第七話 過去編② 『一目惚れだったんだ』
俺は帰宅後部屋でマンガを読みながら、今日出会った一年生の女の子高岡 蜜について考えていた。
もちろんマンガの内容なんて入ってこない。ただ単にこうしていなきゃ落ち着かないのだ。
あの子、蜜は蜜なりに真剣に考えた結果があれなのだろうか。
「はぁ……。馬鹿か俺は……」
そもそもなんで俺はあんなやつのことなんか考えなきゃいけないんだ。
勝手にやらせとけばいいじゃないか。
あいつも最後は諦めていったんだから。
そもそもあんな部活に入っても第二次性徴の促進を俺たちに止められるわけない。
だがどうしても頭の隅で、隠そうとしても隠しきれないこの、蜜のことを可哀想に思ってしまう気持ちがあるのはなぜだろうか。
俺のクラスの女子に貧乳は恐らく一人もいない。
確かに考えてみると案外深刻で、そんな中に一人ぽつりと発育途上の蜜がいたら肩身が狭くなるのもうなずける。
そんな考えも、妹の声で吹き飛ばされる。
「おにい、ごはーん」
結局わからなかった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
翌日、俺はいつも通り昼食をとるべく屋上まで赴くが、誰もいなかった。
当たり前だ。
ここから一週間は何も起こらなかった。
一週間は___。
一週間後。
結局俺は毎日蜜のこと、そして部活のことを考えてしまった。
一週間経てば忘れているだろうと思っていたが、そうにはいかなかった。
というか、日に日に余計寂しさがこみ上げるようになってきた。
だが、なんで俺には少し寂しい気持ちがあるんだ?
理由がわからない。
昨日一回話した相手なはずなのになんでこんなにも話したい気持ちがあるんだ?
これもわからない。
わからないことだらけだ。
何もしないわけにもいかないので、とりあえずリュック弁当をから取り出そうとすると、視界が暗転した。
「シン先輩!また来ちゃいました!」
この声は___!
俺は半ば無理やり手で目を押さえられていたのを払って後ろを見ると、やはりというべきか、そこには蜜がいた。
「おまえなぁ」
意思に反してのこの安堵感。
ここでふと思ってしまった。
俺はこの部活に入ってもいいかもしれないと。
この部活に入ることで、蜜と関わることで俺の陰キャ学校生活にも少しはいろどりがつくかもしれないと直感したから。
「なあ、俺どーせだからこの部活入ろうかな」
本心が、漏れてしまった。
そして俺はうすうす気づていた。
蜜に一目惚れしていたことに。
「その言葉待ってましたよシン先輩!」
そして俺は一学年下のリアルロリに恋をしてしまった。
片思いだけど。