16章 傭兵ランク取得試験
先ずはAランク取得試験だ!
3メルクのゴーレム? 楽勝!!
16章 傭兵ランク取得試験
案内されたのは、かなり大きい闘技場だった。
中央の円形の舞台は1メルクほど高くなっていて、その広さは直径50メルクあり、舞台と観客席の間は5メルクほどの砂地になっている。
また周りに2メルクほどの高さから造られている観客席も40~50段の階段状になっていて、満席になると何人程入ることができるのか、凄い広さだ。
どこから聞きつけてきたのか、観客が大勢入っていた。
マルケスたちもすでに観客席にいて、手を振っている。
観客席の中に特別席のような場所があり、そこにガドルとザラとホグス、そして見た事がない小柄の女性と、スラリとした少し顔色が悪い男性が座っていた。
多分審査員なのだろう。
その顔色が悪い男性······なんか見た事がある······誰だっけ?
舞台中央に白線が二本あり、その片方の前に立たされた。
「あのう······この子達も一緒でいいのですか?」
連れてきてくれたお姉さんに聞いてみた。
俺とレイとフェンリルの3人対相手が1人ではちょっと不公平かなと思ったからだ。
「使役獣も実力のうちでございますから大丈夫でございます」
丁寧な返事が返ってきて、そのまま帰っていった。
入れ替わりに大きな赤い旗と白い旗を持った緑の髪の男性が舞台に上がってきた。
あっ! 人竜族!
人竜族なのに40~50歳くらいの、キレイというより中年の魅力的な? キリリとした男前だ。
「審判を務めさせていただきます[ギルク]でございます」
丁寧に頭を下げてくれたので。こちらも頭を下げる。
「ただいまからAクラス取得試験を行います。 簡単にルールの説明をさせていただきます。
対戦相手はすべて魔物でございます。 こちらでランダムに選ばせていただきます」
魔物相手ね。 じゃあ、思い切りできるな。
「私が赤い旗を振り下ろすと」
どこからかパン!と、大きな音が鳴った。 ちょっとビックリした。
「競技スタートとなります。そして赤い旗を上げると」
パン! パン!と、音が二回鳴った。
「あの音と共にシーク様の勝利となります。 そして白い旗が上がると」
パン! パン! パン! 三回音が鳴った。
「シーク様の負けでございます。 そしてこうすると」
赤い旗と白い旗を頭上で交叉させると、と、ビッ! ビッ! ビッ! 地面の振動と共に今までと違う音が三回なった。
「競技の中止、または中断となります。 この時、魔物の動きは止まりますが、その最中に攻撃を行った場合は反則負けとなります。
この試験には待ったも参ったもありません。
結界を張らせていただきますので舞台の外に出ることもできませんので場外負けもございません。
もし続行不可能と私が判断した場合のみ試合を終えることができます。
この舞台の周りには多重結界を張らせていただきます。 音も、攻撃や魔法も熱も外には伝わりませんので、思う存分戦っていただいても大丈夫です。
何かご質問は?」
俺は上を見た。
「結界の高さはどれくらいですか?」
「500メルクとなっております。 不十分ならもう少し上げることはできますが」
そんなに?
円筒形に結界が張られているのか。 しかし、どれだけ高く設定してあるんだ?
「······いえ、充分です」
「それでは健闘をお祈りいたします」
ギルクは舞台から降り、少し高くなった審判用の台の上に立った。
目の前がユラリと揺れると、目の前に3メルク級のゴーレムが現われた。 5メルクのゴーレムより少しスマートだが、小さな頭に広い肩幅で、地面まで届く長い腕をしている。
「ゴーレムか。 楽勝だな」
その時、ブオン! と空気が揺れる感覚があって、今までザワザワしていた観客の声がフッと消えた。
結界が張られたのだ。
「レイ、少し離れていろ」
「わかった!」
レイは俺の後ろの結界際の高い所まで飛んでいき、待機した。
「よし!」
審判の方を見ると、赤い旗が高々と上げられている。
「油断するなよ」フェンリルがたしなめる。
「3メルクのゴーレムだぞ。 大丈夫さ」
パン! 開始の音が鳴った途端、ゴーレムが突進してきた。
5メルク級とは早さがまるで違う。 ズンズン! と、地響きをたてながら走り出し、気づくとすぐ目の前まで来ていた。
フェンリルが体当たりをしてゴーレムを吹き飛ばした。 舞台の端まで飛ばされ、結界にぶつかって引っくり返っている。
「油断するなと言っただろうが!!」
「わぁ! びっくりした! ありがとう。 もう大丈夫」
起き上がろうとしているゴーレムに向かって走りながら超高温の剣を出して、首をはね、縦に真っ二つに斬った後、ついでに横にも払って5分割にしてやった。
ゴーレムがスッと消えた。
パン! パン!
ブオンと空気が揺れる感覚があったと思ったら、わぁぁぁぁ~~~っ!! と、観客の声援が聞こえてきた。
俺がマルケスたちがいる観客席に向かって片手を高々と上げると、さらに声援が大きくなった。
審査員席を見ると、ザラは興奮して立ち上がっていて、ガドルとホグスは満足そうに見える。
後の二人はなぜか憮然として座っていた。
「シーク様の勝利!」
審判の宣言があった。
ギルクが中央までやって来た。
「おめでとうございます。 続けてSクラス昇級試験も行えますが、いかがいたしますか?」
「もちろん続けます」
ギルクはほんの少し眉尻を上げた。
「·········承知しました。では、ご武運を」
ギルクが審判席につくと、目の前がユラリと揺れた。 何が出てくるのかと思ったら、目の前に緑の壁が現われた。
「えっ? なに?」
見上げると巨大な緑色のワームだ。
ブヨブヨした体には細かい産毛のような毛が生え、所々の皮膚が茶色く禿げたようになっていて、気持ち悪い芋虫を連想させる。
太さは5メルク、長さが30メルク以上はあり、舞台が狭く感じる。
体の先端全体が口になっていて、50ルクほどの大きな牙が内側に向かって何層も円形に並んでいた。 フェンリルでさえ一口で丸呑みされそうだ。
俺は思わず飛び下がる。 レイはかなり高くまで飛び上がっていた。
結界が張られた。
「こんな奴、どうやって倒せばいいんだよ!」
「ワームは炎に弱い。 だから···」
「わかった!」
パン! と、開始の音が鳴った。
俺は特大炎カッターを幾つも出して、ワームを細かく切り刻む。 斬られた箇所から焦げた嫌な臭いが辺りを包み込む。
今度もまた一瞬で終わったと思ったが、終了の音が鳴らない。
「なんで?」
「バカ! よく見ろ!」
切り刻まれた破片が盛り上がっていき、それぞれ大小の無数のワームになっていく。
「わぁ! なんだよこれ!!」『レイ!戻れ』
『は~~い!』
かなり高く舞い上がっているレイに肉声は届きにくいと思った俺は心の中で呼ぶ。 案の定ちゃんと聞こえたレイが戻って俺の肩にとまった。
レイの安全を確認してから、急いで竜巻で細かいワームたちを拾い集める。
竜巻がワームで緑色になった。
「だから最後まで聞けよ! ワームは斬っても死なないから、いくつかに分けて炎で焼いてしまえばいいんだ。 あんなに細切れにしやがって! ついでに言えば、茶色いサンドワームはこいつの3倍はあり、炎に強いが水に弱い。 水をかけるだけで死ぬのだが、普通は砂漠の真ん中に水はないからとても厄介なんだ。 まぁ、お前なら問題ないだろうがな」
フェンリルが早口で解説してくれる。
「じゃあ、こいつを焼いてしまえばいいんだな」
「まてまて!! もしかして、あの竜巻の中に炎をぶち込むつもりじゃないだろうな?」
「だって1つに纏まっているから、簡単だろ?」
「この限られた舞台上で竜巻に炎をぶち込んだら、逃げ場のない俺たちは丸焦げになるぞ!」
「あっ! そうか······」
その間も俺は右手で竜巻を操る。
「よし、それなら······」
「おいおい! 大丈夫か?」
「任せろ! 端まで移動するぞ」
出来るだけ端まで移動してから、左手で大岩を竜巻の上に出し、右手を閉じて竜巻を消すと同時に上から大岩を落とし、ワームの破片がかからないように、俺たちを岩で囲んだ。
ズドドン!!
凄い振動と共に大岩がワームたちを押しつぶす。
「消えろ」
俺たちを囲んだ岩と大岩を消すと。周りはワームの潰れた破片だらけだった。
とにかく足元のワームの破片から炎で焼いていく。
しかし、会場全体に飛び散ったワームを焼いていくのは時間がかかる。 すでにウニュウニュと動き出しているのだ。
「フェンリル! 手伝ってくれよ」
俺は炎で細切れのワームを焼きながらお願いするが、呆れた顔でソッポを向かれた。
レイがフェンリルの前に飛んで行く。
「ねぇ、フェンリル! 手伝って! 手伝って! 素敵な森の主様、手伝ってあげて!」
フェンリルは「チッ!」と言いながら、レイにそう言われると、まんざらではなさそうだ。
俺とフェンリルで端から焼いていき、ほどなく全てが真っ黒になった。
パン! パン!
今度はちゃんと勝利できた。
なんとかSランク取得試験に合格できた。
審査員たちを紹介されるが·····
(゜_゜;)
1メルク=1メートル です
ついでに
1メク=1センチメートル
1キメルク=1キロメートル です(*^_^*)




