34話・水底から帰ってまいりましたの
「そうよ。言いがかりはやめてもらいましょうか? そこに隠れているネズミさん、姿を現わしたら?」
壇上のアロアナがこちらに向けて指差して来た。おまえ達が隠れているのは全てお見通しだとでも言いたいんだろうな?
その目は俺達を見ていた。ここいらが潮時か? 俺はオウロたちと目配せあう。おお、出てってやろうじゃないか。俺達は逃げも隠れもしないぞって、隠れていたけどな。オウロが術を解いたことで俺達の姿が周囲の前で露となった。
ぱあんっと何かが弾ける音がして、光の膜のようなものが方々に広がったので、それを目撃していた皆は、俺達がどこか別の次元から姿を表したように見えたのだろう。驚きの声を上げた。
「おおっ。シャルロッテさま」
「シャルロッテさまが……」
「シャルロッテ嬢、ようご無事で」
驚愕した者達は、急に姿を現わした者の中に見知った人物を見つけて警戒を解いた。
「後ろにおわすのはカウイ宰相閣下ではありませんか」
誰かが発した言葉で、次々高位貴族たちは頭を下げていく。けっこうシャルの爺さんって影響力あるのかな? あの天下の副将軍、徳川家光公のような扱い?
周囲が静まり低頭していく中、シャルロッテは殿下に声をかけていた。
「お久しぶりにございます。マニス殿下」
「シャルロッテ……? 生きていたのか?」
「その言い方だと、まるでわたくしが生きていては困るような言い方ですわね?」
シャルがずいと、一歩前に出たので俺も釣られるようにして前に出た。マニス殿下は自然と後退した。
「わたくし、水底から蘇ってまいりましたの。あなたの罪を暴く為に。お初にお目にかかります、お義姉さま。血の繫がっていない妹だからと、ネズミ扱いは酷いですわ」
「あ、あら。あなたがシャルロッテ? こんなにも可愛い妹が出来るなんて嬉しいわ」
シャルロッテは偽者アロアナをねめつけた。偽アロアナはとってつけたような笑みを浮かべた。横でエスコートしている俺にも、彼女の怒りが伝わってきて怖い。普段、大人しい女の子ほど怒らせると怖いものだよな。
「おふたりにお伺い致しましょう。わたくしを殺害しようとしたのはなぜですか?」
「わたしはあなたを殺すだなんて、そんな怖いことしないわ」
「そうでしょうね。手を汚さなくとも唆したのではありませんか? お義姉さま」
シュルロッテは追及の手を止めなかった。俺って出番なくない? もう帰って良いですか? 後ろを伺えばオウロが首を横に振っていた。
「アロアナがそんな事するわけないだろう。失礼だぞ。シャルロッテ」
こいつ馬鹿なんだろうか? シャルはアロアナだけが疑わしいといっているんじゃないんだぞ。おまえも視野に入れているっての。そこんとこ分かってる?
「殿下。あなたはわたくしに言いましたよね? おまえが生きていると邪魔なんだと。ハートフォード家の令嬢は彼女一人でいい。と。その意味が分かりませんでしたわ。いくら恋敵であるアロアナさまを我が家に父が勝手に迎えいれようとも、わたくしの存在まで消す必要はないと思っていましたから、でも気がつきましたのよ。これは明らかにハートフォード家を乗っ取るおつもりなのだと」
「シャルロット。難癖つける気か?」
◇作者のつぶやき◇
ナツ、せっかくダンスの練習したのにね、見せ場がないよねぇ。




