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30章 刺客

夜道を歩いていたら、背中に何がが当たった。


 30章 刺客




 翌日、訓練後にいつもの集合場所に行くと、アニエッタも一緒に待っていた。


「晩飯を一緒にしようって誘ったら来てくれたんだ」


 ヨシュアは俺の耳元で、最初は渋っていたがお前が来るって言ったら快く承諾してくれたんだと、俺の脇をつつく。



 ヨシュア、よくやった!!



 みんなが前を歩き、俺とアニエッタが並んで後ろを歩いた。

 ミンミの姿は見えないが、どうやらレイと飛びながら一緒についてきているようだ。



 あいつもやるな。



 わぁ、緊張する。 何を話せばいいかわからない。


 アニエッタの方から話しかけてきた。


「そのお洋服、素敵ですね。 もしかして魔法衣(まほうい)ですか?」

「よくわかりましたね。 グノームがくれたんです」

「グノームって、土の精霊王のグノーム様ですか?」


 アニエッタは驚いて俺を見上げる。 小柄な彼女は俺の肩の高さまでしかない。


「よく知っていますね」

「おじいさまはお会いしたことがあるようですが、私は話を聞いたことがある程度です」

「ドワーフには会った事がありますか?」

「はい、一度だけ」


「俺、ドワーフの女性もヒゲを生やしているとは知らなくて、男性しかいないのかと思っていました」

「あら、フフフ、私もです。 でもよく見ると違いますでしょ」


 可愛く笑いながら、俺を見上げる。



 見上げた時の顔が、なんとも可愛い!



「はい。 体形とか···」

「ウフフフ」


「服装まで同じだから、本当に分りませんでした」

「そうですね。 でもドワーフの女性の方たちも、男性方と同じ仕事をされているから仕方がない事ですわ。 スカートなどはいていられませんし」


 俺はポンと手を叩いた。


「あぁ、そうか! 男女関係なく同じように仕事をしているから自然と服装も同じになるのか! そういうことか」

「フフフフ、今頃気付かれましたか?」


 茶目っ気(ちゃめっけ)のある顔で見上げてきた。 



 これまた可愛い!!



「ハハハハ、面目(めんもく)ない······しかし、ヒゲは勘弁してほしいですね」

「そこは、同感ですわ。 フフフフ」

 

 俺は顔が熱くなるのを感じた。






 白馬亭に入ったが、もう女性たちは寄ってこない。 昨夜、マルケスが怒ったせいもあるが、美しいアニエッタの横には来たくないのだろう。


 彼女はよく笑う。 


 ヨシュアたちのつまらない冗談にもとても楽しそうにコロコロ笑い、人の目を見て熱心に話を聞く。



 これで料理が上手だったら完璧なのに······いやいや、俺は料理が下手でも気にしないけどね。



 そしてレイは、といえば······驚くことに、あのレイが食事もせずにミンミと店の中を飛び回って遊んでいる。



 俺もレイも、彼女たちに完全に落ちた!



 それからも、時々アニエッタは俺たちの食事に付き合ってくれた。



 ◇◇◇◇



 そんなある日、残念ながらアニエッタは用事で先に帰ったが、いつものようにみんなで白馬亭で晩御飯を食べた帰り、ヨシュアたち3人は次の仕事の打ち合わせがあると言って別れた。



 彼ら(ヨシュアたち)はけっこう忙しい。 俺がここに来てからマルケスたちが仕事に駆り出されたのは1度だけだが、ヨシュアたちはもう3度。 次で4度目だ。



 ちなみに俺は一度もない。



 簡単な護衛や警備の仕事なら、そこそこ強くて安いCクラス辺りの傭兵が一番使いやすいらしい。 まあ、俺が一生懸命仕事を探していないという事もあるらしいが。



 最近、表を歩くときは、レイは姿を消している。 べつにどちらでもいいのだが、俺もあまり目立ちたくない。


 俺のこの()()は隠しきれないが、それ以上にレイは目立つ。 それにガドル先生もレイが目立つのをあまり良しとしないので、外にいる間だけは消えてもらっている。




 4人で暗い夜道をトボトボと歩く。


「じゃあまたな、マルケス」

「おう!」

「また明日!」


 フィンが言い、スーガはフードを被ったまま、片手を上げただけだ。


 マルケスは自分の家の方に向かって歩き出した。 白馬亭から寄宿舎に向かう途中にある小道を左に曲がり、少し行けばマルケスの家があるそうだ。


 まだ行ったことがないけどね。



 マルケスが手を振って小道に入り、姿が見えなくなった時、ドスン! と俺の背中に何かが当たった。


「いて!」


 振り返ってみたが、誰もいない。


「どうした?」


 スーガが心配そうに俺の顔を覗き込む。


「背中に何かが当たって······」

「おい! これ!!」


 フィンが下から拾いあげたのは、刃渡り30ルクほどある大きめのナイフだった。


「シーク! 背中!」


 スーガは俺の背中を覗き込み、滅多に声を荒げた事がない奴が慌てた風に、おいっ!マルケス!!と、大声で呼び戻した。


「どうした?!」


 尋常ではないスーガの声に、急いで走って戻ってきたマルケスが聞く。


「これを見てみろ」


 俺の背中を無理やりクルリとマルケスの方に向けた。 シークもナイフをマルケスに見せる。


「ちょうど心臓の所に穴が開いているぞ! シーク、大丈夫なのか?」

「お······おぉ······何ともない」




『マー? 大丈夫? 何があったの?』


レイが心配して聞いてくる。


『うん。 大丈夫だから、心配いらない。 先生の家までは姿を消していろよ』

『わかった』


 レイは心配そうだが、姿を現してレイが狙われると困る。 俺を狙ったならレイにも危害が及ぶ可能性があるからだ。



 みんなは剣を抜き、俺の周りを取り囲んでくれた。


「俺は大丈夫だ。 誰がこんなことを」


 みんなは辺りを見回すが、完全に気配を消しているのか、()()()と逃げたのか、どこにも誰もいる気配はない。 暗い闇だけが広がっている。


 この時間は店も開いておらず人気(ひとけ)もなく、明かりもない。 しかし、隠れようと思えばいくらでも身を潜めることは可能な場所だ。



「急いでガドル先生の所に行こう!」


 俺たちは周囲に気を配りながら寄宿舎の方に急ぐ。


 途中で嫌がるフェンリルも呼んでガドル邸に向かった。




 呼び鈴を押すと、アニエッタが出てきた。


「あら、皆さんおそろいで、どうされたのですか?」

「ガドル先生はいらっしゃいますか?」

「はい、奥へどうぞ」



 こんな時だが、アニエッタさんはやっぱり可愛い!······なんて······



「どうしたのじゃ?」


 リビングのソファーに座っていたガドルは、尋常ではない雰囲気に読んでいた本を横に置いた。


 

 みんなは緊張した面持ちだ。


「先生! これがシークの背中に!」


 フィンがナイフをテーブルの上に置き、スーガが俺を反転させて背中の破れた部分を見せる。 暗闇の中で気配を消してこれだけ正確に背中を狙ってくるとは只者ではない。


 アニエッタがナイフを見て「キャッ」と声を上げる。


「シークに黙秘魔法をかけた奴ですか?」


 マルケスが勢い込んで聞いた。 何も分からずについてきたフェンリルはみんなの話を聞いて驚いている。


 しばらく険しい表情でそれらを見ていたガドルはフゥとため息をつく。


「まぁ、落ち着いて座りたまえ」




 俺たちはソファーに腰かけたが、マルケスたちは腰が浮いている。 ガドルの次の言葉を待っているのだ。


「やはり来たのう、シーク殿」

「はい、そのようです」


 みんなが顔を見合わす。


「とにかく()()()()が何を知られたくなくてシーク殿を狙うのかを知らねば相手の事もわからぬのう。 じゃが、それはこちらでも調べてみよう。

 しかし、今回は無事だったようじゃが、結界でも張っておったのか?」


「いいえ、これのおかげで助かりました」


 胸を開いて下に着ているミスリルを見せると、みんなが驚いた。


「も···もしかして、それは······」

「ミスリルです。 グノームに貰いました」


「「「ほぉ~~~~」」」


 3人はのけぞって驚いている。


「ふむ、ドワーフから貰っておったのか。 今回はそれのおかげで助かったが、次は頭を狙ってくるじゃろう。 物質攻撃の場合じゃが」



 わぁ!···今回は頭を狙われなくて良かった。



「とりあえずこれから外を歩く時は物質と魔法の防御結界を常に張っておくことじゃ。 それからシーク殿には空間探索魔法をお教えします。 

 それと、たしかフェンリル殿も結局まだじゃったと思うが、スーガも一緒にザラから風探索魔法を習うがよい。 風探索魔法は屋内じゃと相手に知られる恐れがあるが、逆に屋外なら相手にも感知されにくいのじゃ。

 さっそく明日、習うがよい」


「はい」「承知した」


 スーガとフェンリルは緊張した面持ちで頷いた。



「今日は寄宿舎に結界を張っておくので、大丈夫じゃから、安心して休むがよい」

「はい。 ありがとうございます」




 話が一段落した所で、アニエッタがお茶を入れて持ってきてくれた。


 とても心配そうに俺を見る。


「おじい様、シークさんは大丈夫ですわよね」

「ふむ。 今回はたまたま助かったようじゃが、シーク殿は強い。 そうそう心配する必要はないじゃろう」


 その時、マルケスがブゥ~~~ッ!と、お茶を噴き出した。


「まぁ! 大変! 熱かったですか?!」


 アニエッタがあわててタオルを取りに行く。


「このお茶······」


 それ以上いらない事を話さないように、マルケスの口を拭くふりをして口を塞いだ。


「あわてて飲むからですよ」


 そう言って、目で『ダメ!』と、合図を送る。 ついでにフィンにも目で合図を送った。

 フィンは分かったようだが、念のためお茶を口に含んで、そのまま固まってしまった。


 予想はしていたが、どんな味か俺も試してみたくなった。 一口飲んでみる。



 苦い薬草を泥で煎じたような味がする。



 どうやったらこんな味になるのだろう······



 スーガは、すました顔で口を付けずに残している······食事の時は()()()()()()()()だとか言っていた奴が······






正体不明の人物に襲われた。

誰が何のために!

(|| ゜Д゜)

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