39章 アッシュ·セルカーン傭兵組合長
傭兵組合長のアッシュにあった。
ガドルからの手紙を渡すが····
39章 アッシュ・セルカーン傭兵組合長
翌朝、傭兵組合に行った。
ニバール国の傭兵組合と同じようにとても広く、寄宿舎や闘技場も見える。
正面の入り口から入り、受付で組合長に会いたいというと不審な顔をされた。
俺とスーガがフードを脱いで見せると、綺麗な緑色の髪の受付のお姉さんは俺たちの髪を見て驚く。
周りでもザワザワし始めた。
「失礼致しました···どうぞこちらに」
すぐに別室に通してくれた。
しばらく待つと、真っ赤な髪をした男性が入って来た。
言うまでもなくとても綺麗な顔をした20歳ほどの男性で(たいがいの人竜族は見かけが20歳前後だが)、白いシャツに濃いグレーのパンツ姿というラフな姿に剣を携帯している。 そして肩には赤の地色に緑と水色の縦縞があるドラゴンが止まっていた。
「お待たせしました。 私が組合長のアッシュ・セルカーンで、この子はアルです」
アルは女の子のようだ。 姿を消したレイやキリルに向かって、可愛らしくニッコリと微笑んでみせた。
「······で、どのような御用件でしょう?」
ソファーに座るが、身を乗り出している。 何の話をするのかが気になってしょうがない感じだが、俺の髪に視線が釘付けになっている。
俺はガルドからの手紙を差し出した。
「ニバール国のガドル・ミルゴア氏からです」
アッシュは「あぁ」と言ってうなずく。
やっぱり知っているんだ。
なんせ、傭兵組合の創始者だもんな。
アッシュは俺から視線を外さずに手紙を受けとる。 そしておもむろに視線を落として封を切り、中を読み始めた。
チラチラと俺を見ながら手紙を読んでいたが、読み終わると手紙を折りたたんでテーブルの上に置き、俺に向き直った。
「お話はわかりました。 こちらでも早急に準備を始めたいと思います。 それと西にあるいくつかの諸国とも連絡を取っておきます。
それでシーク殿は、いかが思われますか?」
ちょっと期待を込めた目で俺を見てくる。
······と言われても、何のことだか分からない。
「すみません。 手紙の内容を知らないので、いかがと聞かれましても······」
アッシュは少し落胆した様子でアルと目を合わせてから、フッと笑ってから手紙を差し出した。
「内容を御存じないとは失礼しました。 よろしければお読みください」
手紙を受け取り、開いてみた。
《前略 すでに御聞き及びだと思われますが、最近の魔物たちの異変はレンドール国王の所業と思われます。 レンドール国王はブラックドラゴンの竜生神であり、すでにエグソン国は魔物によって堕とされているのは御存じかと思います。
しかし唯一の望みである天龍と、その竜生神であるシーク殿が我が国に現れたことが、各国の力を合わせて何としてでもブラックドラゴンとその竜生神を倒し、この世が破壊されるのを防げという神の思し召しかと思われます。
200年前の悲劇を繰り返さぬよう、是非ともご協力のほどをお願いいたします。
追伸 シーク殿は今、記憶を失われているために少々御自覚が足りませんが、時が来れば必ずや良き指導者となると確信しております。 ガドル・ミルゴア》
「プッ! 御自覚が足らないんだってよ! ガドルはよく見ているな」
横から見ていたフェンリルが笑った。
「ほっとけ! のぞき見するなよフェンリル」
というのを聞いて、アッシュは例のごとく驚く。
「その狼は喋れるのですか? 普通の狼ではないですね。 もしかして······」
そういえば自分たちの自己紹介がまだだった。
「紹介します。 この狼はなんとかの森の主で霊獣のフェンリルです」
「何とかじゃないだろ! タナーヴの森だ! タナーヴの森! 覚えておけ」
そこはスルーする。
レイに姿を現してもらった。
「このレインボードラゴンがレイ。 彼がスーガとキリル。 そしてマルケスとフィンです」
それぞれを指して説明した。
アッシュは驚いている。 霊獣に竜生神が2人。
「フェンリル·····あの伝説の······」
アッシュは俺とフェンリルをまじまじと見る。
また伝説かよ······こいつ、そんなに強いのか?
「わが国には竜生神は私以外にあと1人しかいません。 ブラックドラゴンの脅威は聞き及んでおります。 皆さんと共に戦えることを光栄に思います」
ちょっとウルウルしている。
そんなに期待されても······
「あのう···ガドル先生が言うように、俺には自覚が足りない······というより、自覚がないという方が正しいです。
それに記憶もありません。
だからどれだけの期待に添えるかはわかりませんが、出来うる限りの事はしたいと思いますのでよろしくお願いします」
逆に俺が頭を下げた。 アッシュはもったいないと、俺に頭を上げるように言う。
「この国にはいつまでいらっしゃるのですか?」
「明後日には出発する予定です」
「では、明日の昼食を御一緒したいのですが。 皆さんもご一緒に。 いかがですか?」
俺がマルケスたちを見ると、うんうん頷いている。
「わかりました。 楽しみにしています」
「では御迎えに伺います」
という事で、傭兵組合を後にした。
◇◇◇◇
翌日、迎えが来たので表に出てみると、やけに立派な馬車が二台止まっていた。
真っ白な馬の2頭立てで、赤や金色で模様が描かれ、御者も王様が乗る馬車の御者のような立派な身なりをしている。
俺とフェンリルは前の馬車にと言われて開けてくれたドアの中を見ると、肩にアルを乗せたアッシュがすでに乗っていた。
「こんにちは」
「時間を頂きありがとうございます」
アッシュは半分腰を浮かせて挨拶をする。
昨日のラフな姿とは打って変り、レースの付いた真っ白いブラウスに黒い上下のビシッとしたフォーマルな服を着ていた。
顔が美形なだけに、どこかの国の王子様のように見える。
俺たちは着替えなど持ってきてはいない。 レイにキレイにしてもらったが、いつもの服装のまんまだ。
まさかドレスコードなんてないよな。
馬車の中から見るこの街はなかなか美しい。 よく整備され、ゴミなどもほとんど落ちていない。 全体に薄いグリーンに統一され、街路樹も多く、ほとんど凹凸のない道路を滑るように馬車は進む。
「キレイな街ですね」
アッシュはありがとうございますと頭を下げた。
「これだけ整備されているのはこの辺りだけですが、王様はこの国全体をこのように美しくしたいと御思いです。 しかし、お金がかかるので、少しずつ整備しております」
王様とも親しいんだ。
どこまで行くのだろう? なぜか城の方に向かっている。 城の近くにある店なのかと思っていたら、そのまま門をくぐっていった。
「お······お城ですか?」
「はい。 国王様がお会いしたいと仰せなので、お連れしました」
!!! 心の準備がぁ!!!
馬車に乗って連れていかれた場所は城だった。
心の準備がぁ!!
( ̄□||||!!




