27章 スーガ
スーガは人竜族だったことが分かった。
そういえば俺も人竜族だったんだ。 なんかショック。
27章 スーガ
ガドルはじっとスーガを見ている。
「······確か、スーガといったか? おぬしはもしかして······」
「はい! 人竜族です」
「えぇ~~~~~っ!!」
俺が驚いた。
俺にかまわずスーガは話しを続ける
「どうやらシークとレイの加護を受けて、進化が始まったようなのです」
そういえば、髪の色が少し薄くなっている、
「進化が始まってしまったという事は、竜生神にはなれないのでしょうか?」
そうか。 普通はドラゴンを産んでから進化が始まるって前に言ってたっけ。
「ふむ···それは誰にも分からんな。 本来はそうじゃが、絶対というわけではないからのう······」
「魔法が使えるようになるかどうかも分からないのですか?」
ガドルは腕を組む。
「ふむ······ただ、人竜族は潜在的には魔法を持っておる。 竜生神とならなかった場合、魔法を使えるようになるには努力次第なのじゃ。
ホグスもかなり大変じゃった。
それに人間でも魔法を使える者はおる。 アージェスなどは血がにじむほどの努力をしてやっと身に付けおったんじゃ」
スーガはパッと顔色が明るくなった。
「じゃあ俺も魔法を使えるようになるのですね!」
「努力次第ではな」
「頑張ります!」
スーガはとても嬉しそうだ。 彼も竜生神になれればいいのにと心底思った。
しかしスーガは今でも男前だ。 進化すると、これ以上いい男になるのか?······ちょっと悔しい。
······って、悔しがるのはそこ?
ところで先生···と、スーガは心配そうな顔をガドルに向けた。
「この事をマルケスたちに言うべきでしょうか?······俺が人間じゃないとわかると、見る目が変わってしまうのではないかと心配なのです······」
ガドルは見透かすような目をスーガに向ける。
「マルケスとはそういう人間なのか?」
「いいえ! そんな事は!」
全身で否定をしている。 俺もマルケスはもちろん、スーガもそんな人には思えなかった。
「どちらにしても、進化が始まってしまった以上、事前に話しておいた方がよかろう。
それにシークの事もついでに知っておいてもらうべきじゃろう。
明日にでもわしから話してやろう」
「ありがとうございます!」
そんな事を気にしていたんだ。 人竜族は人間とは違うという事を実感していなかった俺にしては、衝撃だった。
そうか······俺······人間じゃなかったんだ······
なぜか今になってショックを受けた。
そんな俺を見てなにかを察したのか、ガドルが「ふむ」と、話し出した。
「我ら人竜族は人間と違うと言うが、本来は人間なのじゃ。 特別な能力を授かった者を人竜族と言い分けていると言う方が正しいかの。
特殊な能力のために、寿命も伸びていると考えられるのじゃ。
ただ、稀にこの能力を悪しきことに使う者がいる」
ガドルは二人を覗き込むように見つめる。
「本来、悪しき心の者にはドラゴンは生まれないと言われているのじゃが、力を持ってしまったゆえに悪しき心が芽生えてしまう愚か者がおるのじゃ。
そのために人竜族とは悪と考える者たちがいるのも確かなのじゃな。 それで我らは人竜族と名乗らずに、静かに暮らしている者が多いのじゃ」
なぜ黙っているのかが分かった気がした。 全て力を持っている人がいい方向に使っているとは限らない。
多分、たった一人が悪しきことに使っただけで、全ての人竜族が悪と捉えられてしまう可能性があるという事なのだ。
ガドルは俺を見据えた。
「レインボードラゴンの力があれば、世界を滅ぼす事も可能なのじゃが、シークはどうしたいのじゃ?」
「どうしたいと言われても······世界は滅んでもらいたくないですし、このまま平和に過ごせればそれでいいと思っています」
「そういう事じゃな。 それでよいのじや」
······ただ······と言う俺の顔をガドルは黙って見つめる。
「俺に黙秘魔法をかけた者の事は、何としても知りたいですけど」
「そうじゃな。 記憶さえ取り戻せれば今の憂いもなくなるじゃろうし、何者が何の為に魔法をかけたのかもわかるのじゃがな······何か思い出したことはないのか?」
「今の所、何も」
あの不確かな夢の話しは、とりあえず置いておこう。
ガドルも残念そうに肩を落としたが、気を取り直したように、パンパンと、手を叩く。
「では、勉強をはじめるとしようか」
それを聞いてフェンリルが起き出した。
「我も共に学ぼう」
「「えっ!!」」
俺とスーガは同時に声を上げた。
俺はフェンリルが勉強するという事に驚き、スーガは······
「フェンリルって、話せるのか?!!」
当然そっちに驚いた。
フェンリルが話せることを言っていなかったからだ。
「フェンリルって、実はただの狼じゃなくて、霊獣なんだ」
「れ······霊獣?!!」
スーガはフェンリルをまじまじと見る。
「ただの狼にしては綺麗すぎると思っていた。 そう思って見ると、霊獣って本当に綺麗なんだな」
フェンリルは褒められてまんざらではなさそうだ。 なにげに照れているところが可愛い。
「マー! フェンリルが褒められて嬉しそう!」
思わずレイも声を上げ、俺がうなずく。
「えっ?!」
すると再びスーガが驚いた。
「えっ?! 僕は話さない方がよかったの?」
レイは自分の口を押えた。 もう遅いけど。
「えっ? スーガはレイが話せることを知らなかったのか?」
「えっ?! 普通知らないだろう?」
みんなで顔を見合わす。
「人竜族なら知っているのかと思った」
「お前以外に竜生神の知り合いはいないからな」
「そんなものなのか·······まぁいいか。 そういう事だ」
俺は頭を掻いた。 どうせ色々知ってもらった方がいいだろう。
スーガは早々と納得してしまったようだ。
「そうだよな。 ドラゴンとは意思の疎通ができないと色々と困りそうだしな······そういえば、先生は竜生神ではないのですか? ドラゴンを連れているところを見た事がないのですが······」
すると、ガドルの肩の上にポッとドラゴンが現われた。
「わっ!!」
突然現れた白地に黄色い縞模様ののドラゴンにスーガは驚く。
「フォフォフォ。 いつもは姿を消しておるでな。 あと、ザラも竜生神じゃ」
「僕はルーア。 よろしく」
ルーアはガドルの肩の上から手をあげて挨拶をする。
「凄い、シークを入れて3人もいるのですか。 いいなぁ···俺にも生まれないかなぁ」
スーガは羨ましそうにレイを見つめた。
「さぁさぁ、授業じゃ」再びパンパンと手を叩く。
ガルドは書斎から数冊の分厚い本を持ってきた。 [原初魔法]「魔法使用」「応用魔法」という本で、それぞれ5メクほどの分厚い本だ。
ガドルの講義が始まった。
さすがにスーガは本が好きなだけあって良く知っている。 驚いたのはフェンリルがよく知っていることだ。
なんで森の中で暮らしていたお前が魔法に詳しいんだよ!!
俺も記憶さえあれば、きっとこんな本なんて丸覚えしているはずだ!
どこから来るのか、その自信·········
その日の午後、訓練を始める前に、ガドルはマルケスとフィンに向かって例の話を始めた。
人竜族の事、竜生神の事、そして先生たちと俺はもちろんスーガも人竜族であるということを話した。
マルケスはいちいち驚いていたが、フィンは知っていたようだ。
以前住んでいた家の仲良くしていたお隣の人が人竜族だったらしく、竜生神の話も聞いていたそうなので、俺の事はそうだろうと思っていたらしいが、さすがにスーガが人竜族という事を聞いた時には驚いていた。
しかしスーガが心配したような事はなく、どちらかというと羨ましそうにしていた。
「竜生神になれるといいな」
マルケスはスーガの肩を叩き、フィンもうなずいていた。
スーガも竜生神になれるといいですね!
( ´∀` )b




