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ノーマの泉  作者: 憂い月
第一章 喫茶店『ノーマの泉』の日常
4/5

アイスティーとアールグレイの紅茶クッキー

前回と少し関連して。

今回は少々長めです。

 あの後、マークは更に二切れ――つまりあのケーキの半ホールだ――を食べ、植物の採取に向かった。採取が終わったらまた来ると言っていたから、空き時間に何かお菓子を作っておかないといけない。彼は甘いものが好きだからたくさん食べるだろうし、他のお客様が来た時にもうお菓子は売り切れで、なんてことになったら困る。そういえば、この間紅茶の茶葉を多めに買ったはずだ。アールグレイの茶葉も買ったはずだから、あれで紅茶クッキーを作ろうか。クッキーなら一度にたくさん作れるし丁度いいだろう。



「こんにちは、いい匂いですね。クッキーですか?」

 神官服に身を包んだ中性的な紳士が入ってきて言った。彼も常連客の一人だ。彼は近くの精霊信仰組織の神殿――ロムニア神殿の神官で、空き時間に軽食をとりに来たり他のお客様や僕と談笑しに来たりしている。ノーマの住む泉は神殿にとって特別な聖地で見回りも含めているらしい。実は僕がここに喫茶店を作る時に神殿の許可を取ってくれた恩人でもある。

「いらっしゃいませ、エノクさん。紅茶クッキーを焼いてるんです。焼きあがったらお出ししましょうか?」

 彼は甘いものはあまり好きではないけれど、僕の店のお菓子は何故だか甘くても食べたいと思うらしい。最初の頃は彼のように甘いものが好きではないお客様用のお菓子を注文していたのだけれど、一度甘いものをマークに食べさせられてから好きになったらしく甘いお菓子も注文するようになった。あの時は本当に大変だった。美味しいからと無理やりに食べさせようとするマークと必死に逃げようとするエノクさん。店の迷惑になると最後は彼が折れたけれど、あの嫌がり方は凄かった。二人は幼馴染みだから大丈夫だと近くの町から来ていた商人さんが言っていたけれども。

「ええ、お願いします。焼きたてのクッキー、美味しいでしょうね」

「はい、かしこまりました。今日のはいつにも増して自信があるので美味しいと思いますよ」

 ふんわりとした笑みを浮かべている姿だけを見れば可憐な乙女のようだ。昔はよく性別を間違えられていたとマークが言っていたけれど、もしかすると今でも間違えられているんじゃないかな、と思ってしまう。

「それは楽しみですね。……今、失礼なこと考えてませんでしたか?」

 つらつらと彼の中性的な外見について考えていたのがバレたかもしれない。彼は性格自体は紳士的で男前と言って相違ない。可憐な乙女のようだと思っていたとバレたら何を言われるか……。

「いえ、本当にお菓子が好きだなあと思ってただけですから。失礼なことなんてちっとも考えてませんよ」

 悟られないようににっこりといつも通りの笑みを浮かべる。彼は誤魔化されてくれたようで、ならいいんですけどね、と言った。そのまま忘れてくれという思いも込めてアイスティーを出す。彼は仕方ないとでも言いたげにアイスティーを一口飲んだ。丁度クッキーが焼けたので、何枚か皿に盛って彼の前に置く。

「好きなのは、このお店のお菓子だけですよ。ラットくんが作ったお菓子が好きなのであって、お菓子自体が好きなわけではありません」

 彼は苦笑いでこの間お菓子を町の女の子に差し入れられて困ったと言った。何も特別なことはしていないのに、僕の店のお菓子だけ平気だというのは変だな、と思ったが、もしかしたらノーマ達が何かしたのかもしれない。いや、でもノーマ達は他人の作ったものにケチをつけたり手を加えたりはしないから……どういうことなんだろうか?



「美味しいですね、流石ラットくんです。ラットくんの作ったお菓子なら三食食べても飽きませんよ」

 エノクさん、三食お菓子は体に悪いと思います。

次話にはマーク青年も出そうかと思っています。

次話投稿は9月10日を予定しています。

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