42章 オーガの里
フェンリルはオーガとお知り合い?
お顔が広いことで····
42章 オーガの里?
結界で囲んでいたオーガたちの所に行く。
オーガたちは結界の中から俺を睨んでいたが、俺の後からついてきたフェンリルを見て戸惑っている様子だ。
「フェンリル? 知り合いか?」
「こいつらは知らんが、こいつらの親玉は知っている」
あらまあ、お顔が広い事。
どうやら敵意がなくなったみたいなので結界を解いた。
「フェンリル···様?······」
ひときわ大きなオーガが近寄ってきた。
「グレンは元気か?」
「もちろんでございます。 しかし、なぜ人間と?」
フェンリルはアゴでレイを指す。
「あいつが見えないのか?」
そのオーガは俺の肩にとまるレイを見て驚き、明らかに戸惑っている。 他のオーガたちもレイに気づき、動揺している。
「天龍様······ではあの方は天龍様の加護者··様」
「そうだ。 お前らはこいつに助けられて礼もないのか?」
フェンリルはそのオーガを睨む。
いやぁ~~フェンリルさんったら! 俺を立ててくれたうえに、なんとも高圧的でカッコいいですよ。
「申し訳ありません!! ありがとうございました!!」
大きな体を小さくしてオーガたちは俺の前にひれ伏し、地面に頭をこすりつける。
「いやいや、立ってください。 それより回復が途中なので、回復してしまいますね」
いまだに気を失って倒れているオーガ2人の前に座り、両手で回復魔法をかける。
オーガたちが取り囲み、見守っているうちに2人が目覚めた。
「あ······人間?」
「ほんとうだ······ラズク様、どうなっているんですか?」
ひときわ大きなオーガの名前はラズクというらしい。
「天龍様の加護者様に助けていただいた」
「「天龍様?!」」
俺の肩にとまるレイを見て驚いているが、やっと事態を飲み込めたようだ。
「「あ···ありがとうございます」」
二人とも地面に頭をこすりつけた。
これがオーガの御礼なのか? 片方のオーガは1本角なので、角が地面にめり込んでいた。
「いやいや、もういいですから立ってください」
チラリとラズクを見てから、恐る恐る立ち上がった。
「あのぉ、加護者様」
オーガはみんな2メルクほどあるが、ラズクは2メルク半ほどあり、頭一つ大きい。 その大きな体をかがめるようにして近づいて来た。
「シークです」
いつも加護者様と呼ばれるので、先に名前を名乗っておく。
「あぁ···シーク様。 オーガの里に来ていただけませんか?」
「オーガの里?」
どんな所か行ってみたいが、今は仕事中だ。 商隊を放っておくわけにはいかない。
「しかし······」
するとフェンリルが心の中で話しかけてきた。
『シーク。 行った方がいい』
『なんで? 商隊を置いていけないよ』
『よく考えろ。 オーガはかなりの戦力になる』
『戦力?』
『レンドール国との戦いを控えた今、オーガは一国の戦力に値する。 それにハービーやグリフォンとも交友がある。 今のうちに恩を売っておいた方がいいぞ』
オーガは確かに強そうだが、そこまでとは思わなかった。
『それは凄いな。 これは何としてもお友達にならなくては』
俺はラズクを見る···いや、見上げた。
「いま、俺たちが護衛をしている商隊を待たせています。 話しをしてきますので、ここで待っていてもらえますか?」
「もちろん待っています」
嬉しそうに他のオーガとうなずき合って喜んでいる。
いやいや、喜ばれても···まだ承諾したわけではないんだけどな······承諾するつもりだけど、ナックルさんが何と言うか······
急いで商隊に戻り、先ほどのフェンリルの話をしてみた。
「もちろん行ってきてください。 我々はここで御待ちしています」
ナックルは二つ返事で承諾してくれた。
「わかりました。 では少し広めに結界を張っていきますので、ゆっくりと休んでいてください」
スーガでも結界を張るのは可能だが、これだけ大きな物となるとかなりの魔力を使う。 夜通しになるかもしれないので、俺が張っておくほうがいいだろうと考えたのだ。
スーガに向き直る。
「俺たちだけで行ってくる。 スーガはここで待っていてくれ。 何もないと思うが、スーガだけは結界を出入りできるようにしておく」
「わかった」
マルケスとフィンもオーガを見てみたいというが、見る機会は必ず来るので今回は我慢してもらった。
◇◇◇◇
急いで戻るとオーガたちは首を長くして待っていた。
デカくて厳ついオーガが子犬のような目で戻ってきた俺たちを見ている。
「承諾をもらいました。 行きましょう」
オーガたちは、よっしゃ! と喜ぶ。
「乗れ」
フェンリルが大きな姿に転身した。
「いや、一緒に歩くぞ」
「走るから、つべこべ言わずに乗れ!」
オーガたちはフェンリルのスピードについて来る事ができるのか? と思っていたら、なんと! 全員が狼の姿に変身した。
「えっ?! なんで?」
俺が驚いていたら、フェンリルがまたバカにしたような目で見る。
「オーガは動物の姿に変身できるのは常識だ」
だから!! 記憶がないんだよ!!
オーガって、動物になる事ができるんだ?!
!Σ( ̄□ ̄;)




