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45章 コーマンの過去

記憶掌握魔法でコーマンの過去を視る。

 45章 コーマンの過去




 俺たちは再び訓練場に戻った。 コーマンが白馬亭に顔を出しているのかを聞くためだ。



 念のためにガドルにも今から白馬亭に行くことを話すと、他の人に紛らせて兵士を配置しておくといってくれた。



 俺たちを見つけて訓練が終わったヨシュアたちが駆け寄る。


「やっと帰って来たのか! えらく予定より遅れたな。 何かあったのか?」

「まあ、色々。 追々(おいおい)その話はするよ」

「ところでそれは?」


 フェンリルの横にいる黒い狼を視線で示す。 マルケスと同じように俺の耳元で、小声で聞いてきた。



 みんな狼には凝りているみたいだな。 誰かさんのせいで······



『聞こえているぞ』

『······地獄耳』




「まぁ、それも追々(おいおい)。 それより最近コーマンは来ているか?」

「おぅ。 3日前から白馬亭に来てはシークを探している。

 それよりスーガがまだ解放されないんだが、大丈夫だろうか? ガドル先生に言っても何もしてくれないんだ」

「そ······それは()()()()だなぁ······」


『クックックッ、お前、()()()になってるぞ』


 フェンリルが可笑しそうに突っ込む。


『っるせえ! ウソは苦手なんだよ!』



「腹減った。 白馬亭に行こうぜ」


 マルケスが俺とヨシュアの肩を組んで歩きだした。



 ◇◇◇◇



 白馬亭にはまだコーマンは来ていなかった。


「まだ来ていないな」


 マルケスがささやき、俺はうなずく。



 とりあえず食事を始めた時、コーマンが入ってきた。


「あっ! シークさん! 戻ってきたのですね。 大変なお仕事だったのですか?」


 コーマンが俺の肩に手を置いたので、すかさず俺は唱えた。


『記憶掌握魔法!』





―― 5~6歳の男の子が建物の裏で泣いている。 (この子がコーマンか)


「どうして僕にはお父さんとお母さんがいないんだろう」


 その時、同い歳くらいの男の子4人がコーマンを見つけた。


「こんなところにいたのか。 なんだ、泣いているのか? ハハハハハ 弱虫だな」

「弱虫!!」

「弱虫!!」

「こんなところに虫がいるぞ!」

「虫は潰さないとな!」


 男の子たちが寄ってたかってコーマンを蹴る。


「痛い! やめてくれよ! 痛い!」 

―― 場面が変わる。




―― 7~8歳のコーマンを少し大きい男の子たちが取り囲む。


「なぁ、腹減ったんだよ。 カネくれよ」

「持ってないよ」

「ウソをつけ! 押さえろ」


 体の大きい男の子に羽交い絞めにされ、もう一人がコーマンのポケットを探り、100ルク玉を見つけた。


「なんだたったこんだけかよ。 今日はこれで我慢してやる」

「僕のお昼ご飯代なんだ! 返せ!」

「取れるものなら取ってみろよ!」


 そう言ってコーマンの腹を思い切り殴った。


「うっ!······」


 痛みでうずくまる。

―― 場面が変わる。




―― 駄菓子屋の前で立っていた。

 じっとお菓子を見つめている。 そのうちキョロキョロしだした。 そしてお菓子を一つ掴むと走り出した。

 しかし、店の店主がそれを見ていて追いかけてきた。

 子供と大人では結果が見えている。 すぐに捕まった。


「この野郎! 盗人め! 役人に突き出してやる!」


 店主はまだ小さい子供を容赦なく殴った。

――場面が変わる。




―― 「申し訳ありません。 うちの施設でもこいつには手を焼いているんです。 本当に申し訳ありません」


 施設の職員らしい男が役所の中で兵士に平謝りしている。


「来い!」


 職員はコーマンの腕をむんずと掴んで引きずるように連れて帰る。


「晩飯は抜きだ!! ここに入っていろ!」


 真っ赤な顔で怒る職員はコーマンを納屋に放り込んで鍵を閉めた。


「お腹が空いた······」 

――場面が変わる。




―― 10歳前後のコーマンだ。 (髪の色が少し黄色っぽくなっている。進化が早いな)


 街を歩いていると中年の2人の女性が()()()()()()に大きな声で噂話をしている。


「ほらあの子の髪。 なんであんな色にしているんだろうね」

「知らないのかい? あの子の母親も真っ赤な髪の色をしていて、あの子が赤ん坊の時に男と雲隠れしたんだよ。 ()()()()()()()()()()()だね」

「血は争えないって事かい? いやだいやだ」 

――場面が変わる。




―― 街の道端に座り込んでいるコーマンの前にフードをかぶった男が立っている。

 コーマンが不思議そうに見上げた。


「その年齢で進化が始まっているのか?」

「進化?」

「お前の親は?」

「······いない」

「一人で生きているのか?」

「フルーマン孤児院にいるんだ」

「ほぉ······」


「なんで色々聞くの?」

「私と共に来ないか?」

「どこに行くの?」

「私の元で働かないか? その代わり私がお前の面倒を見てやる」

「お兄ちゃんが?······うん! いいよ!」

――場面が変わる。




―― カンカンカン!

 人気のない森の中。 フード男とコーマンが木刀で打ち合っている。


 カンカンカンドスッ!


 フード男の木刀がコーマンの脇腹に入り、うずくまる。


「ううっ!」

「もう終わりか」

「だ······大丈夫です」


 わき腹を押さえながら立ち上がり、構える。


「そうだ。 強くなれ」

―― 場面が変わる。




―― 12~13歳のコーマンが部屋の中で胸を押さえて苦しんでいる。


 そのうち胸の辺りが光り出した。


 ゆっくりと20メクほどの丸い光が胸からせり出してきて、コーマンの前で漂っていた。 そしてそれがフワッと光り、丸い光だったものが、体が茶色で(たてがみ)が黄色く尾先が緑色のドラゴンになった。


挿絵(By みてみん)


「やった! これでもっとお役に立てる!」 ―― 場面が変わる。




―― 郊外の小高い場所にある建物をコーマンは見つめていた。

 建物の前では数人の子供たちが遊んでいる。 看板に[フルーマン孤児院]と書いてあるのが見えた。


「試し撃ちにはちょうどいいな」


 コーマンは右手を高く上げる。 そして勢いよく振り下ろすと、ズドド~~ン!!ズドドン!ドドン! と幾つもの雷がその建物に落ちた。


 一斉に子供たちが倒れた。


 もう一度手をあげて振り下ろすと、今度はドドドドドド!! と、丘が崩れ出し、子供たちが建物ごと土に呑まれていった。


「ハハハ!······ハハハハハハ!!」 

―― 場面が変わる。




―― フード男の前にコーマンが(ひざまず)いている。


「お前に隠形魔法(おんぎょうまほう)を授ける」(隠形魔法(おんぎょうまほう)?)  


 そう言ってから「ジャーク」と、ブラックドラゴンに呼び掛けた。(このフードの男が黒龍の竜生神か)


「承知······終わりました」

「使ってみろ」

「はっ」スッとコーマンの気配が完全に消えた。(こんな魔法があるのか)


 フード男は満足そうにうなずく。


「これからは私の影となり働いてもらうぞ」

「光栄でございます」影の中から声がした。 

―― 場面が変わる。




―― 「首尾は?」

「上々でございます」

「そうか。 よくやった。 これで王と王妃は徐々に毒で冒されていくことになる。 皆は病気だと思うだろう。

 もうこの国を頂いたも同然だな。 ハハハハハハ!!」

―― 場面が変わる。






コーマンは辛い過去を過ごしてきたのですね。

( ̄□||||!!

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