24話・アロアナ姫の秘密
いよいよアロアナ姫はね……。と、いう話です。
「きみには双子の姉妹がいるということはないか?」
「そんな話、聞いたことはないわ。母上さまは体が弱くてわたしを産むと同時に亡くなられたと聞いていたし」
「じゃあ、何者かがきみに成りすましているということか?」
俺はもう一つの可能性を頭に思い浮かべていた。俺のもといた世界でこんな実例があったような気がする。もう一人の自分。自分の姿を自分で見る幻覚の一つ。ドッペルゲンガー。自己像幻視とか言ってたような気がする。
「信じてくれる?」
「まあな。きみはこんな風に嘘を言ったりはしない人だ」
そこだけは信じられる。と、言えば、「ありがとう。ナツ」と、アロアナは言った。
「わたしが目撃した自分は、マニス王子に甘く媚びて彼の寝所に入っていたわ。その時の自分はなんだか小さくなっていて、気がつけば手足に灰色の毛が生えていた。声も人のものではなくなっていて……人でいる時の時間が段々と少なくなっていっているの」
そう言ってアロアナはわあっと泣き出した。彼女は知らないうちに、何者かに自分の姿を奪われたと言いたいらしい。俺は驚きのあまり凝視した。
「いまのきみは人の姿だけど……?」
シーツを巻きつけただけの華奢な肩が頼りなく思われて抱きしめると、アロアナは俺の胸に額を押し付けた。
「月の明かりを受けた時だけもとに戻るみたい」
「じゃあ、普段のきみの姿はどんなの?」
「……それは……」
言いよどむ彼女の心を指し示すかのように、部屋の中に差し込む月の明かりが翳りを帯びた。見上げれば窓から見える月が雲に顔を隠そうとしていた。部屋の中が暗くなる。するとアロアナの姿に変化が生じた。彼女の顔や肩や腕が毛に包まれていく。その毛の滑らかさには覚えがある。
「アロアナ? これは……?」
彼女の体が毛に包まれると同時に体が縮んでいき、顔には長い髭が数本現れた。
「ちょ……こ……?」
「ニャアン」
半信半疑のおれにしっかり応えたのは愛猫で……。
「アロアナがチョコ?」
真相を知った俺の顔色を伺うように、おそるおそる見つめてくるエメラルド色の瞳。チョコを膝の上に抱き上げると、雲に隠れた月が顔を覗かせたことでチョコが見る間に大きくなった。
「大きくなっちゃった……?」
あまりの驚きに口を開けてぽかんとしてしまう。それからしばらく月明かりに弄ばれるように、チョコとアロアナが俺の腕の中で入れ替わることになり、俺は彼女とチョコの感触を何度も確かめることになった。
◇作者のつぶやき◇
はああ。ようやくここまできました。チョコの秘密が明かせました。




