第十一話 『偽おっぱい』
「そんなに私の偽乳じろじろ見ないで!」
そう言いながら如月さんは、羞恥の顔で偽おっぱい(仮)を手で必死に隠そうとする。
実際にそれが本当なのかはまだ確証を持てたわけではないが、嘘を言っている風でもない。というか如月さんは嘘つかなそう。
そこで何かが吹っ切れたのか、バン!と思いっきり席を立った蜜が、如月さんの偽おっぱい(仮)を指さして言う。
「絶対に嘘です!普通に考えて普通の高校生がおっぱい欲しさに整形手術なんてしますか?」
「普通は、しないな……」
俺に話を振ってきたので答えてはみたが、確かに貧乳であることがコンプレックスであっても、ざわざ大金を支払ってまでおっぱいをゲットしようとする人なんていないだろう。ましてや高校生なんか。
「嘘なんかじゃないよ!じゃあ二人とも見てみる……?」
「だ、だだ男子がいる前で何を言っているんですか……!」
「でもそれしか方法ないじゃん」
「むむむ……。じゃあシン先輩は後ろ向いていてください。見たら全力ドロップキックをお見舞いしてあげますからね」
そうくぎを刺されてしまったが、実際蜜のドロップキックなんて痛くもかゆくもないだろう。
だからと言ってみようとは思わない(見たいけど)。
「安心しろ。じゃあ俺飲み物買ってくるからそれまでによろしくな」
そう言い残して俺は、先輩女子が後輩女子におっぱいを見せる状況を考えてしまう。
戻ってきたときに危ない百合展開になってたら面白そうだが、さすがにそれはそれでヤバイ。
百合展開になってないかなぁ、と塵程度に期待しつつ自販機で飲み物を買いに向かうのであった。
数分後。
結果としてはもちろんと言っていいのか百合展開にはなっていなかった。
っていうかお互い顔めっちゃ真っ赤。
俺は適当に買ってきた缶のジュースを人数分机に置くと、どうやら様子のおかしい二人に向けて言う。
「蜜も如月さんもどうしたんだ?そんなに顔真っ赤にして」
もじもじとした様子の蜜は、
「……」
黙って何も言ってくれない。
それならばと、如月さんに助けを求めるように視線を向けると、「えーと……」と、どっか歯切れが悪い。
まあ大体恥ずかしいことがあったんだろうなとは察しが付く。
おっとここで如月さんが表情を恥ずかしさに染めながらも口を開いた。
「他人におっぱい見せるのって恥ずかしいね。あと交換条件って言ってみっちゃんのも見せてもらっちゃった……」
いや、思ったより百合展開起きてたーー。
「結論から言うと……、偽乳でした……」
蜜が絞り出すように言う。
「ほ、ほう……」
俺も他人のおっぱいについての話なんで、ちょっと焦りがやばい。
「ちゃんと整形手術の跡がありました……。そこまではいいのですが、偽爆乳魔人皐月が私の見せたんだからみっちゃんのも見せろって言って……、弱みも握られてて……」
そこからはかぁと顔を上気させ、ホットアイマスクになる寸前だった。つまり言葉が止まった。
弱みが何なのか気になるが、実際おっぱいを見せ合っている先輩と後輩の絵……。ヤバイ……エロい。
いかんいかん。
頭を横にぶんぶん振り、煩悩を払う
「つまり蜜、これは貧乳扱いでいいのか?そうすれば入部どうこうの状況も変わってくるけど」
蜜は顎に手を当て、数秒悩んだ挙句こう結論付ける。
「確かに根は貧乳なはずなので、致し方ないですが入部を認めましょう」
「やったー!みっちゃん安藤君よろしく!」
とまあそんな感じで部員が一人増えましたとさ。