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106章 シークの左腕

レイの意識が戻り、シークの回復に加わる。

 106章 シークの左腕



 シークを回復しながらネビルがチラリとエクスを見る。


『酷い状態だ。 良く生きているな』

『生きてさえいれば大丈夫です』


『そうだな······しかし、腕が······』

『命があるだけ良かったと思わなくては』

『それもそうだ······』


 ネビルは千切れた左腕を見つめて悲痛な顔をしていた。




 誰も言葉を発することなく遠巻きにシークを見守る。


 気付けば真っ暗になっているので、火魔法を持っている者たちが手の上に炎を出して明かりをつけた。

 

 それを見ていたハーピーたちが枯れ木を集めてきたので、薪に火をつけ、大きな焚火となった。




 麓にいる者たちはハーピーたちにシークが大ケガをして頂上にいることを聞き、固唾を呑んで山頂に見える焚火を見上げていた。




 回復をしていたら、急にミンミが顔を上げて振り返った。 一心不乱に回復していたアニエッタも驚いて顔を上げる。


「ミンミ? どうしたの?」

「レイが!」


 ミンミはセリアが回復をしているレイの元に飛んでいく。


 レイはゆっくりと目を開けた。


「レイ!」

「ミンミ?」

「よかった!!」


 ミンミはレイに抱きついた。


「じゃあ、シークさんももう大丈夫ね?」

「うん!」


 レイはセリアにお礼を言ってから、シークの元に飛んできた。 





 体はボロボロだが生きていた。


「よかった。 ちゃんと発動したんだ」


 レイがそう言うとフェンリルが何の事だ?と、聞いてきた。


「うん、ちょっと待って」と、シークの左腕の回復していたエクスに「ここは任せて」と言って交代してからフェンリルを見る。



「ラファエル魔法は発動させると魔力と体力も枯渇して動けなくなることは知っているよね。 だからラファエルを加護した相手には、意識がなくても自力で帰ってこれる魔法を加護できるんだよ。 ついでにラファエル防御魔法も加護しておいたから、どうにか生きていてくれたみたいだね」

「なんだ? そんなでたらめな魔法があるのか」


 顔をしかめるフェンリルを見てハハハハと、レイは笑う。




 笑っているレイを見てネビルは違う意味で顔をしかめる。

 

『まだ意識も戻っていないし、片腕をなくしたのに、何を笑っているのだ?』

『命に別状なくなったので、余裕ができたのでしょう』

『それにしても自分の竜生神がこんな時に、不謹慎だろう?』


 自分が大変な時にエクスにヘラヘラ笑っていられたらと思うと腹が立つ。




 しばらくすると、グノームとオベロンがガーゴイルに抱きかかえられてやってきた。 ガーゴイルは本来ドゥーレク側の魔物だ。


「みなさん、ドゥーレクが操っていた魔物たちも我に返り、我々と和解できました。 それとレンドール兵は撤退していきましたので、もう安心です。 それでシーク様のお加減は?」

「もう大丈夫。 もうすぐ気がつくと思うよ」


 レイに言われてオベロンは良かったですと頷いた。



 ◇◇◇◇



 やっとシークの意識が戻った。



 ゆっくりと目を開けて、周りを見回し、アニエッタで視線を止めた。


「シークさん!! よかった!」

 

 アニエッタが抱きつく。

 俺も両手で抱きつこうとしたのだが、左手をレイに抑え込まれていた。


「マー! こっちの手はまだ動かさないで!」


 仕方がないので右腕だけでアニエッタを抱きしめた。


「よかった······約束を守れないかと思った」

「もう少し待ってくださいね。 回復してしまいますから」


 アニエッタは涙を流しながらまた真剣な顔で回復に専念する。




 しばらくアニエッタに見入っていたが、そういえばと、周りを見回す。


「誰が俺をここまで連れてきてくれたんだ?」

「お前が自分で来たんだよ」

 

 フェンリルに言われ、えっ? と俺は首を傾げる。 



 ラファエル魔法の中で気を失って、そこから記憶がない。



 するとレイがフフフと笑った。


「マーに最後に加護した魔法は[ラファエルの(つばさ)]と言って、ラファエルの発動後に生死に関わらず魔法の翼で自分が一番会いたい人がいる場所まで飛んでいく魔法なんだ。 だから、アニエッタの所まで飛んで来たんだろうね」


 思わず俺もアニエッタも顔が真っ赤になり、みんなが笑った。




 その時、ネビルの堪忍袋(かんにんぶくろ)()が切れた。


「みなさん!! シーク殿の(ひど)いケガの状態が見えないのですか?! ヘラヘラ笑っている場合ではないと思うのですが!!」



 みんながえっ?と、振り返った。 真っ赤な顔をしてネビルが怒っている。



「いくら魔法が使えると言っても、片手では何かと不便です。 まだ若いのに、これから150年以上、片手で過ごさなくてはいけないのですよ! 少しはシーク殿の御気持ちを察したらどうなのですか?!」


 ネビルが心配してくれる気持ちはとても嬉しい。 みんなも神妙な顔になる。



「えっと······」俺は右手で頭を掻いた。




 するとグノームが突然ハハハハハ!と、笑い出した。 これだけ言っているのにと、ネビルが(にら)みつける。


「いやぁ、失敬! ご存じなければ御怒りもごもっともですが、御心配には及ばないと思いますよ」

「どういう意味ですか?!」



 その時、レイが「もういいよ!」と言い、アニエッタが「大丈夫ですか?」と俺を抱き起してくれた。


「心配頂いてありがとうございます。 もう治りました」


 俺が元通りになった左手をピラピラさせ見せるとネビルとエクスは、えっ?えっ?と、俺の両手を見比べた。



 グノームが再び話す。


「天龍様とその加護者様は傷を治すだけでなく、なくなった腕や足も再生することが出来るのです。 我らドワーフも、何人もの者がそのおかげで五体満足で暮らさせていただいております」





「天龍って·········」



 ネビルとエクスは開いた口が塞がらなかった。






今度こそ、本当に一段落ですね!

( ´∀` )b

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