23章 勉強
できる魔法を全て見せるように言われた。
23章 勉強
「では、シーク殿の魔法を見せていただけますかな? 出来る事を全て」
「全てですか? わかりました。 少し離れて下さいね。
俺は水、炎、岩、風、それぞれの魔法と剣やカッターなども披露した。
超高温炎を出した時には「ほぉ~」という声が漏れ聞こえた。 ちょっと嬉しい。
「全て攻撃魔法ですな。
あと、雷魔法はかなり強力な魔法ですじゃ。
いずれお教えしますが、それぞれに補助魔法を一緒に使うと、格段に威力も使い勝手もよくなり、防御魔法も足せば、怖いものなしになります。
レイ殿と一緒に少しずつ勉強していきましょうな」
「「はい!」」
俺とレイは直立不動で返事をした。
なんだかワクワクする。 沢山覚えたい。
ガドルも大きくうなずく。
「では、今度は武術の方じゃが、剣は使えるのですかな?」
「はい。 まだ人と戦ったことがないので、どれくらい強いのかはわかりませんが、それなりに使えると思います」
「ふむ。 ホグス」
ホグスが前に出てきた。 木刀を2本持っていて、1本を俺に差し出す。
「ホグスと一度手合わせをしてみなされ」
「はい! レイは離れていて」
「うん」
レイはフェンリルの背中に移った。
木刀を正眼に構えた。
「よろしくお願いします!」
「おう!」
おっと、2メルクの巨漢がまるで隙だらけだ。 俺ってもの凄く強いのか?
「行きます!!」
まず一歩踏み出して突く。 跳ね上げられたので右から袈裟懸けに切り下し、左から切り上げ、踏み出した左足を軸に一回転して横に払うが、どれも間際で避けられる。
何度も踏み込み、押しているように見えるが、なぜか軽くいなされているように感じるのは気のせいだろうか。
俺は息が上がって来たが、ホグスは息が少しも乱れていない。
「そこまで!」
「ふぅ~~っ!」
大きく気を吐いた。
「ホグス、どうじゃ?」
「なかなかのものです。 Aクラスレベルです」
Aクラスだって!! 俺、凄い!
「まだまだですね」
えっ? Aクラスなのに?
「では、もう一度」
「今度は手加減しないからな」
ホグスがニヤリと笑う。
手加減してたの?······あれで?······
「行くぞ」
「はい!」
俺は再び正眼に構える。
「はじめ!」
ゴン!!
「いって~~~っ!!」
頭に激痛が走った。 俺は頭を抱えてうずくまる。
何が起こったのか分からない。 いつの間にか目の前にはホグスが立っていた。
「ど·····どうなっているのですか?」
「ホグスは補助魔法を使っておるのじゃ」
「補助魔法ですか?」
「ふむ」ガドルはレイの方を見た「レイ殿、シーク殿の動体視力を上げれますかな?」
「うん!」
「ではもう一度」
「いいか?」
「はい!」
「はじめ!」
動体視力が上がり、ホグスが走って来るのが見えた。 受けようと剣を上げようとしたが、体がうまく動かずに、ホグスの木刀が振り下ろされる。
ゴン!!
「いって~~~っ!!」
再び頭を殴られた。 見えているのに避けることができない。 俺は頭を抱えてうずくまった。
「どうじゃ? ホグスの動きが見えましたかな?」
「······見えたけど······」
頭をなでながら立ち上がった。
「フォフォフォ! 体が動かんじゃったじゃろう」
「······はい」
なんだか悔しい。 物凄く弄ばれている気分だ。
「見えるだけではダメなのが分かりましたかな? ではレイ殿、シーク殿の反射神経を上げてもらえますかな?」
「うん!」
「ではもう一度」
「いいか?」
「はい!」
「はじめ!」
動体視力が上がっていて、ホグスが走って来るのが見える。 今度はホグスが木刀を振り下ろすより早く木刀を上げてそれを受けた。
カン!
「やった! レイ! やったぞ!」
「フォフォフォ! 出来ましたな」
「はい!」
なんとも嬉しい!! レイにはこんな魔法も使えたんだ。
「レイ殿はまだ幼く、どういう魔法が使えるのかが自分でも分かっておられません。
しかし、潜在的には黒魔法以外のすべての魔法をシーク殿に覚醒させることができるはずなのじゃ。
ドラゴンはこちらが望む魔法しか加護してくれんので、逆に言えばこちらが望めば、可能な限りの魔法を加護してくれますのじゃ」
わぁ! なんだか凄い! 何でもできるようになるって事?
「これからシーク殿とレイ殿で勉強してもらわなければいけません。
お部屋に必要な書物も準備させて頂きましたので、午前中は毎日わしが教えに参ります。
そして午後からはホグスや他のSクラスの者も一緒に実践のお相手いたします」
勉強はちょっと嫌だけど、楽しみの方が大きい。
「頑張ります!! よろしくお願いします!!」
俺は頭を下げた。
「ふむ」ガドルは満足そうにうなずいた。
今度は思案気にレイとフェンリルを見比べている。 そして「そうじゃな」と、つぶやく。
「レイ殿、フェンリル殿に何か魔法の加護を与える事は可能ですかな?」
えっ?! そんなことができるの?! そういえば、フェンリルは昔、レインボードラゴンに炎をもらったと言っていた。
「わ······我に更なる魔法を?」
フェンリルも驚いている。 大きく尻尾を振って、嬉しそうにレイの返事を待つ。
とっても可愛い!
まぁ、それは置いておいて、俺もレイの返事を待った。
レイはフェンリルを見定めるように見つめている。
「今は······風ならできるかな? それが落ち着いたら、もう一つくらいできそうだけど、今は分からない」
「では風を······」
「わかった!············もう大丈夫だよ」
それを聞いたフェンリルの周りに風が渦巻き始めた。
「おぉ!! 風を操れるようになったぞ!!」
フェンリルは目をキラキラさせて風や竜巻を動かしている。
「フェンリル殿、ザラが風と炎の使い手じゃ。 色々と学ぶとよい」
「おう! 感謝するぞ!」
とても嬉しそうに答えた。
こんな時は、やけに素直なんだ。
どんな魔法があるのかさえ知らなかったシークにとっては、これからが楽しみでしょうね
( =^ω^)




