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8話・ナツに近付かないで


 シャルが気が利くいい子だけに、苛々させられるわ。ナツに近付かないで。ナツ、わたしを見て! 


 どう頑張ってけん制してみても、わたしの行動は「可愛いね」で、済まされてしまう。ナツ、わたしチョコじゃない、アロアナよ。いい加減、気がついてよ。

 釣り竿を見ているナツに八つ当たりしたら、頭を撫でられた。


「そろそろ帰ろうか? チョコも待つのに疲れたよな? 今日はサバやいわしが沢山連れたし、おまえの大好きなイカも釣れたから焼いて食べような」


 そんなので釣られたりしないんだから。フンっと鼻を高くしたら「拗ねるなよ」と、頬ずりされた。


(わたし怒っているんだよ)


 それなのにナツったら気にしてないみたい。面白くないの。




「シャル。あ、それはいい。俺がやるから」


 家に帰ると、シャルが腕に抱えているものを見てナツが慌てた。シャルはわたし達の留守中に洗濯をしておこうとしてくれていたに違いなかった。気が利くのはいいんだけど、シャルが持っている籠にはナツの下着が入っていた。それはちょっとやりすぎでないかしら? ふたりは特別な仲でもなんでもないしね。



「ナツさま。気にしないで下さい。居候の身ですからそれぐらいさせて下さい」

「いや。これはさすがにきみには……、いいよ。俺、後で洗うから」

「そんな。遠慮なさらないで」



 シャルロッテは男物の服に身を包み、長い水色の髪を後ろの方でハンカチで一つにしばっている。浜辺に打ち上げられた時の彼女の着ていたドレスは、ぼろぼろになっていた為、ナツが見かねて自分の着替えの服を貸すことにしたのだ。


 それは彼女の華奢な体を覆い隠し、彼女の愛らしさがにじみ出ているようで、それもまたわたしにとっては面白くなく思った。


 彼の恋人であるわたしでさえ、ナツの服を着たことないのに。彼女でもなんでもないシャルが着ているのがなんだか悔しくて、腹立たしく思える。その彼女がナツの汚れた洗濯物を我が物顔して洗濯しようという構図が許せなく思った。


 わたしのナツなのに。ナツに近付かないで。そう言えたならどんなに良いだろう。でも悲しいかな、わたしはただの猫。抗議しようにも猫の鳴き声にしかならない。どんなにナツに可愛がってもらえたとしても、彼の隣には並べない。

 それが猛烈に悔しくて、泣けてきそうになった時、シャルが短い悲鳴を上げた。



「きゃっ」

「シャル。ここはいいから、チョコにご飯をあげてくれないか?」

「ご、ごめんなさい……」



 シャルはナツの下着を取り落とし、顔を真っ赤にしている。変なの? 分かっていて運んできたんじゃないの? 中に下着が入っていることに気が付いてなかったの?


 慌ててその場を後にするシャルに「わたしのご飯、忘れないでね」と、追いかけた。





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