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20章 三人のメイド 後半

メイドたちには困ったものだ。

また来るかな?

 20章 三人のメイド 後半



 湯船にもぐり、頭の泡を洗い流す。


「気持ちいい~~~っ!!」



 上を見上げるとキレイな星が沢山(またた)いている。 


「キレイだなぁ······そういえばゆっくりと夜空を見上げることなんてなかったなぁ」



 時間がゆっくりと流れていく。



 このままここで暮らすのも悪くないと、ちょっと思った。 しかし、メイドたちには閉口する。 それも3人で。



 俺がカッコいいのはわかるけど······なんて······




 その時、風呂場のドアが再び開いた。 俺は「またかよ!」と、あわてて湯船に深く浸かって体を隠す。


「マー!」


 聞こえてきたのはレイの声だ。 顔を上げると、レイとフェンリルが来ていた。


「レイ! もう大丈夫なのか?」

「うん! もう元気! それよりお風呂! お風呂!」


 レイはバシャン! と広い湯船に飛び込んできた。 お湯の中で空を飛ぶように泳ぎ回っている。 なかなか器用に泳ぐものだ。


 フェンリルは手前でボ~っと立っているので手招きをした。


「フェンリルも入らないか?」


 しかし「ふん!」と言って隅に寝転がってしまった。



 別にいいけど······気持ちいいのに。



 プハッ! と、レイが俺の前に顔を出した。


「気持ちいいか?」

「うん!!」


「レイもキレイになるな。 俺も久しぶりにスッキリだ」

「マーもキレイになりたかったの?」


「えっ? もしかして服だけじゃなく体もキレイにできるのか?」

「できるよ」


 俺の頭がフッと温かくなったと思ったら、髪が乾いていてサラリと前髪が落ちてきた。


「そんな事もできるのか? 言ってくれればよかったのに」

「だってマーがやってくれって言わないから」


 プ~っと、ふくれっ面をする。


「ごめんごめん! そうか、俺が望むことをしてくれるという事は、俺が望んでいない事まではしてくれないという事だな。 俺たちはまだまだ勉強不足だな」


「勉強?」

「うん、何ができて何ができないのか、一緒に勉強しよう」


「わ~い! 勉強! 勉強!」


 ひとしきりレイと泳いだり、遊んだりした。

 フェンリルにお湯をかけたりもしたが、一睨(ひとにら)みされただけだった。



 面白味(おもしろみ)のない奴め。



「さぁ、出ようか」


 俺は脱衣所でレイに乾かしてもらい、大急ぎで着替えた。 嫌な予感がしたからだ。


 着替え終わった途端、脱衣所のドアが開き、例のメイドたちが入って来た。

 すでに着替え終わった俺を見て、誰かがまた「チッ!」と言う。


「なにか?」


 三人は少しバツが悪そうに顔を見合わせる。


「御着替えをお手伝いしようかと思ったのですが······」




 やっぱり······




 部屋に戻るとフェンリルはサッサと自分用のクッションの上で丸くなる。

 気に入ったようだ。 あれだけでも欲しいと思ったが、そうもいかないだろう。


 寄宿舎に行ったら新しいのを買ってやろう。




 ソファーに座ってくつろいでいると、ノックがあった。 入って来たのは例のメイドの一人だった。


 小柄だが気が強そうで、いつも俺と話すのは彼女だ。 手には水差しとコッブをのせたトレイを持っている。


「お水をお持ちしました」


 部屋にはすでに満タンの水が置いてあるのにまた持ってきたのか? 


「ありがとう」


 メイドはテーブルにトレイを置いたが、そのまま立っている。


「なにか御用はございませんか?」

「ありません」



 けっこうウザい。 少し突き放すように言うと「そうですか」と、諦めて出て行った。



 少しすると、またノックがあった。 入って来たのはまたメイドの一人で、すこしポチャリした女性だ。 果物やお菓子がキレイに盛られた皿を持っている。


「お夜食をお持ちしました」



 頼んでないけど······



「そこに置いてて下さい。 もう結構ですから」


 また突き放すように言う。 この手の人に優しさは逆効果だろうと思った。

 すると何も言わず、残念そうに出て行った。



「三人目も来るかな?」

「もっと美味しいものを持ってきてくれればいいのに」


 そう言いながら、レイはもうお菓子や果物にかぶりついている。



 どれだけ食うんだよ



 しばらくして、案の定三人目が入って来た。


 スラリと背が高く、顔を別にすればなかなかグラマーでスタイルがいい。 今度は何も持ってきてはいない。


「なにか?」

「·········」


 なんだかモジモジしている。


 もう一度聞いてみた。


「なにか?」


「······あのう······夜伽(よとぎ)の相手はいりませんでしょうか?」



 ······夜伽(よとぎ)?!!······


 ゴクンと生唾を飲み込んだ。 色々な事が頭をよぎる。



 色々な事って何かは言えないけど······



 すると、後ろでグルルルルと唸り声が聞こえた。 振り返ると、フェンリルが立ち上がって牙をむいている。


「し! 失礼いたしました!!」


 あわててメイドは部屋を出て行ってしまった。



 ちょっと残念。


 でもその気はないのでこれで良かった。 どうやって断っていいかわかないし······しかし、ここのメイドたちって······




 すでに興味を失ってクッションに寝転がるフェンリルは置いておいて、俺とレイは庭に出てみた。 


 木製のテーブルと切り株の椅子があり、そこに腰かける。 レイはテーブルの上にチョコンと座った。 


 爽やかな風が髪を揺らす。


「気持ちいいな······」



 月明りに照らされたレイの体が七色に輝いて見える。

 俺が生んだというのが信じられない。 どうやって生んだのだろう? 記憶がある前の俺はドラゴンを生むことを知っていたのだろうか。


 レイは俺の記憶がないからレイにも記憶がないのか?




「レイ、俺が記憶をなくす前の事を何か思い出さないか?」

「う~~~ん······ない」


「そうか······俺は何者なのだろうな······両親や兄弟はいるのだろうか······なぜあんな所で倒れていたんだろう······

顔が変わってしまったから両親や知り合いも俺のことが分からないだろう······記憶はいつ戻るのだろう······」


 レイは(かな)()な顔で俺の顔を見上げている。


「マーは記憶がないと悲しい? 辛い?」

「レイは何とも思わないのか?」


「僕はマーが悲しいと悲しい。 マーが辛いと辛い」


 涙を浮かべて見上げるレイを見てハッとした。


「ごめんな。 俺たちは一心同体だったな。 クヨクヨ考えるのはやめだ! さっ! 寝ようか」

「うん!」




 やたら広いベッドに横になり、レイは俺の胸元に潜り込んで眠った。





なかなか強烈なメイドたちでした。

( ´∀` )b

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