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6話・もしかして気がついてくれたのかな?

 一週間が過ぎた。ここでの生活は快適で食べるものにも困らないし、寝るところにも困らない。何より愛する人と過ごせる毎日がありがたかった。彼はお父さま以上に、猫となったわたしをとことん、甘やかしてくれる。

今日もまたいつものように釣りをする彼の側で、わたしは探検を始めた。そこであるものを発見した。浜辺にうちあげられている人を見つけたのだ。


「ニャア、ニャー(ナツ、あれなあに?)」

「どうした? チョコ?」


 ナツはどこか上の空だ。釣り糸を垂れている間、彼は何か考え事をしているようだ。普段ならそれでも仕方ないと思えたけど、今は人命に係わる事だと、心を鬼にして彼の手に思い切り噛み付いた。


(ごめんなさい。ナツ。後で治癒するから)


「痛てっ。何だよ。チョコ?」


 何か考え事をしていたナツは我に返ったようだ。あのね、こっち来て。口で言うよりは直接見てもらった方が早い。わたしはナツの服の袖を噛んで引っ張った。


「何だよ? いったいどうしたって言うんだ?」


 訝しがりながらも、わたしの行動に何か伝えたいことがあるのかと、察してくれたようだ。腰を上げてついて来てくれる。こっちよ。ナツ。早く!


「おい、チョコ。チョコ?」


 後を追ってくるナツを連れて、わたしは浜辺へ急いだ。到着する頃にはナツが追い越して、打ち上げられている人に気付いたのだけど。



「大丈夫か?」

「……う……あう……」

「おい、しっかりしろ」



 ナツが抱き起こした相手は若い女性だった。青白い顔をしていて、髪の毛が濡れそぼって海苔のようにべったり頬に張り付いている。血の気を失っていたが、かろうじて息をしていた。あざや切り傷がいくつも見受けられてそれが痛々しい。


 治癒してあげようと思い傷口を舐めると、それが薄れていき綺麗に消えた。相手は女性だもの。傷なんて残ったら可哀相。そういう思いでどんどん舐めていたら、顔や体には赤みが差してきた。

良かった。最悪な状態は避けられたかも。と、こちらに向けられた視線が気になって顔を上げれば、こちらを凝視しているナツと目が合った。もしかしてわたしがアロアナだと気が付いたの?


 ナツはそれには触れずに彼女に洗浄の魔法をかけていた。するとべったりと頬に張り付いていた青みがかった海苔のような髪の毛が、さらさらとした指通りが良い髪に変貌し、彼女は見違えるように美しい娘となった。それを見てちょっと心がざわめいたのだけど。

 その彼女を抱き上げて、ナツは住処であるログハウスへと彼女を運んだ。



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