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46章 シークの記憶 前編

コーマンの記憶を探る。


あぁっ! 思い出した! 思い出した!!

思い出した!!!


シークは自分が何者か、遂に思い出した!

 46章 シークの記憶 前編




―― 天蓋(てんがい)付きの立派なベッドの上にプラチナの美しい髪をした20歳前後の男性が寝ていた。

 苦しそうに唸っている。(あれ? この人どこかで見た事がある) その枕元には真っ白なドラゴンが倒れていた。



 そこへノックがあり、15~16歳の黒髪の青年が入って来た。(この人も見た事があるぞ······あっ!! 進化前の俺に似ている! まさか彼は俺か?······)


「······大丈夫ですか?」


 プラチナの髪の男性に近づくいて声をかけると、どこからともなくフード男が現われた。 (ドアから入った様子はなかった。 どこか部屋の隅にでも隠れていたのか?)


 昔の俺はビクッとして振り返る。


「そこで何をしているんだ?」


 フード男はそれには答えずに俺に近寄って来た。 肩には真っ黒いドラゴンが乗っていた。


「ブラックドラゴンを······生んだのか?」

「この子の名前はジャークです。 以後お見知りおきを」


 大袈裟に頭を下げた。 そして顔を上げた時には心配そうな表情をしていた。


「お父様の御病気がご心配でございましょう。 この病気は不治の病。 これからさらに苦しむことになるでしょう。 ですからマージェイン様が楽にして差し上げて下さいませ」(マージェイン? 俺の名前か?)


「どういう事だ?」


 その時、影に潜んでいたコーマンが俺を羽交い絞めにした。


「わっ!! 何をする!!」


 フード男は俺の腰に下げていた剣を抜き放つ。


「なにをするつもりだ! ドゥーレク!!」


 クックックッと笑いながら王に近づく。


「苦しむ御父上をマージェイン様が楽にして差し上げるのですよ」


 ドゥーレクは剣を振り上げ、国王に胸に突き立てた。


「グワァァァ~~っ!!」


 目を見開き断末魔の叫びをあげると、国王はそのままこと切れ、それと同時に白いドラゴンが霧となって消えていった。。


「わぁぁぁぁぁぁ~~~~っ!! お と う さ ま ぁ~~~~~っ!!」




(あぁっ! 思い出した! 思い出した!! 思い出した!!! 全て思い出した!! そうだ!) 


(俺はマージェイン。 ドゥーレクに御父様を殺されたレンドール国の王子だ!!)




 失意の俺にドゥーレクが優しく話しかける。


「マージェイン様。 国王はお亡くなりになりました。

 あなた様が国王を殺したのです。

 これは謀反ですが、私がうまく収めて、マージェイン様を国王の座に就かせて差し上げます。

 ご心配なさらずとも、全て私の言うとおりにしていれば、この国をもっと大きく豊かにして差し上げることができます。

いかがですか?」


「誰がお前なんかの言いなりになるものか!」


「······聞き分けがない子は()()()()をしないといけませんね。 まぁ、そのうちあなた様の方から膝を折ることになると思いますよ。 クックックッ」

―― 場面が変わる。




―― 地下の最奥の牢の中に入れられた俺は()()()()をかけられた。


「時々お目にかかりにまいりますので、気が変わったときには、首を縦に振ってくださいね。フフフ······ハハハハハ!!」


 ドゥーレクはコーマンと共に出て行った。 

―― 場面が変わる。




―― 「なんだと! 逃げられただと?! くそっ! 殺せ!! 次の手がある! マージェインは必要ない! 必ず殺せ!」

「はっ!」


 コーマンはテラスから月明りの中に飛んでいった。


 しばらく迷っていたが、何かを見つけたのだろう、一方向に真っ直ぐに飛び始めた。

 崖の上辺りに来た時、急いで降りて木陰に隠れる。 崖から下を覗き込んでいる数人の男たちの様子を(うかが)う。


「チッ! 落ちたじゃないか」

「お前が矢を射るからだろう?」

「脅そうと思っただけだよ」

「ここから落ちたんじゃ生きてはいないな」(あの時、俺に矢を射たのは追手ではなかったのか······)


 コーマンは城に戻った。


「奴は崖から落ちて死にました」


 ドゥーレクは烈火のごとく怒りを(あら)わにした。


「バカ者!! 私の魔法が切れていない!! まだ奴は生きているはずだ!! もう一度探しに行け!!」 

―― 場面が変わる。




―― 「申しわけありません!! 見つかりませんでした」


コーマンはドゥーレクに前にひれ伏している。


「いつまでも詰めの甘い奴だ! このマヌケ!!!」


 ドゥーレクは何度もコーマンを蹴り上げた。 コーマンは、体を丸めて蹴られるまま耐えていた。


「仕方がない。 では例の者を探せ」

「はっ!」


 コーマンは痛みをこらえ、ふらつきながら立ち上がると、闇夜の中を飛んでいった。

―― 場面が変わる。




―― コーマンは黒髪で長身の綺麗な顔の男をドゥーレクの前に連れてきた。


「これならいいだろう」


 ドゥーレクはそう言って嫌がる男の額に手を当てると、男は生気のない目になって大人しくなった。


「この意識操作魔法が王族にも効き目があれば、こんなに苦労はしないのだが······」

―― 場面が変わる。




―― コーマンは広い会議室のような場所の隅のほうから先ほどの黒髪の男を連れたドゥーレクを見ている。十数人の官僚の前に、先程の黒髪の男を立たせ、(うやうや)しく頭を下げる。


「マージェイン様がブラックドラゴンの加護者となられました」


 黒髪の男の肩にはジャークが止まっていた。

―― 場面が変わる。




―― ドゥーレクが「ギリム」と呼ぶと「ここに」と、コーマンが答えた。(コーマンの本当の名はギリムというのか)


「あいつはニバール国にいた。 私の魔法を解かれた。 いらないことを話される前に始末しろ」

「承知」


 ギリムは闇に消えていった。

―― 場面が変わる。




―― コーマンは夜の闇の中、俺に向かってナイフを投げる。

 だが、刺さらずにポロリと落ちた。(ミスリルで助けられた時だな。 やはりナイフの件もコーマンの仕業か)


「どういう事だ?······」


 すぐに隠形魔法で闇に消えた。 

―― 場面が変わる。




―― コーマンはその辺りにいた男の子に声をかける。


「坊主、お願いがあるんだけど」

「なあに?」

「あの辺りにフードを被った黄色い髪の男の人がいるはずなんだけど、シークっていう人が昼過ぎの鐘が鳴る時に、郊外の西側にある大きなカシギの木の所にきてほしいって言ってる事を伝えてほしいんだ。 俺、用事があって、急いでいかないといけないところがあって暇がないんだ。 できる?」


 そう言って男の子に1000ルクコインを渡した。


 少年がスーガに話しかけたのを確認すると、今度は暇そうな男性に声をかけた。


「昼過ぎの鐘が鳴る時に、郊外の西側にある大きなカシギの木の所にスーガという人が待っているはずなんですけど、()()()()()()のカミルさんが至急来てほしいと言っていると言伝してもらいたいんです。 俺、用事があって、急いでいかないといけないところがあって暇がないんです。 お願いします」


 そう言って金貨を一つ男に握らせた。

―― 場面が変わる。




―― コーマンは遠くのカシギの木の所にスーガが立っているのを確認する。

 そこに先ほど伝言を頼んだ男がスーガに話しかけるのを確認してから、片手をあげてから振り下ろすと、遠くでズドド~~ン!と雷が落ちた。


 隠形魔法でしばらくその場にいると、俺がアニエッタを乗せて通り過ぎていった。


「クソッ!」(やはりコーマンの仕業だったんだ)

「今度こそ遣ったと思ったのに! どこまでも運のいい奴だ。 それにあの狼も侮れない。 

 もう少しで見つかるところだった。 スーガを犯人に仕立てておいて助かった」

―― 場面が変わる。




―― コーマンはドゥーレクの前に(ひざまず)いている。


「······それが······竜生神になっていたのですが、その······」

「どうした?」

「天龍を生んだようで······」

「なに!!」

「先にこの事をお耳に入れておいた方がよいかと思いましたので······」


 ドゥーレクは黒く長いフードマントをはためかせながら、部屋の中を思案するように歩き回る。


「まずいな···ニバールを攻めるにはまだ準備が整っていない······」――








全てを思い出したシーク。

恐ろしい記憶でしたね!

( ̄□||||!!

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