第十二話 『お嬢様』
そんなこんなで如月さんが貧乳絶滅対策本部に入部した日の帰り、俺と蜜は帰路についていた。
「今日はこんなことがあって部員集め出来ませんでしたね」
俺の隣を歩く蜜は、さりげなくそんなことを言う。
昨日は、帰宅部の女子生徒を割り出す作業をしていたので、本格的な部員集めは今日やる予定だったが、あんなことがあったため結局明日やることになってしまったのだ。
「まあ一人部員増えたんだしいいんじゃねぇの?」
「そうですね。明日から本格的な部員集め頑張りましょうシン先輩!」
「ったりめーよ!」
とそんな感じで駅に向かって歩いている途中、公園のベンチに一人、泣いている少女がいる。
蜜も気づいたようで、不審に思ったのか俺の方を向いてくる。
「どうしたんでしょう」
「行くか?」
「そうしましょう」
俺と蜜は、泣きじゃくる少女に近づいていくが、向こうはこっちには気づいていない。
その少女の容姿は金髪縦ロールといういかにもお嬢様といった感じで、その泣いている姿すら絵になっていた。
彼女の前まで行くと、蜜は一回俺の方を見て頷いてやると、少女の方に視線を戻して声をかけた。
「あの、どうかしましたか?」
そこでようやく俺たちに気づいた少女が顔を上げると、目元が真っ赤だ。
突然声をかけられて「えーと……えーと……」と動揺を隠せない少女のために俺が説明してやる。
「そこを通りかかったら目に付いたからさ、放っとくわけにもいかなくて」
「そうでしたの……。お見苦しいところを申し訳ありませんでした」
喋る言葉一言一言が丁寧で礼儀正しくそしてとても品がある。
蜜の先輩の俺に対する敬語とは異なり、言葉では表現しにくいがまさにお嬢様といった感じだ。
その場を後にしようとする彼女に「ああ、ちょっとまって」と呼び止める。
「ほら、もしよかったら何があったか言ってみない?少しは気が楽になるし」
ついでに「蜜もそう思うだろ?」と言うと、「そうですね。このまま帰すのも私たちにとっても後味が悪いです」と返ってきたので、少女の方に向き直る。
ってか全然気にしてなかったけどこの子、蜜と同族だ。
胸はほんの少ししか膨らんでおらず、身長は蜜よりは高いが、それでも平均以下といったところか。
「ありがとうございます。それじゃあその言葉に甘んじて相談してもよろしいですか……?」
「もちろん!」
「もちろんです!」
それから俺たちは近くのカフェに行くことにした。
向かう途中は、お互い自己紹介などをした。
彼女は中学三年生で名前は、サイベール・環奈と言い、ロシアと日本のハーフだそうだ。
聞くところによると、環奈ちゃんは俺たちの高校の近くの中学校に通ってるらしい(場所は知らない)。
カフェに着き、ドアを開けて入店する。
人はぽつぽつといるくらいで、適当に席を選んでいると、環奈ちゃんがある方向を見て顔を真っ青にして固まっていた。
「どうし___」
俺が声をかけようとしたら、いきなり走り出して店の外に出て行ってしまった。
「シン先輩!環奈ちゃんが!」
「ああ。お前は適当に席取って待ってろ俺が追う」
「わかりました」
蜜がそれを言う前に俺は駆け出していた。
大体予想はつく。あの時環奈ちゃんの視線の先にいたのは同じ制服を着た女子数人。
「いじめ以外考えられねぇだろ!」
店を出て左右を見ると左側にギリギリ環奈ちゃんが角を曲がるところを確認できたので、俺はそれを追う。
角を曲がるとすぐ、壁に寄りかかるかたちで顔を伏せ座っている環奈ちゃんがいた。