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24話・水底から蘇ってまいりましたの


「皆に祝福してもらえたら嬉しい」


 厚顔無恥にも壇上の王子は言っていた。絶対、これは周囲の空気読めてないわよね? この状態で祝福? とんでもない。皆、不服しか抱えてないわよ。殿下の人気も落ちたわね。別にわたしは彼のこと好きじゃないから構わないけどね。彼がどうなろうと。

 辺りからはまばらな拍手が起っていた。そこへ、シャルが強張った声で問いかけていた。


「マニス殿下。そちらのアロアナ嬢とはどちらでお会いになったのでしょうか?」

「なんだ質問かい? 彼女とは遊学先で……」


 そう言いながら王子は「今の質問は誰?」と、こちらを見て来る。周囲でも今の声は誰だと訝る声が上がる。姿は見えないのにここら辺から声がしたときょろきょろしている。

 シャルは怒りを抑えこんだ様子で語り出した。


「許婚を桟橋から突き落とし、亡き者にされようとしたのは、その女性の為ですか?」


 物騒なことを言い出した声に皆が「亡き者? シャルロッテ嬢は殺されたのか?」と、口々に言い出した。


「静まれ。何者だ? 姿を見せよ」


 王子が青ざめて壇上から言うが、シャルは止めなかった。



「その上、表向きにはその女性と一緒になりたいからと言いながら、ハートフォード家に何の血縁もない彼女を養女にして後継ぎに納まろうだなんて、虫のいい話ですね」

「誰だ。憶測で話すのは止めよ。無礼な」

「そうよ。言いがかりはやめてもらいましょうか? そこに隠れているネズミさん、姿を現わしたら?」



 壇上のわたしの偽者がこちらに向けて指差して来た。彼女には姿を隠しているわたし達が見えているみたい。やっぱり只者ではないわね?

 その目はしっかりこちらを見据えていた。オウロが術を解く。わたし達の姿が周囲の前で露となった。

 ぱあんっと何かが弾ける音がして、光の膜のようなものが方々に広がったので、それを目撃していた皆は、わたし達がどこか別の次元から姿を表したように見えたのだろう。驚きの声を上げていた。



「おおっ。シャルロッテさま」

「シャルロッテさまが……」

「シャルロッテ嬢、ようご無事で」



 驚愕した者達は、急に姿を現わした者の中にシャルがいたことで警戒を解いた。


「後ろにおわすのはカウイ宰相閣下ではありませんか」


 誰かが発した言葉で、次々高位貴族たちは頭を下げていく。シャルのお爺さまって何者? 物凄い影響力ね? 瞬時に周囲が静まり低頭して行ったわ。

その中で、シャルは殿下に声をかけていた。


「お久しぶりにございます。マニス殿下」

「シャルロッテ……? 生きていたのか?」

「その言い方だと、まるでわたくしが生きていては困るような言い方ですわね?」


 シャルがずいと、ナツと共に一歩前に出ると、マニス殿下は自然と後退した。


「わたくし、水底から蘇ってまいりましたの。あなたの罪を暴く為に。お初にお目にかかります、お義姉さま。血の繫がっていない妹だからと、ネズミ扱いは酷いですわ」

「あ、あら。あなたがシャルロッテ? こんなにも可愛い妹が出来るなんて嬉しいわ」


 シャルが偽者アロアナをねめつけた。偽アロアナはとってつけたような笑みを浮かべた。胡散臭い笑みだわ。やだわ、わたしに似ているだけに、あんな風に自分が笑って見えるのかと思うときみが悪い。


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