21話・オウロにばれた?!
「おまえさ、ずいぶんとチョコにのめりこんでいないか? たかがペットに」
「チョコは単なるペットなんかじゃない。彼女は俺にとって大切な人なんだ」
「おいおい、猫相手に何を言っているんだよ。頼むよ、ナツ」
「頼むよって何だよ」
「おまえおかしいぞ。いくらアロアナ姫に振られたからと言っても」
ガイムはそんなに従妹の恋を応援したいの? わたしが障害になっていると思っているみたいね。わたしはアロアナなのに。ナツはわたしの恋人なのに。それが言えないのが非常に悔しい。
そこへオウロ達がやってきた。彼らは魔術師と神官という立場のせいか、オウロは背中にマントのついた黒い正装に、ファラルは白い聖職者専用の制服を着ていた。
「ナツ。良く似合っていますよ。その服」
「カッコイイ。ナツ。会場で若いお嬢さま方の目を釘付けだね」
「ありがとう。オウロ、ファラル」
仲間の賛辞に、ナツが笑顔を見せた。
「なになに? ふたりで何を争ってたの?」
「こいつがチョコを連れて行くって言うんだ」
ファラルは不穏な空気を読み取ったらしい。あっけらかんとした口調で聞いていた。ガイムが不機嫌そうに言う。
「連れて行けばいいのでは? ダンスに邪魔になるというのでしたら私がチョコさまをお預かりしますよ」
「僕も踊れないし、チョコちゃんの御世話係するよ」
「おまえらな……!」
ガイムはてっきりふたりとも自分の味方をすると思っていたみたいね。だけどふたりは彼の考えとは違ったみたいでなに言っているの? と、逆にファラルに突っ込まれていた。
「ガイムは忘れているみたいだけど、チョコちゃんは、シャルちゃんの命の恩人じゃないの? シャルちゃんが倒れているのを見つけてナツに知らせてくれたんでしょう? そのチョコちゃんが留守番だなんて僕は納得いかないよ」
「その通りじゃ。構わぬよ。チョコさまはシャルの命の恩人だしな。勇者さまが同行を望まれるのなら」
「爺さん」
終いに当主のカウイさままで認めてくれたので嬉しかった。ふたりの仲を公認してもらえたようで。本当のところは違うとは思うけど、舞踏会にペットを連れて行っていいだなんて頼れるお爺さまだわ。
皆が退出してからオウロが振り返った。
「さあ、不貞腐れてなくても良くなりましたよ。遠慮なさらずまいりましょう。姫」
「お、オウロ? もしかして?」
「私の目を誤魔化せると思いましたか? ナツ? アロアナ姫さまは何者かに呪われているのですね?」
オウロがベッドの上で不貞腐れていたわたしに手を伸ばしてくれていた。もしかしてオウロ、わたしの正体に気が付いている?
「いつから気付いていたんだ?」
「王城であなたを転移する時でしょうか? 王城で飼われていた猫が、余所見もせずにあなたの後をまっしぐらに追っていくのを見た時から、腑に落ちないものを感じていたのです。まるであなたに気があるようにしか見えませんでしたから」
オウロは転移術なんて発動すると、大概の生き物は驚いて逃げていくのですけどね、と笑った。
「チョコさまはそれをものともせず、あなたがどこかに行ってしまうのを恐れているようでした。それにあの孤島で再会した時、チョコさまから姫さまと同じ治癒の力を感じましたからね」
「さすがだな。オウロ」
「姫はまだお力を失われていなかったようですね。ナツがクズ男にならなくて良かったです」
「おいおい」
実はヌッティア国では稀に王族の姫に限り聖女の力が発現する。一昔前までは聖女と認定された者は、神殿に送られて育てられてきたけど、何代か前の王の時代からその風習は廃れた事で、わたしはお父さまの側で暮らす事が出来た。
その代わり、その力は一生涯のものではなく、処女でなくなると消失してしまうものだったから、神殿側から婚姻するまでは神殿に通い、国の平和を願うことを要求された。




