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23話・もう一人のアロアナ?


 アロアナは何を思ったのか、まずはマニス王子と出会ったことから話し出した。正直そんな話、聞きたくもない。サーザン国から来たマニス王子は気さくな人柄で愛想が良く、滞在していた王城でも使用人たちには評判が良かっただなんて、はいはい。俺に対する当て付けか? 恋敵の自慢話だなんて面白くもなんともない。勘弁してくれよ。と、心の中でウンザリしていると、一匹の猫が話に登場した。


「マニス王子はなんだか様子がおかしかったわ。王城に迷い込んできた一匹の猫を見て怯えて、何かに取り憑かれたように斬りつけようとしていたの」


 ある日、アロアナは王城に迷い込んできた猫に向かって剣を抜いた王子を見た。それに尋常でないものを感じて、護衛兵に王子を止めてもらい、その猫を保護したのだとか。

 それがチョコとの出会いだと気が付いた俺は、引き気味だった話に身を乗り出した。


「可愛い猫だったわ。人懐こいからナツと名付けたのよ」


 オウロ達から王城で飼われていた猫は「ナツ」と、呼ばれていたと聞いた。なんだよ。俺の愛称からじゃなかったのか。名付けの真相に軽くガックリきた。人懐こいからナツね……。


「……いまは、あいつはチョコだ」


 以前はナツと呼ばれていたとしても今はチョコ。そこだけは譲れない。反論するとアロアナは眉根を寄せた。


「ずい分と可愛がっているようね? チョコのこと」

「チョコを返して欲しいのか? 返さないぞ」

「チョコは返さなくてもいいわ。出来ればずっと側に……あなたの側に置いてあげて」


 自分の飼い猫だったというのに、アロアナの態度はあっさりしたものだった。あまりの反応の薄さに薄情なものを感じる。たった今、可愛かったと言ったばかりなのに。チョコへの愛情はないのか?

 無責任な。と、非難する気持ちが伝わったかのように、アロアナは体をビクつかせ言った。


「わたしナツを……いえ、チョコを飼い始めてから体がなんだかおかしいの。鼻がむずむずして目が痒くなってきて、咳やくしゃみが止まらなくなって、終いに呼吸が苦しくなってきて、お医者さまに見てもらっても原因不明で……」

「体調不調……? チョコを飼い始めてから? 自分の体調の悪さを猫のせいにする気なのか?」


 アロアナの口調を見咎めるように見たものの、ふと彼女の言った症状に聞き覚えのあるような気がして思い起こすと、元の世界で猫アレルギーにかかっていた友人がそのような症状に見舞われて苦しんでいたのを思い出した。


(猫アレルギー!)


 こっちの世界でもそのようなものがあるとは驚きだ。アロアナは必死に言い返してきた。


「嘘じゃないわ。だんだんと呼吸困難になって気がつけば、意識を失っている時も度々あったし」


 アロアナは重度のアレルギー症状なのかもしれない。


「それでうす気味悪く思っていたら、ある日突然に王子から告白されたわ。それをきっぱり断ったら、王子からは自分の気持ちを弄んで何が楽しいのかと責められて……。訳が分からなくて。自分ではそんなつもりもないし、誤解を招く行動もしていないはずだったから。それなのに王子には昨晩愛し合ったではないかと言い寄られるし。これはどうしたこと? と、思っていたら見てしまったの。もう一人のわたしを……!」


 そう言うとアロアナはがたがた肩を震わせた。尋常ではなかった。


「どうした? アロアナ?」

「ナツ……怖い……!」

「しっかりしろ。アロアナ」

「助けて。ナツ。自分が誰かに乗っ取られそうで怖いの……」


 アロアナはもう一人の自分を見たという。幻覚ではないのか? 話が荒唐無稽な内容に変わってきた。気が触れたのかと思うぐらいに、彼女は平静を欠いていた。でもその態度から嘘を言っているようには思えないし、俺は悩んだ。

 アロアナが話したことが本当ならば、彼女がふたり実在していることになる。これはどういうことなのだろう? 



◇作者のつぶやき◇


話がミステリーぽくなってきました。

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