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30話・《閑話》大人の事情


 わたしは不思議に思っていたことがあった。シャルは祖父のカウイさまと暮らしていて、実父のラーデスさまとは暮らしていないことを。ラーデスさまは愛人と別宅で暮らしているらしいので、てっきりカウイさまとラーデスさまの仲は悪いのだと思い込んでいた。


 でも、あのマニス殿下を追い込む時のふたりの連携プレーには、不仲など感じられなかったし、魔女とナツたちが戦いを始めた時も、ふたりが手分けして王族一家や他の貴族の人達を非難させた事といい、息のあった動きに感じられた。

 それなのに一緒に暮らしていないってどういうことなのかしら? その疑問はすぐに解消することになる。


 早朝、目が覚めたわたしは、寝入っているナツをベッドに残したまま部屋の外へ出た。そこへカウイさまが宮殿からラーデスさまと共に帰って来たらしく、玄関先で話している場に出くわした。カウイさまをラーデスさまが送ってきたようで、すぐに彼は立ち去ろうとしていた。その娘婿にカウイさまが言った。



「ラーデス。たまにはこちらに顔を出しにきたらどうだ?」

「そうですね。シャルが嫌がらなければ顔を出したいと思うのですが……」

「シャルは寂しがっておるぞ」

「だと良いのですが……、彼女から見れば私は不潔な人種ですから」

「おまえは不潔ではないだろう。愛に忠実なだけだ」



 ラーデスはどこか戸惑っているようで、その彼にカウイが言った。



「ハンスも連れてくればいい。わしはいつでも歓迎するぞ。もうあれが亡くなってだいぶ経つ。もう目くじら立てるものもおらぬ」

「……義父上。宜しいのですか?」

「もともとはおまえの才覚に目をつけ、ハンスとの仲を引き裂くようなまねをしたのはこのわしだ。おまえはハンスがいるから誰とも結婚しないと言い張っていたのに……」



 ハンスというのは男性の名前だ。カウイさまはラーデスさまとそのハンスの仲を引き裂いたといっていた。それってつまり……?


「悪かったな。おまえの血を受けた子供をどうしても我が家に入れたかったのだ。罰が当たったんだろうな。そのせいで娘は早死にしたようなものだ。済まなかったな」

「いいえ、義父上。謝るのは私のほうです。彼女が亡くなったのは私が至らなかったせいです。わたしを愛してくれていたのにその気持ちに応える事ができずに、一度の関係だけで身篭った彼女を疑い、死へと追いやってしまいました」


 申し訳ありませんでした。と、頭を下げるラーデスさま。この二人の間にはなにやら深い事情がありそうだ。その晩、ナツにその話をしてガイムにそれとなく聞き出してもらった所、ラーデスさまには懇意にしている乳兄弟がいてそれがハンスというらしいのだけど、その彼と恋人同士にあったらしい。


 そのことをカウイさまは知りつつも、自分の娘がラーデスさまに惹かれていたのと、彼の才能に目をつけ、ごり押しで彼を自分の娘と添わせたらしかった。ハンスは侍従としてラーデスに付き添ってきたが、シャルの母親はこれを嫌い、ラーデスさまと思いを寄せ合うハンスを汚らわしいと罵って家から追い出してしまった。


 それを知ったラーデスさまは激しく憤り、家から出てハンスと別宅で暮らし始めた。その後にシャルの母親の妊娠が発覚したが、自分の子供と認めず本家に足を運ぶ事はなかったらしい。

シャルの母が亡くなった後も本宅へ足を向ける事はなかったそうだ。


 現在もラーデスさまはハンスと暮らしているということだった。社交界ではラーデスさまの愛人が男性とは知らず、皆はラーデスさまが相手をひた隠しにしていることから、色々と憶測を呼び、彼のお相手は平民での謎めいた女性のように思われているらしかった。


 わたしもラーデスさまのお相手の方が男性とは思わなかったから驚いた。ナツはガイムからこのことは口止めされたらしく、内緒だよ。と、言っていた。もちろん誰にも言う気はないけど、ラーデスさまを見る目が変わりそうである。


 大人の事情には下手な口出しは無用ですわ。

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