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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ある晴れた日に

作者: そのめ

基本扱いがBLです。

けれど絡みはほとんどないです。

性別がたまたま男同士だっただけだと思ってください。

「おーい!刃ぁ!こっち来いよ!」

朝から騒々しく、近所迷惑も顧みない玄関からの大声。


まぁ近所迷惑も何もない、ここは知り合いだけがすむアパートなわけで。

しかも近所には一軒も家が立ち並んでいない。


けれど今僕の機嫌はそんなに良くない。

何故ならつい先程、同居人に深刻な顔で

「…外いって来い」

というどうでもいい宣告を受けてきたばっかりだからだ。


同居人とは、このアパート「ふでばこ」の管理人的な感じのじょうのことである。

心配症でお節介焼きで、でも他人としてみる気なんてない。

最早、僕のお母さんだ。


ただ僕の生き方についていろいろ言われると殺人願望が湧いてしまう。

…空はこんなにも憎い程、真っ青だというのにすべてが煩わしい。

だから、僕は今日は外には出ない。


「…針良が来れば良いじゃない。僕動きたくない」

「おお、ごもっとも」

そう云うと、大声の主…針良は玄関の戸を盛大にあけ、部屋に入ってきた。


「おい、そういえば刃、お前一人称直すっていってなかったっけ?」

そんなこといった記憶なんてないよ。

「一回で良い、"あたし"って言ってくれ。あとデートいこうぜ!」

無茶言うな。外になんぞ出たくない。

「僕を、どうしても女にしたいのかバカ」

ほらでた、覚醒のしゅんかん。

いつもそうだよ針良、君の言動が全部原因なんだ。知らなかったでしょ…?

部屋の隅っこの机にこっそり右手をのばし、引き出しを開ける。

そこには変わることのない、銀色の輝きを放つ狂気、凶器。

銀刃の出たそれを掴もうと右手に力を入れる。

すると上から自分のものではない力がかかる。

…針良の腕。

「何、してんだよ…!」

「何って…ちょっとぐらい良いかなって」

「次にそういうことしたら許さないって、確かに俺言ったよね?」

言ったから何って言うの、目の前じゃなければいいの?

君が原因、君の言葉を真に受ける僕も原因。


嗚呼、空が憎い。一人で勝手に輝いてるんじゃない。

目線を逸らし、窓の向こうの憎き青空を見上げる。

ふと、感じる体温。

晴れているから、では無さそうだ。

「…針…良?」

抱きしめられていた。


身動きも出来ないまま、針良の薄らと見える横顔を瞳にうつす。

「また、俺の所為でお前を傷つけた。俺が悪かった。

だから…もう傷つかないでくれ。傍にいるから…!」

あたりまえじゃない、もう僕は針良なしでは生きられないんだから。

ぎゅ、っと針良の大きな体をだきしめ返す。

気を緩めた針良の、胸に赤い染み。

…ちがう、ちょっと場所が違った。


ここは脇腹だ。間違えた。


「え…刃…?」


ちょっと不敵に笑ってみた。

「いつ、僕がアレを手放したとおもったの…?」

僕はずっと握りしめていた。

右手に掴んだ銀色の狂気を放つ、カッターを。

「…笑えねえよ」

「…笑ってほしいなんて思ってない」


「だって、愛してるんだもん」

「君は、僕のもの」


僕たちは無機物、痛みなんて感じない。

なのに、なんでこんなに煩わしい世界なんだろう。


「あ、ひとついうことがあって」

「ん?何針良」

「君は僕のもの、って宣言されましたけども」

「うん…した」

「お前は俺のものだから」

「…うん」


煩わしくても…良いかな。

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