表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
器の中身(仮)  作者: yoru
1/2

人はどう生きていくのか

初めて小説を書きました。これはその序章です。プロットはまだ未完成ですが、書きたいと思う事を書いてみようと思います。

序章


うとうとしてどこかの駅を通り過ぎた時、窓側の席に座っていた僕に圧巻の景色が待っていた。


インドの西、ムンバイから中央のハイデラバードへと向かう2等の列車の旅。向かい合わせの席で一緒に乗り合わせたのは、インド人の家族連れだった。


「君はどこに行くんだい?」

「南インドの聖地を周りたいんです」


するとバックパックにくくられている3ウェイの寝袋を見て、


「その寝袋の中身は羽毛かな?ヒンズーの寺院では殺傷を嫌うよ」

「そうでしたか………」


その寝袋は、池袋のアウトドアショップで2千円で売られていたもので、安いからたまたま購入したものだった。


ちょうどお昼時だった。また名前も知らないどこかの駅に到着し、売り子さんが列車内にやってきて食べ物を売っていく。

僕はビリヤニというインドの炊き込みご飯を30ルピーで買った。


列車はもう動き始め、車内にいた売り子さんはいつの間にかいなくなっていた。


「君の職業は?」

「学生です。大学で看護学を学んでいます」

「よく分からないんだが、アシスタントドクターみたいなものかな?」

「ええ、まぁそんなところです」


僕は適当に話を切り上げた。男性の看護学生なんて日本でも珍しい。

葉っぱで包まれたビリヤニは素晴らしい味だった。


僕は成田を出てニューデリーの空港に着いてからいままでの事をなんとなく思い出す。

よし、今のところ旅を楽しんでいる。


しばらく回想にふけっていると、家族連れが食べ終えて空になった容器を僕に差し出し、窓から捨てろというジェスチャーをする。


「ゴミ箱は無いんですか?」

「ゴミ箱?そんなものは無い。なんでそんなことを聞くんだ?みんな捨てているじゃないか」


そう、ここはインドだ。インドではゴミは道端に平気で捨てるものだし、僕が嫌がってもどうしようもない。

手渡された容器と僕の空になった容器を、窓の外に出し手を放す。あっという間にどこかに飛んで行ったゴミは、いつか地中へと帰るのだろう。


しばらく窓の外を眺めていると、インド人の父親が小学生ぐらいの息子に、何か話していた。


「いいかい、人間には器と言うモノがあるんだよ」

「器?」

「大きい壺みたいなものさ。どれくらいその中に水を入れられるかで人間は決まるんだ」

「小さい壺だとどうなるの?」

「あっという間にあふれてしまう。でもね、大きいだけでは駄目なんだ。要はどれだけの水をその中に入れることが出来るかなんだよ」

「ふーん。」

「この旅人は………いやよしておこう」


僕はふと考える。僕の器はどうなのだろうか?その中に入れるべき経験を積んできたとは言えるのだろうか?

家さえまばらな森林地帯を列車はただ走ってゆく。


今でも僕はこの時の事を思い出す。


読んでいただいてありがとうございます。次の第1賞から始まるヒューマンドラマ。お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ