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29章 料理?

ガドルの自宅でアニエッタが料理をふるまってくれるという。

可愛い!

俺の心は鷲掴みされた。

 29章 料理?




 アニエッタが俺たちのために昼食を作ってくれたそうだ。


 感激!!


 しかしガドルはあまり食べてほしそうには見えなかった。


「無理にとは言わんぞ。 気が乗らなければ今度でもいいぞ? マルケスと食事の約束をしているのではないのか?」


 先生にしては珍しく、落ち着きがない。 


「いいえ。せっかく作っていただいたのですから、遠慮なくいただきます」

「うん!! 僕も食べたい!」

「そ······そうか」


 なぜかガックリと肩を落とす。


「嬉しいですわ。 準備いたしますのでしばらくお待ちくださいね」


 アニエッタは嬉しそうにパタパタとキッチンへと向かっていった。




 運ばれてきた食事は豪華という程ではないが、家庭的な料理でとても美味しそうな匂いを漂わせている。

 盛り付けもなかなかのもので、配色にもこだわりが見える。


 いつの間にか花柄の可愛らしいエプロンを付けているアニエッタは、ほのかに顔を紅潮させながら配膳をする。


「普段はあまり料理をしないのでお恥ずかしいですが、遠慮なく召し上がってくださいね」

「ありがとうございます! 美味しそうですね。 いただきます!」


 とても美味しそうな匂いがする肉の焼き物を口に入れた。


「············」


 まずい。 肉を焼くだけでどうすればこんなに不味くなるのか······



 スープを飲んでみた。


 これは飲み物か?



 横を見るとレイは美味しそうに食べている。 ただ、いつものようにガッツクのではなく、ミンミを気にしながら、お上品に食べている。 それでも手を止めることはない。



 もしかしてレイには味覚がないのか?



 アニエッタはエプロンを握り締めて感想を待っているかのように、キラキラした目で俺を見る。 そこは可愛い!


 ガドルを見ると、すまない的な顔で俺を見ているが、あの可愛らしいアニエッタの笑顔には勝てない。



 とりあえず「美味しいです」と、ニッコリした。


「まぁ! 本当ですか? 嬉しいわ。 お代りもありますので、遠慮なくおっしゃってくださいね」




 いや···お代りまでは······




 そこに呼び鈴が鳴った。 アニエッタが出ようとしたが「わしが···」と、ガドルが玄関に向かう。

 すぐに、ご無沙汰していますと、聞き慣れた声が聞こえた。



 スーガが戻って来たのだ。



 入って来たスーガの顔は、思ったより変わっていない。 元々男前だったが、厳つさがなくなり一段と綺麗な顔になっていた。

 それよりも変わったのが髪の色だ。 雷属性の鮮やかな黄色になっていて、瞳の色はグリーンになっていた。


「スーガ! 進化が終わったんだな」

「おう! それと······キリルだ」


 スーガの肩にポンとドラゴンが現われた。  

 黄色地に(たてがみ)と翼が緑色になっている。


挿絵(By みてみん)


「わお! 竜生神になれたのか!! 良かったな!」

「おう!···えっ?!」


 スーガはアニエッタを見て固まった。 女の人がいるとは思いもしなかったようだ。



「初めまして。 私はガドルの孫のアニエッタで、この子はミンミです」


 優雅に頭を下げた。 仕草は完璧に可愛い。


「よろしかったら、食事を一緒にいかがですか?」


 アニエッタは嬉しそうに食卓を指してきた。

 俺は一生懸命()で『やめておけ』と合図を出したが、もちろん分かってもらえなかった。


「はい。 ありがとうございます。 頂きます」

 


 あ~あ。 言ってしまった。



 再び食事を始めた。

 特に手が止まることもなく、スーガは顔色一つ変えずに肉もスープも美味しそうに完食した。



 こいつ······凄い。



「午後の訓練がありますので、そろそろ失礼します。 ごちそうさまでした」


 そう言って俺たちはガドル邸を後にした。




 ◇◇◇◇




「スーガ、大丈夫だったか?」

「お···おう······どうやったらあんな味を出せるのか不思議だな」


 やっぱり不味かったんだ。


「美味しそうに食べていたじゃないか」

「それは······作ってくれた人に対する礼儀だろ」


 やっぱり大人だなぁ。


「うん。 しかし、料理には問題があるが、綺麗な人だと思わないか?」

「そうだな」


 俺の問いにスーガは何の感動もなく答える。 ライバルがいなくなるのは歓迎だが、なんとも素っ気ない。


「感動がないな! あんな綺麗な人を見て何とも思わないのか?」

「好みじゃないし」

「············」


 あんな可愛い人が好みじゃない男っているんだ。

 なんだかスーガって覚めているというか、クールというか、なにげにカッコいい。



 ◇◇◇◇



 という事で午後の訓練が始まった。


 スーガは俺と闘技場で魔法の訓練をする事になったのだが、闘技場の外の訓練場にアニエッタが現われて、そっちの方が大変な騒ぎになったのは言うまでもない。 




  ◇◇◇◇◇◇◇◇




 訓練が終わってマルケス、フィンとヨシュアたちがスーガと対面した。 闘技場の入り口横の広場がいつもの待ち合わせ場所になっている。


 大抵俺たちの訓練の方が終わるのが遅いので、マルケスとフィン、そしてヨシュアたち三人以外の訓練生たちは既に帰っていて、静まり返っていた。


 フェンリルは『ヨシュアたちはうるさくてえかなわん』といって、さっさと寄宿舎に戻って行った。




「スーガ!! 変わったな」

「どうしたんだ?! その頭! それに顔が変わってないか?」


 マルケスはスーガの髪の色を凝視し、ヨシュアたちが驚く。


 そういえばヨシュアたちには話していない。 彼らにも知っておいてもらった方がいいと思ったので、歩きながら人竜族と竜生神の話しをした。



「へぇ~~そうなんだ。 それでたまに髪の色が派手な人がいるんだな。 どこか他の国の人かと思っていたぞ」


 思ったより冷静で、それほど驚いた様子がない。


「それで? スーガは竜生神になれなかったのか?」

「いや······」


 スーガの肩に突然キリルが現われたのを見て、三人は「わっ!」と、声をそろえて驚いた。


「おぉ!! すげーじゃないか! だからシークたちと一緒に闘技場の中で訓練したのか」

「そういう事だ」


 珍しくスーガは嬉しそうに答えた。



「じゃあこれからもシークとスーガは闘技場の中で訓練するんだな」

「そうなると思うが、それが何か?」


 ヨシュアたちは、俺とスーガの訓練場所が違う事を再確認する。


「フフフフフ」と、ヨシュアとアラム、モスは顔を見合わせてほくそ笑んでいる。 何だか気味が悪い。



「おい! どうしたんだ?」

「いやな······お前らみたいな綺麗な男がアニエッタさんと一緒にいたら、俺たちは勝ち目がないだろう。 良かったと思って······なっ」


 再び3人で笑い合う。



 こいつら、アニエッタさんを狙っているのか?!······いやいや、大丈夫······俺は彼女と同じ竜生神だし、食事も御馳走してもらった仲だし······大丈夫······



 何が大丈夫なのやら······




「ただ俺らCクラス以下の者はアージェス先生に教えてもらえないから、なかなかケガをしないんだよな。 Bクラスの連中はいいよなぁ」

「お前、アージェス先生に教えてもらってないからそんなことが言えるんだぞ! あの先生は手加減というものを知らないから、いつか殺させるんじゃないかとこっちも必死なんだ」

「でもいいよな。 ケガをしたらアニエッタさんに優しく回復してもらえるんだから」


 なんだか目的が変わっているような気もするが、熱心に訓練する目標になるならそれもいいかもしれない。



「そうだ、フィンはあのバカでかい弓を射ることはできたのか?」


 白馬亭に向いながら俺は気になっていたことを聞いた。


「おう! 今日、初めて飛んだ。 まだまだ飛距離は出てないが、まずまずだと先生に褒められたぞ」

「それは良かったな。 最初はびくともしなかったのに、さすがフィンだな」






 白馬亭に入ると、俺たちを見てシンとした後のザワザワが久しぶりに起こった。


 これは俺にではなくスーガに対してだとすぐに分った。 ドラゴンのキリルは姿を消している。 しかしスーガの髪の色が目立ちすぎる。


 何人もがスーガに聞きに来た。


「お前、スーガだよな。 どうしたんだ? その髪」

「顔が少し変わったんじゃないか?」


 何人もが同じ質問をしてくる。 スーガも答えに困っていた。

 それを見たヨシュアたちが立ち上がった。


「顔が変わるわけがないだろ? 少し痩せたんだと。 それに髪の色なんて人の好みにとやかく言うなよ!」


 いつものように寄ってくる人たちを追い払ってくれた。


 しかし、女性たちは俺たちを放っていなかった。 なにせ今日はフェンリルがいない。 

 ここぞとばかりに寄ってくる。 それにヨシュアたちも女性たちには甘い。


「あなたスーガさんよね。 素敵だわ」

「シークさんとも仲良くさせてもらいたかったの」

「この若さでSクラスなんて、凄いわ! どこかで習ったのですか?」


 俺とスーガにやけに寄ってくる。


 女性に囲まれてみたいと思っていたが、あまり楽しいものではなかった。 「でもこれがアニエッタさんなら嬉しいのに」とこっそり思ったのは内緒だ。



 また別の女性が寄ってきた。


「髪の色がステキ! 黄色い髪色なんて始めて見ましたわ」


 女性が手を伸ばして髪に触れると、思わずスーガはその手を振り払った。

 その時、ドンッ!! と、マルケスがテーブルを叩き、一瞬店の中が静まり返った。



「俺たちは激しい訓練を終えてきたんで疲れているんだ。 放っておいてもらえないか?」


 口元は笑っているが、目は笑っていない。


「放っておいてくれ······」


 もう一度同じことを言い、マルケスの笑みが消えた。 怒った顔は怖い。


「わ···分かったわよ! なんであんたが言うのよ! フン!」


 捨て台詞を残して女性たちは名残惜しそうに自分の席に戻って行った。



 よっ! フェンリル2号!!



「マルケス、()()()悪役になってもらってすまないな」

「なんのスーガ、これしきの事······ハハハハハ」



 いつも?



 スーガはいい男なのに女性が寄ってこなかったのは、いつもマルケスが追い払っていたせいだったのか。



 いい男はつらいよ。




 その日以来、スーガはいつもフードを被っている。 目立つのがそんなに嫌なのか?



 ある時マルケスにこっそり聞いてみた。


「スーガって女嫌いなのか?」

「いや、女が嫌いとうのじゃなくて、奴には幼馴染の婚約者がいるんだ。 だから彼女以外の女を受け付けないだけさ」





 こ······婚約者?!······一度会ってみたい······




 


スーガはそれ以後、常にフードを被るようになったとさ。( ´∀` )b

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