マーマレードアイスをのせたパンケーキ
遅くなりました。
短めですが、ご容赦を。
「マスター! すっごく珍しい花が……え!?」
勢いよくドアが開き、マークが駆け込んできた。それを迷惑そうにエノクさんが睨む。うん、確かに五月蠅かったよね。マークはエノクさんが来ていたことに驚いているのか、目を丸くしてドアの前で立ち尽くしている。ベルの音を響かせ、ドアが閉まる。その音でやっと我に返ったのか、マークはカウンター席に座った。少し気まずそうにエノクさんから距離を取り、椅子の上で小さくなってしまっている。
「ええと……珍しい花が、どうかしたの?」
重い沈黙を何とかしようと、マークに話しかけると途端に彼の目が輝きだした。彼は採取カバンから一輪の花を取り出すと、嬉しそうに話し始めた。
「この花、リナリアナっていうんですけど! 最近薬効があることがわかって研究され始めてるんですよ! 僕、この花ずっと探してたんですけど、なかなか見つからなくて……」
達成感に満ちた表情でマークは話し続ける。それをエノクさんが穏やかな表情で見ていた。よくマークに怒っているけれど、エノクさんはマークのことを弟のように大事にしているから、マークが嬉しそうで良かったと思っているんだろう。
「それは良かったね! でもずっと前からってことは、マークはその花に薬効があるんじゃないかって前から思ってたの?」
薬効があるのは最近わかったことだとマークは言った。なら何故ずっと前からその花を探していたんだろうか。
「どうせあの御伽噺を真に受けて、探してたんでしょう。貴方は昔から馬鹿で何でも信じてしまっていましたし」
エノクさんが鼻で笑いながら言った。確かにマークは何でも信じてしまいそうな純粋さのようなものがあるような……。
「御伽噺って……あれはこの地に伝わってる精霊の伝説でしょ! 神官が御伽噺なんて言ってもいいの?」
不満そうにマークが頬を膨らませる。相変わらず仕草が子供っぽい。エノクさんもマークが拗ねることなんて予想できるんだから、からかわなければ良いのになぁ。
「あの、二人とも言い合いはそろそろ終わりにしてくれませんか……」
いつまでも終わりそうにない言い合いを仲裁して、マーマレードアイスをのせたパンケーキを出す。二枚のパンケーキを重ね、アイスも二つのせた。一皿にのせられたそれには、わかりやすいだろうけど仲良くしなさいという思いを込めた。いつまでも喧嘩してると出禁にするぞ、とか別に思ってない。他のお客様に迷惑だと思っただけだ。本当に喧嘩するくらいならここに来なければいいのにとか思ってない……思ってないよ。
予約投稿できてなかったみたいです、申し訳ありません。
更新の予定が変わる時はTwitterで呟いてます。(マイページに記載)