第九話 『帰宅後の出来事』
私、高岡 蜜は友達がいません。
理由としては単純明快、ちっちゃいからです。
数年前の資料を見るに、小さい系のキャラは小動物的存在として結構人気を集めていましたが、今は違います。
理由としは女の子における第二次性徴が急激に早まっていることが原因で、高校生になっても成長が著しいものは、私みたいに悪い意味で特別扱いされてしまいます。
ちなみに小学生で第二次性徴を逃した私みたいな人は、高確率で今後成長は望めないらしいです。
そして話は最初に戻り、高校生女子の中での友情関係は巨乳であることが絶対条件。
入学当初は思い切って話しかけても冷たい反応をされ、日に日にクラスでは孤立していきました。
こんなのおかしいです。差別と何ら変わりはありません。
自分の容姿が憎くて、毎日毎日悔しくて泣いて、入学してから数瞬間後、思い立ったのが部活の設立です。
私は自分の容姿を憎み嘆いていましたが、別に自分が無理に周りの巨乳女子グループに合わせる必要はないのです。
ならば答えは出たようなもの。
貧乳、つまり成長が著しいものが学校生活などで、巨乳と貧乳格差なく平等に共存できる世の中になれるように考えたり実行する部活を設立するのです。
そうして名付けた部活名が、
『貧乳絶滅対策本部』
この部活名も私的にかなり的を射ていると思います。
なにせ貧乳が絶滅してしまえば私の計画は元も子もないのですから。
そうして私は部員集めを始めて最初に出会ったのがシン先輩でした。
巨乳という流行に流されず、貧乳もののマンガやラノベを読んでいて、この人しかいないと女の勘が私に訴えました。
そして今に至るのです。
「シン先輩は大体からかいすぎなのです」
私は部屋のベッドにうずくまりながら独り言ちます。
ことあるごとに私のことをからかうんですよ?ほんと最低です。
ボーリングの時だって、あんな見られたくないものを……。
「恥ずかしくて死にそうです……」
でもあれはしょうがないと思います。
小学校の時から全然成長していないから別に買わなくてもいいって親に言われてるし、かといって自分のお金で買いたくありません。
使えるものは使い切るのが高岡 蜜の心得です。
いつかシン先輩の弱みを握って私もからかって見せます。
そうしていると、「ぴろん」とスマホの通知が鳴ります。
「誰でしょう」
私はベッドで寝ころんだままスマホを起動します。
シン先輩から無料トークアプリLIMEにメッセージがきています。
「えーと、内容は……」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
初恋とはこんなにも心躍るものなのだろうか。
俺は、蜜の家の最寄り駅で降りた後にふとそんなことを考えていた。
もちろん蜜と一緒にいるときはそんな感情を推し量られてはいけないように隠している。
だから俺がいつも蜜をからかっているのは、実は楽しいだけではないのだ。
からかうことによって万が一、俺が蜜のことが好きだということを悟られないため。
普通の高校生の恋愛とかは、男子が女子をかからかったりするのは愛情表現にイコールであるが、俺が蜜にからかっても、まだ心身ともに未熟な蜜は、ただ単にちっちゃい私をからかって楽しんでいると思っていて、彼女の中ではどうしても愛情表現とイコールでつながらないのだ。
からかわなきゃ蜜が俺の気持ちに気づいてしまう。
これが常にからかっている理由。
だが、日に日に蜜のことが好きという気持ちが大きくなっていって、どうしても抑えられそうにない時が多々ある。
っていうか今まさにそうだ。
放課後に二人だけでラウンドツーに行ったり、一緒に夕食を食べたり。
放課後という特別な時間。夕食という特別な時間。
そんな特別の時間を特別な人と過ごしたとなると、気持ちが抑えられないのもわかってほしい。
家につき、やっぱり蜜のことを考えてしまう俺は、何でもいいからメールを送ろうと思った。
内容は何でもいい。
蜜から元気な返信が来ればそれでいい。
そう思い、スマホを開き、無料トークアプリLIMEで簡単な短い文を蜜に送った。
それは、
『今日は楽しかったな!あと___』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「もうシン先輩はー!」
メールで『あと』の後には、熊のミニスタンプとパンツのミニスタンプが連続で書かれていました。
「本当に最低です!」
私はこのセリフのままシン先輩に返信しました。
ですが、この時の私はなぜだかからかわれたことの怒りはなく、なぜだか楽しくて笑っていました。