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貧乳絶滅対策本部  作者: ロリコン勇者
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第六話 過去編① 『蜜との出会い』

 俺はもともと友達が少なかった。

 休み時間はひたすらマンガやラノベを読み、昼の時間は決まって屋上の隅で一人昼食をとっていた。

 だからと言ってどうってことなかったし、それを一年間も続けていれば慣れるものだ。

 だが、二年になって何週間か経ち、俺はいつも通り昼食をとるべく屋上に向かうと、俺がいつも使っている所定の位置に何やら先客がいた。

 春の心地よい風にあてられながら髪の毛を抑える()()を見て、不覚にもどきりとしてしまった。

 彼女は立ち上がり、俺の方に人差し指をピシって指すと、


「待っていました」


 いや、誰?

 俺は自分の脳内のどこを探してもこんな子知らないし、見たこともない。恐らく靴の色で一年生と判断できるので、こんな二年の俺なんかに面識があるはずもない。彼女はきっと何か勘違いをしているのだろう。


「人違いじゃ……」


「違います。あなたいつも幼女もののライトノベルや漫画を読んでいますね?」


「なんでそのことを……!」


 おかしい、俺はいつも本にはカバーをして教室では椅子に座って太ももらへんに置いて読んでいるので、内容まで漏れているはずがない。

 そもそも教室でそんなことしなくても誰も俺の読んでいる本なんかに興味を示さない。


「実は毎回お昼の時間に観察してました。これを使って」


 そう言って俺に見せてきたのは双眼鏡。

 恐らくこれを使って観察をしていたのだろう。

 だが一体なんでこんな小さくてかわいらしい子がこんな冴えない俺なんかの観察なんかしてるんだ……?

 一種の恐怖を覚えている俺をよそに、悪だくみする子供のような笑みで俺を見つめる彼女は、俺が露骨に怖がっている様子を見かねて優しいトーンでこう言った。


「単刀直入に私が創設した部活に入ってもらいたいのです」


「部活……?」


 突然の部活の勧誘に戸惑い、聞き返してしまったがなんで俺が?

 確かに帰宅部で誘いやすいのがあるかもしてないが、一年生なんだからまだ部活入ろうか決めてないクラスメイトに頼めばいいものを。


「はい!部活名は『貧乳絶滅対策本部』っていう部名です!本当はこんな大切な組織を部活動とかいうものと同類にするなんておこがましすぎますが、この際仕方ありません。はいこれ入部届です」


「まてまてまてまてまて!」


 勝手に話が進んでいって彼女が何を言っているのかさっぱりわからん!

 なんだって?貧乳絶滅対策本部?あからさまに入っちゃいけない臭いぷんぷんするじゃん!


「その前にだ、勧誘の前に名を名乗れ」


 こんな怪しい部活を立ち上げるくらいだ。何かされる前に名前を名乗ってもらわねばならない。


「おおっと、忘れていました。私は一年二組の高岡 蜜です」


「そんで?勧誘するくらいなんだから活動内容を言ってくれよ」


 名前自体は特に興味なかったのでスルーして話を進める。

 蜜は、「けほん」と咳払いをして説明し始める。


「ニュースで見たことあると思いますが、年々女の子における第二次性徴が早まっていることはご存知ですよね?」


「あー、なんかそんなこと言っているのきいたことあるな。確かもうすでに小学二年生でも胸が膨らんできている子もいるとか」


「はいそれです!で、この『貧乳絶滅対策本部』の活動なんですが、それを阻止するために色々やる部活です」


 色々って、すごく抽象的過ぎかもしれないが、別にそんなことどうだっていい。

 だってやばい部活ってことだけは何一つ変わらないんだから。


「説明ありがとう。俺からの答えはNOだ、他をあたってくれ」


 そのまま蜜に背中を向けて屋上を後にしようとする俺を、蜜はガシッと掴んだ。


「ロリ好きじゃないんですか?部活に入ればロリの私と毎日話せるんですよ?」


「確かにお前は小さくてかわいらしいがな、俺もリアルロリと関わろうなんて思うほど野暮じゃない」


 素直に褒められたことに関しては照れているのか顔を赤らめ、だがどうしても俺を入部させなきゃいけないらしく、真剣な表情に戻り言う。


「お願いします」


「いやだ」


「どうか……」


「無理です」


「わかりました……」


 そこでようやく諦めてくれた蜜は、そのまま俺を残し無言で屋上の出口に向かう。

 その途中、不意に俺の方に向く蜜の顔は涙をぐっとこらえているような、それを我慢して表情に出さないようにしているような、そんな顔をしていた。


「私もこんな小さい体が原因で友達ができません」


 それだけ言うと、今度は振り返りもせず蜜は屋上を後にした。

 どうも後味が悪い。

 何なんだこの感情は。

 最後俺は同情されたのか?

 それがなんだ。俺に彼女を助ける義務なんてない。

 だがそれでも、そうやって自分を正当化させても、俺の中の心のもやもやがおさまることはなかった。




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