおらんじゃろう」


 傭兵とは、金をもらって雇い主を護るもので、兵士のように国から給金をもらって国を護るのとは違う······それ以前に、国を護る使命感もないのが普通だ。


「それもそうですね。 A、Bクラスにはできるだけ参戦してもらうという事にしても、後は参戦してくれるにしても、後方支援に回ってもらうしかなさそうですね」  



 あのぉ······と、遠慮がちに小さく手を挙げて国王が発言する。


「多くは払えないですが、国としても傭兵に対してできる限りの援助はさせていただくつもりです」

 

 国王が宰相とうなずき合って答えてくれた。



 いやいや、そんなに遠慮しないで発言してくださいよ。



 しかし、これは傭兵にとっては嬉しい話しだ。 戦争となれば知らん顔はできないが、いやらしい話し、タダ働きも困る。 これなら多くの傭兵が協力してくれるだろう。



「人数的には二個大隊ほどしかいませんが、その中にSクラスが7人。 スーガも合わせると8人います。 Sクラスなら1人で5千人程の働きができるでしょう」


 以前、父が言っていた。 竜生神は一人でそれくらいの戦力になると。 戦いや相手にもよるが、3属性を持っている者なら、もっと戦い方に深みがあると。


「そういえば先生」


 ガドルを見る。


「アンドゥイ国には竜生神が2人と聞いていますが、西側諸国にはどれくらいいるのですか?」


「西側諸国には、聞いておるかぎりでは2人じゃ」


「では全員で12人······」




 12人なら6万人以上の軍勢と同等の戦力になる。 少し希望が見えてきた。




 次は魔族や妖精たちだ。


 真正面でちょこんとテーブルに乗るグレンに向かって、俺は少し乗り出す。


「オーガの戦力は?」

「約一万」


 大鷲の姿のまま、グレンが答えた。




 オーガは一人で50人程の戦力になると聞いた。 オーガだけで50万人相当の戦力だ。

 さすが一国の戦力に値すると言っていたフェンリルよ言葉は当たっている。


 戦力的には人間の軍隊の5倍以上になる。




 次はオーガの隣に座るグノームだ。


「ドワーフは?」

「我らはかき集めても5千ほどです」


 ドワーフは小柄ながら、かなり強いと聞いている。 5千は頼もしい。


「数は少ないですが、できる限り武器と防具の提供をいたしたいと思います。 すでに取り掛かっておりますが、必要なものがありましたら、遠慮なくおっしゃってください」


 グノームは、チラリとオベロンに視線を向けてから、俺に向かって優雅に頭を下げた。



「それは頼もしい限りです。またその事については後ほど話し合いましょう」


 コズビー宰相に合図を送ると、(うなず)いてくれた。




 次はオベロンの方に向き直る。 オベロンは待ってましたと身構える。


「ではゴブリンは?」


 その時、グノームが「ゴブリンなど1万いても何の役にも立てまい」と、鼻で笑った。




 オベロンはそれを聞いてフフン!と(あご)を上げる。


「ゴブリン村からは2千、しかし、全て()()()()()()()()()()()()()に進化をしておりますので······」


 そこで、驚くグノームをしてやってりという目で見おろす。


「ホブゴブリンの戦闘訓練はすでに始めています。 そして、ゴブリンキングが出す()()()()()()が2百。

 それに我らエルフにも話を付けております。 エルフが5千です」



 ゴーレムは強い、3メルククラスでも一体10人力だ。 そしてエルフもかなりの戦力で5千は頼もしい。




「そうだ、グレンさん。 ハーピーとグリフォンとドライアドは?」


 グレンは大鷲の顔なので、表情がわかりにくいが、もひとつ浮かないようにみえる。


「ハーピー(翼と足以外は人型の魔物)とグリフォン(翼を持つ上半身とライオンの下半身を持つ魔物)はあまり協力的ではなく、百羽ずつなら出してくれる。

 ドライアドは戦いには向かないが、回復と補助に回ってくれるそうだ、それが50。 元々数が少ない種だからな。 しかし代わりにトレントが百」


「トレント? 動く巨木の精霊か。 それは心づよいですね」


 トレントは普段は森の中で身動きをすることはなく、ただの木と見分けがつかないが、いざとなると、高い者で30メルク以上の木が、凄い勢いで攻撃してくるのだ。




 思った以上の戦力が集結することになった。




 ただ······と、オベロンが少し言いあぐねている。


「オベロン、遠慮なく言ってくれよ」


「はい······エルフの里は離れている故、今のところ黒魔法の力が及んでいないようですが、住処から離れてこちらに近づくと影響を受けてエルフでも、凶暴化する心配があります」


 俺はそれについては、考えていることがあった。


「では、オーガの村に行って加護を与えたようにエルフの里に行けば加護を与えられるのではないですか?」


 オベロンの顔がパッと明るくなる。


「行っていただけますか?! それなら安心です」



 オベロンに向かってうなずいてから、真正面のグレンを見た。


「グレンさん、ハーピーとグリフォンとトレントも、黒魔法の影響は大丈夫ですか?」


 グレンは大鷲の姿でピョンと、一歩近づく。


「トレントには自身で浄化する能力があるので心配いりません。 ただ、ハーピーとグリフォンはドライアドが浄化してくれているのですが、彼らも村を出るとどうなるか心配です」




「よし! まとめて行こう!」




「「ありがとうございます」」


 グレンとオベロン、仲良く二人そろって頭を下げた。




「では王様」


 突然俺に声をかけられ、他人事のように聞いていた国王はハッとして居住まいを正した。


「は···はい」



 授業中に突然先生に名前を呼ばれた生徒みたいになっている。



 笑っちゃいけない···



「グノームとも話し合い、できるだけ早く各国の出撃準備を整えてもらう事と、どうにかしてレンドール国の動きを調べてください。 よろしくお願いします」




「承知いたしました」




 国王さまが、最敬礼でもしそうな雰囲気だ。





 笑っちゃいけない!!





 一通り話しは一段落して、それぞれの住処に戻り、必要があれば連絡するという事で、ラズクにもとりあえずグレンと共に帰ってもらった。 






ハーピー、グリフォンとエルフの住む場所へ出発!

( ´∀` )b

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