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22章 寄宿舎

広くて立派な部屋だ。 さすがSクラス!

案内が終わった後、ガドルに呼び出される。

なんだろう?

 22章 寄宿舎




「今から寄宿舎のお部屋に案内いたします」


 ソフィアが先導しようと歩き出すのを呼び止めた。


「あっ! マルケスたちが待っているので先に彼らに会いに行ってもいいですか?」


 ソフィアは「もちろんです」と言ってくれたので、先にマルケスたちの所に行った。


 俺の姿を見て、みんなが駆け寄ってきて、首に掛かっている傭兵証を引っ張り出して眺める。


「おぉ! これがSランクの傭兵証かぁ!」

「黒と金でカッコいいっすね!」

「裏にレイさん

とフェンリルさんの名前まで書いているぞ」

「使役獣だから、3仔1(さんこいち)なんだろう」

「スゲ~なぁ」

「Sクラスはヤッパ違いますね」

 

 周りの人たちも(のぞ)き込んで、凄い人だかりになっていた。 



 そんなに珍しいものなのか? まぁ、この国では7人しか持っていないからしかたないか。




 ソフィアに待っていてもらっているので、頃合いを見て切り上げる。


「もういいですか? 今から寄宿舎に案内してもらう事になっているので······」


「寄宿舎か。 俺たちも見に行ってもいいか?」

「もちろんです。 行きましょう」




 ゾロゾロとソフィアについていく。


 傭兵組合の裏手のドアから外に出ると、右側には昇級試験をした大きな闘技場があり、左側には大きくてシンプルなクリーム色の建物がずらりと並んでいた。



 3階建てでワンフロアに10部屋。 その建物が4棟あった。

 ここはB~Eクラスの寄宿舎だそうだ。


 そこを抜けると、Aクラス用の建物がある。


 造りも少し豪華で、赤い模様が施されている。 3階建てで大きさは同じくらいだが、ワンフロアに6部屋。 それが2棟。


 その先には広い中庭があり、向こうにかなり立派な3倍ほどのサイズの建物が見えた。

 2階建てだが造りもオシャレで各部屋に広いテラスまでついている。


 ここがSクラスの寄宿舎だ。


 ワンフロアに4部屋で、入り口には使用人の控室まであり、色々世話を焼いてくれるそうだ。


「現在ホグス様が101号室に、ザラさんが204号室に住まれています」


 ギブブとアージェスは自分の家があるので寄宿舎にはいない。 ガドルはここのさらに奥に戸建ての家があり、そこで暮らしているそうだ。



 さすが創始者。



 俺は103号室に通された。


 中はフェンリル商団の部屋の広さと同じくらいだが、シンプルでとても落ち着く造りだった。 ソファーやダイニングテーブルもあり、あと2つ部屋がありそうだ。


「わぁ~~~っ! 広いなぁ! 俺の部屋とは大違いだ」


 フィンがうらやましそうに言い、みんながキョロキョロと部屋を見回す。


「こっちの部屋は何だ?」


 ヨシュアが右側のドアを開けるとそこは寝室で、ダブルベッドがあった。


「スゲェ~ッ! デカいベッド!!」

「わぁ! フカフカだぞ!」


 ヨシュアたちが子供みたいにベッドの上で飛び跳ねる。



 みっともないな·······



 寝室からもテラスに出ることができるようになっていた。


 目の前が中庭で、なかなか眺めもいい。 と、思ったら、中庭の草の上にフェンリルが寝ていた。



 いつの間に?



『フェンリル? そんなとことで何してるんだ?』

『うるさくて(かな)わん。 終わったら教えろ』


 テラスには柵があるのだが、飛び越して出ていったのだろう。 彼なら簡単に飛び越せる高さだ。


『わかった』



 俺は苦笑しながらもう一つの左側の部屋に向かった。



 そこは書斎で、すでにスーガが中に入っていて、本棚に並んでいる本を物色している。

 住むのは今日からだというのに、三台ある本棚にはびっしりと本が並べられていた。


「ソフィアさん。 この本は前に住んでいた人の忘れ物ですか?」


 ソフィアはクスッと笑った。


「これはガドル様からの贈り物だそうです。 しっかり勉強するようにと伝言を(おお)せつかっております」


「ゲッ!」



 何を勉強するんだよ! 



 しかし、スーガは机の前のゆったりとしたひじ掛けに座って、すでに本を開いて読み始めていた。


「面白いですか?」


 スーガに聞くと、普段冷静でほとんど話さないスーガが興奮気味だ。


「ここにある本は、貴重な物ばかりでずっと探してた本まであるんだ。 魔法に関する珍しい本や、戦術に関する本。武術関連の本に経営学や経済学。

 (いにしえ)の言い伝えの本に薬草や自然に関する本まで何でもある。

 ガドル殿はお前を王様にでもする気なのじゃないかと思うぞ。 俺もここに住みたいと、切に思うぞ!」


 驚いた。 スーガがこんなに喋ったのも初めてなら、こんなに興奮して熱く喋るのも始めて見る。


「いつでも読みに来てください」

「いいのか?!」


 目をキラキラさせて俺を見る。


「もちろんです」

「ありがとう! 嬉しいよ」


 満面の笑みで笑った。 とても爽やかで輝くような笑みだ。


 そういえば、スーガがこんなに笑った顔を見るのも初めてかもしれない。

 いつもマルケスの後ろで無表情で立っているイメージしかなかった。



 しかし他の連中はあまり興味がなさそうで、サッサと書斎から出て行った。




 その後、ソフィアに連れられ、この建物の裏にあるSクラス専用の食堂と風呂に案内された。


 食堂といっても人数が少ないのでちょっと豪華なダイニングのような部屋で、ゆっくりとくつろげるように応接セットまでも置かれている。


 何かの戦いが描かれた絵画や鎧を着た男が剣と盾を掲げている等身大の彫刻に、傭兵の寄宿舎らしく剣や槍、斧、そして見たこともない身の丈より大きな弓まで飾ってあった。



 次に案内された風呂は女性用と別で、あちらがどうなっているのかは知らないが、ホグスと2人で入るには広すぎるくらいの大きさだ。  

 フェンリル商団の風呂と違ってシンプルで、大小二つの湯船がある。


「Aクラスは知らないが、Bクラス以下の風呂と同じくらいの広さがあるぞ」

「それならそちらの風呂も結構広いじゃないですか」


 そう言うとフィンがとんでもないと、声をあげる。


「バカ、人数を考えろ。 時間をずらさないと混雑で大変なんだぞ」

「へぇ~~」


 さすがSクラス。 凄く優遇されているのだなと実感した。




 風呂で実感って······




 みんなが風呂を見て関心している時、ソフィアが俺の所にきて小声でささやいた。


「シーク様、フェンリル様とレイ様と共にこの後、闘技場の方へ来るようにとガドル様から言付(ことづ)かっております」

「わかりました······なんだろう?······」




 後ほど昼食を共にする約束をし、マルケスたちと別れて、闘技場に向かった。




 闘技場にはガドルとホグス、ザラが待っていた。


「おはようございます。 何か御用ですか?」


「ふむ······」


 ガドルはフェンリルとレイを見てから俺の前に立った。


「じつは······レイ殿はまだ幼く、シーク殿は覚醒して間もないように思えます。

 霊獣の肉によって急激に進化した(ゆえ)と思われますのじゃが······」


「そうですね。 魔法を使えるようになってまだ2カ月程しか経っていません」


「ふむ······そこで、我々が御教えしようと思うのじゃが、いかがかな?」

「もちろん、願ってもない事です。 俺の方からお願いしようと思っていた所です」



 こんな凄い人たちに教えてもらえるなんて、なんてラッキー!



「わかりました。 ではさっそくじゃが、今まで魔法を使っていて、疑問に思ったことなどはございますかな?」


 疑問?······分からないことだらけで、何が分からないのかもわかっていない気がする。


「······そうだ! ガドルさんは白魔法が使えるのですよね」

「そうじゃが?」


「俺の回復魔法が水魔法と合体しているのですが、別にできるのですか?」

「合体? どういう事ですかな?」


「俺が出した水に浸ると、傷が回復するのです」


 ガドルは振り返り、ザラと目を合わせて声を上げて笑った。 


 おかしなことなのかな?


「失礼。 なんともメチャクチャな魔法ですな。 どういう時に水魔法が使えるようになりましたのじゃ?」


「えっと~~···喉が渇いたと言ったら、レイが湧き水を出してくれて·····あぁ、その時、俺もレイもケガをしていて、その水のおかげで俺のケガは治って、レイも元気になりました」


「レイ殿もしゃれた事をなさる。 一石二鳥という訳ですな。 初めに水で回復できるようにしたのでそのままなのじゃな」

「うん! 僕もマーもケガをしていたから」


 レイは得意げだ。


「そうですか。 それは良い考えでしたな」


 レイは誉められて、くすぐったそうに笑う。


「ではこの先、回復魔法を別で御教えするので、水と分けてもらえますかな?」

「わかった」



 えっ?······それで解決?······



「他に何かありますかな?」


「······魔法を唱える言葉がよく分からないのですが······水魔法なら[水]と唱えているのですが···ちょっと()()()()()かなって······」


「初めは声を出せなかったはずじゃが?」

「だから心の中で······」


「そう···呪文などは声に出す必要などないのですじゃ。

 相手に何の魔法を使うのかをわざわざ知らせる必要もないじゃろうし、呪文を唱える時間だけ攻撃が遅くなるという事じゃな。

 心の中で思い浮かべるだけで良いのですじゃ。

 大きな魔法の時に自分自身で確認する程度ですかな?」



「そうか! 自分で分かっていればいいのですね!」



 ガドルは満足げにうなずいた。





結構、でたらめな魔法だったのね(゜_゜;)

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